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何のための招集

ソフトキャンディで作られたパンダの首が爪楊枝で刺し貫かれる。

少し変形してしまったその首は上に持ち上げられ、そのまま胴と泣き別れすることになった。

首はそのまま上へ上へと移動し、柚木宮少女の口の中に放り込まれた。

開けられた口の上で爪楊枝という支えを失ったパンダの首は、そのまま自由落下を始めて口の中に落ちていく。

それがどうなったかを確認することもなく。パンダの首が落ちた口は容赦なく閉じられる。

「美味い。造形も見事だ」

「それは良かった」

「もう少し穏やかな食べ方出来ないんですか……?」

 少し引き気味になりつつも、どうにか目の前の少女二人に苦言を呈する。

そう言った瞬間に、少女二人の顔が一気にこちらに向く。

ぐりん、という擬音が聞こえそうなほどに勢いよく、かつ全く同時にこちらを向いてきた少女二人の圧に思わず口をつぐんでしまう。

甘原少女は勿論のこと、柚木宮少女も目こそ見えないが口や鼻筋、輪郭の形からなかなかの美貌であることが推測できる。

辛牙少年も上の中に軽く届く程度だし、Liarだって世間一般と比べると相当顔が整っている。

裏探偵関連者になるような人間は、顔面偏差値高めが備え付けのステータスだったりするのだろうか。

まあ俺も整っている顔面を眺めるのは嫌いじゃない。寧ろ好きまである。なのでお得だなあくらいの軽いノリで日々を過ごしている。

……まあそれはそれとして、そんな美形の皆様に唯一異論を呈するとすれば、真顔だったり怒ったりするときの圧が凄まじいという所だろう。

故に、今俺は結構冷汗が出るほど気圧されているのである。

「……この食べ方は嫌なのかね?」

 爪楊枝を唇でぴこぴこしながらそう聞いてきた柚木宮少女に、俺はちょっと苦い顔をしながら頷いた。

すると彼女はふむ、と少し考え込むしぐさをする。そして唇をフニフニとつまみながら、一言こう聞いてきた。

「君はオムライスのケチャップの絵を崩せない人種かい?それとも動物の形をした菓子パンが食べられない人種かい」

「いやそうじゃないんですけど」

「……左様か?ではなぜ」

「なんか首と四肢と胴体バラバラにして食べるっていう方法が軟化猟奇的に思えてしまいまして……もう一口でポイっと食べちゃってほしいんですよね」

そう告げると、先ほどまで自由気ままにピコピコと動いていた爪楊枝がピタリとその動きを止めた。

そして甘原少女が作った他の知育菓子の像を眺めて暫く思考する。

「猟奇的……なるほど。理解した改善しよう」

 そう言うが早いか、柚木宮少女は残されていたパンダの銅と手足をさっさと口の中に収めてしまった。

それは気づかいだったのか何なのか、どちらにせよ彼女の食べ方は露骨に変化した。

有言実行が早い彼女に少し感心しつつも、俺は彼女の手元に視線を落とした。

彼女は甘原少女が作っていた知育菓子の完成品の山を延々消費しつつ、手元でガリガリと何か作業を続けている。

気になって覗きこんでみれば、彼女が作っていたらしい人形と目が合う。

「うわっ!?」

 柚木宮少女はその人形に顔を書いたり淡々と作業をしていた。

悲鳴を上げてしまったのは別に人形という概念そのものが怖かったからではない。……まあ理由的に似てはいるのだが、その人形があまりにもリアルで悲鳴を上げてしまったのだ。

彼女は人形と共に膝に写真を一枚乗せており、それは非常に美しい女性の写真だったのだが……その写真がそっくりそのまま出てきたのではないかと錯覚するほど素晴らしく、手元の人形に顔や質感が再現されていたのだ。

「凄……」

「依り代を見るのは初めてかね?」

「あ、はい初めてです」

「……どう説明したものか。ああそうだ、義肢の類だと考えると良い。自分の体の代わりにするものだ。性能は勿論のこと、外見も優れていた方が成功率が高い。故にこんな完成度になる」

「なるほど」

 うんうんと頷いている俺の行動を見て、柚木宮少女は満足そうに笑いながら言葉を発してきた。まあその言葉には、「まあ推測に過ぎないのだが」という枕詞がついてはいたのだが。

「これで件の桜氏とやらの行動をトレースするのだろうさ」



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