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鸚鵡二羽

「悪い。随分待たせたな」

「別に良いよ。ちーちゃんが使えないと私も困るし」

 こきこきと首を鳴らしながら軽く詫びてきたちーちゃんに対して、こちらも軽い調子で返す。

ただ『気にするな』と言うだけでは、この生真面目君が気にし続けることは火を見るよりも明らかだ。

なので事実も織り交ぜて、しょうがない事なんだと強調しておく。

その意図を察されてしまったのか、苦笑を浮かべて頭を軽く撫でられた

「………」

 なんとなく暖かく感じられて、帽子の上から頭を押さえれば、ニヤニヤとした表情の雑用係と目が合った。

コイツ、もう一回顔面にグーパン叩き込んでやろうか。

さっきよりは露骨ではないが、それでも感情を抑制して隠しきれていない。

「…………ま、そんな時間もないからね。今はなかったことにしよう」

 ぱ、と手を開いて興産に近いポーズをとり、処刑……もといお仕置きを先延ばしにする宣言をした。

その瞬間に見習いの表情が一気に硬くなったが、今は仕事中だということに意識を無理矢理持って行ったのだろう。表情や感情を一瞬で切り替える。

「で、千里。その一つ多い気配ってのは?」

「……馬鹿にしない?怒らない?信じてくれる?」

「おいおい、随分自信がないな。珍しいじゃん。どうしたよ」

 肩に手を置きながら質問をしてくるちーちゃんに対し、私はそれでも歯切れの悪い回答を繰り返していく。

「……ここって火災現場でしょう」

「おう」

「さっきも、油すましだったでしょう」

「おうよ」

「で、もう一つの気配っていうのが……水関連なの」

 その瞬間に、ぴしりという音が聞こえそうなほど見事に、ちーちゃんが硬直する。

そんなちーちゃんは、先ほどの余裕はどこへやら、珍しくウダウダしながら私の発言を反芻するように確認をし始める。

「……水関連」

「うん」

「火災現場に」

「うん」

「水関連の妖怪」

「うん」

 先ほどとは完璧に真逆の立場で会話が繰り返される。

先程の私の言葉を、淡々と、どこか惚けたような表情で反復するちーちゃんは数秒硬直する。

そして数泊置いてから、急激な緩急をつけて反応した。

「いや何でだよ!?」

「私に言われても……」

 耳元で叫ばれたせいで軽くハウリングする。

耳を押させて軽く蹲る。その状態のまま見習いの方を見てみれば、ニヨニヨといつもと少し違う珍妙な笑みでこちらを見ていた。

何を言いたいのか容易に推察できる。

「これがいつも俺たちが味わってるものですよ」って言いたいんだろう。あえて無視させてもらう。

「んー、論より証拠かな」

 軽く右目を閉じて意識を集中、視覚の方に補助を入れる。

「うお……っ妖気べっとり」

「血糊べっとりみたいに言わないでよ、ちょっと想像しちゃったじゃん……」

 そんなやり取りをしつつ、私は視界、ちーちゃんは聴覚に集中する。

2人して標的を絞り、2人してほとんど同じようなことを言った。

「向こうのほうが気配が濃い」

「向こうのほうが音がデカい」

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