中途
短めえ!
妖怪を前にしているというのにあまりにも気の抜けた会話をしている私たちが気に食わなかったのか、トモカヅキが少し不服そうに眉をしかめる。
妖怪と言えども感情がないわけではない。へたすれば擬態している私本人よりも感情豊かかもしれないぞこのトモカヅキ。
「あなたたちは一体何をしているんですか?」
突如背後から成人男性特有の低い声が聞こえてくる。
取り敢えず真横に居るちーちゃんを見るが、全力で否定される。
なので田中の方を見直してみるが、こちらも全力で拒否られる。
ふむ、男性の声が出せる二人が自分の発声を否定した。そして私はこの声に聞き覚えがある。
そんな条件に当てはまる人間は、この事件現場には一人しかいないだろう。
固武堅固、ポマード眼鏡である。
「ンげッ」
「今潰れたカエルみたいな声出たよ千里」
「声帯を存分に無駄遣いしてたぞ」
「お黙りあそばせ?」
「お前の中のお嬢様口調概念築百年くらいだったりするか?」
「つまり何が言いたいのですかしら?」
「お嬢様口調が風化してるとしか思えんほど崩壊してる、って言いたいんだと思うよ」
「……あっそ」
我ながら少し幼すぎるとは思っていたが、ぷいっと横に顔をそむける。
そんなやり取りをしていると、ただでさえ短いであろう堪忍袋の尾が切れたのであろう、固武がずかずかと足取り荒くこちらに向かってくる。
そして私の方を掴もうとしたので全力で威圧すると、一気に方向を変えてちーちゃんの肩を掴んだ。
ちーちゃんの顔が露骨に歪められた。
「うお、しくった」という顔をしているのだが、かの人はそれに気づいていないらしい。
「一体何をしているんですか、答えなさい!」
「え?」
「は?」
「……はあ」
「へえ~♪」
固武堅固のその質問に対し、私たち裏探偵がらみの四人組は四者四様の態度を示した。
助手は驚きが隠しきれず、動揺の滲んだ声を出す。
ちーちゃんは驚きを隠す気すらなく素っ頓狂な声を出した。
私は「やはりこうなったか」とため息をつき、Liarはひとり楽しそうに口元に人差し指を当てニヤニヤと笑っている。
そして、私たちが何故こんな反応をしたのかを説明するような悲鳴がその場所に響き渡る。
「えっえっ!?何アレ?女の子が二人……双子!?でもなんか変な感じ……何アレ!?」
それは事件関係者の馬場美也子さんの、狼狽の滲んだ悲鳴だった。
そして馬場美也子さんの後ろをペタリぺたりと、馬場美也子さんに見つからないように尾行するような形で隠れながら、油すましがついてきていた。




