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トモカヅキ

 半ば言い捨てるように宣言し、私は海の中に飛び込んだ。

ぼちゃんと大きな音と共に体の周囲を水がまとわりつく感覚がする。

(……格好その他、条件は揃えた。後は食いついてくれるかどうかだけど)

 そんなことを考えながら潜水、さらに奥深くへと潜って接触を試みる。

トモカヅキがどんな反応をするのか、スルーということはないだろう。

ひたすらに潜水、目安としては海女が目標とするアワビやウニが多く生息しているところまで。

息を止めた時の持続時間は結構ある方だ。おそらくは一度の潜水でどうにかなると思うが……

(っていった端からご登場か)

 目の前には古き良き装束の海女の姿があった。しかしその着物は死に装束に使われる合わせ目にされており、鉢巻にはあるはずの魔除けの印がなく、異常に長い。

トモカヅキに違いなかった。会いたかった妖怪を前に自然と口角が上がり、目を細める。

目の前に居るそれも、自分がもうトモカヅキであるということを隠す気がないらしい。私の動きをそっくりそのままミラーリングし、楽しげに笑って見せる。

そんなトモカヅキのすぐ傍には、気を失った状態の失踪者、小野寺由紀の姿があった。

(呼吸はトモカヅキが確保してて外傷もないか……私からしたら有難い限りだけど、意図が読めないな)

 妖怪を使い、わざわざ海の中に引きずり込んでおいて殺害しないとは。今まで見たことのない事例だ。

(長々観察できない事だけが心残りかな)

 たとえ呼吸が確保されていたとしても、状況が状況だ。あまり長引かせるのはよろしくない。

《良いわねあなた》

 頭の中に突如現れた文字列に、一瞬理解が追い付かなかった。

しかしその文字列と、目の前のトモカヅキの口の動きが一致していたことから、私はその文字列がトモカヅキの声であると気づいた。

私は本来ブーストなしでは海の中での妖怪の声は【聴こえ】ないはずだ。それだけ能力を持っていない。

ちーちゃんか田中がいれば別だったかもしれないが、今は私一人なのだからその可能性は除外できる。

しかし無意識のうちに、少しでも多くの情報を得るために聴こうとしているのだろう。結果、音として拾うのではなく文字を目視して読むような形で、トモカヅキの声を認識する、というゴリ押しの方法をとっているのだ。

《あなた頂戴な》

 その言葉の意味が分からず、そのまま「不可解」を態度に出してしまう。

トモカヅキはそれが面白かったのか、クスクスとひとおおり楽しげに笑った後、自分の顔を指で指し示して見せる。

すると、トモカヅキの顔が見慣れたものに変化していく。

整っているとは思うが、どこか作り物のような無機質さを感じさせる顔。

(……私の顔?ああ、そういうことか)

 どうやらこのトモカヅキ、私の居場所がそっくりそのまま欲しいらしい。

つまるろころ、私となり替わりたいということだ。トモカヅキは海に潜ってきた海女を効率的にだますために、ある程度の変身能力を持っている。

それを全力で活用すれば、誰かに成りすますということも理論上可能だろう。

だが、不可能可能のそれ以前に。

「お断りだよ、気持ち悪い」

 全力で拒否の意を示し、こちらに手を伸ばしてきたトモカヅキを躱してから、その隙を突いて意識のない小野寺由紀を回収する。

すると、先ほどまで余裕綽々だったトモカヅキの表情が一気に険しくなり、慌ててこちらに向かってくる。

やっぱり契約内容は『小野寺由紀』を海中に留め置くことなのだろう。

ただ目当てのものは回収できた。そんな状態で相手のテリトリーに留まるような私ではない。

「海中から出てでも取り戻しに来るなら好都合、引きずり出してやる」

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