崩壊
結構本気で行き詰ってます。なれない事始めるもんじゃないね。
これ終わったら元のスタイルに戻そうと思います。
「なんで視えてる…って言われても、ねぇ?」
困ったような顔をされても、こちらもどうしようもない。
視えているから視えているとしか言いようがないのだ。
だが恐らく、彼女が聞きたいのはそういう事ではないのだろう。さてどう説明したものか、と揃って首を捻っていると、彼女は少しばかり動揺していたLiarの胸ぐらをつかみ、それこそ噛みつきそうな勢いでまくしたてる。
「だって私の周りに視える人なんて居なかったのよ!?テレビで家系の問題だなんだって聞いたから親戚全員に聞いてみても皆違ったわ!挙句の果てには私が狂人扱いよ!?」
なんと言えばよいのか。妖怪が認知できる人間であれば、多分一度は通る道だ。
確かに家系によって視える視えないは結構分かれる。しかしそれは霊感のある血筋云々ではなく、ただ単純に家族と過ごす間で「妖怪はいる」と考えるか「妖怪はいない」と考えるか、おおよそ価値観が定まってしまうからである。
つまり何が言いたいのかと言うと、俗に言う「霊感が強い」家庭は妖怪はいる、視えるならそこに居るんだと家族の大半が思っている。
そのため後々生まれてくる子供も、皆視える、居るのが当たり前だと言っているからこれは普通のことなんだ、と「妖怪が見える自分」を否定せず保持し続ける。
それが俗に言う「霊感が強い家庭」が出来上がるカラクリでなのだ。
「あのそれは」
「なのにどうしてあなたたちは視えるのよ!ずっとずっとそんな人いなかったからこんなことしたのよ!なのにどうして今になってあなた達みたいな人が出てくるの!」
「小野で」
「ねえ!なんで!何でなのよ!ねえっ!」
「…………たすけてー」
胸ぐらを掴まれてしまったので、どうにか相手をなだめようとしていたLiar。
しかし数回話しかけた時点で小野寺由紀にこちらの声が届いていない事を察し、吐きとやる気の諜報が一切感じられない声で、此方に援けを乞うてきた。
だが私もちーちゃんも動く気がない。その場でぼんやりとその様子を眺めている。
しかしそんな私たちの様子を見てしびれを切らしたらしい。
発狂して叫び散らす小野寺由紀を見て怯えきっていた馬場美也子を必死になだめていた助手が、Liarを助けようと動き始めていた。
しかしそんな彼の挙動を知ってか知らずか、私たちの援けは得られないと悟ったLiarは、一つため息をついてからあっさりと小野寺由紀の束縛から脱出していた。
「えっ?なんで、どうして!?さっきの子はどこに?」
「いやーお姉さん良い反応するねえ。こっちだよこっち」
いつの間にか小野寺由紀の背後に回っていたLiarは、白黒ボーダーのノースリーブの恰好でからからと笑いながらキャスケットを目深にかぶり直している。
「え……っ?え?」
狼狽している小野寺由紀の手の中には、常日頃Liarが着ている紺色の前開きのジッパーパーカーが残されていた。
「ハイじゃあこれ、返してねお姉さん」
「あ……っ」
先ほどのタジタジ具合はどこへやら、いつものような軽いノリで小野寺由紀からパーカーを奪還した。
パーカーと言う一枚の布すら自分の掌から零れ落ちて行ったのが、心の傷に障ってしまったのかそのまま呆然自失状態に陥ってしまった。
「あらら」




