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ガアとオルとマー

あっははははは、本題進まねー!次!次はグイっと進めますよ!

『あぶう』

 その一言に対し、俺と千里がとった行動はまるで同じだった。

即座に音が発された方向を絞り込み、その方角へ視線を投げる。

「なぁ、千里」

「何ちーちゃん」

「お前今、俺に補助……」

「残念ながら入れてない」

「まじかよ」

 あえて軽口のように笑い飛ばした後、顔を引き締めた。

見えたものが何なのか、一瞬わからなかったというのもあるのだろう。

目の前の『それ』は、伝承通りの姿をしていた。

遠目から見れば、ミノを被った小柄なハゲたおっさん。

しかし伝承と違うのは、薄らと肌が透け、体の中に溜め込まれた液体が跳ねる様が見えている。

「【油すまし】か」

端的に言えば、体内に油を溜め込む妖怪である。

だがこの妖怪、油を溜め込むだけで炎に関する能力は一切持っていない。

わかりやすく言えば、攻撃能力を一切持っていないはずなのだが……


『あぶう』

——ぽちゃん、ぱちゃん——


 油すましは知能が高い…というのが、最近とある漫画家様の影響で広まったりしていたのだが、この油すましはどうやら知能が赤子並みのようだ。

同じ妖怪と言えど個人差というものは存在する。分かりやすいのが『鎌鼬』だろう。

ガア・オル・マーの三人のように、三位一体もタイプもいれば、単純に手足に鎌の生えたイタチのタイプもいる。

それに準じて考えれば、初めて見るタイプだが、目の前の『ソレ』もまぎれなく『油すまし』なのだろう。

「……だがまあ、問題は」

 これに悪意があるかないかなのだが。まあ、あるかないかで行ってしまえば、目の前にいる此奴は明らかに。


『あぶううううううううううううう!』


悪意というか、殺意に満ち溢れているのだが。

ぼちゃぼちゃドスドスと、何とも言えない音をまき散らしながら【贄】のいる方向へ突進していく油すまし。

「うわわわわわ!?」

 千里が補助を入れているであろう田中さんが明らかに狼狽している。

まあ急に視界に肌が半透明な水風船状態ミノじいさん現れたら怖いわな。

しかも自分の方に突進していると来た、普通にホラーだ。

「うわああああああああ!ガア!オル!」

 反射で叫んだであろうその名前に、鎌鼬は素早く反応した。

本来の自分の役目を全うするかのようにガアが足を突き飛ばして転ばせ、その足をオルが鎌で切りつける。

見事としか言いようのない連携によって、突進していたはずの油すましは地面に転がっていた。

そりゃあ痛いだろう、鎌鼬の鎌は斬鉄剣並みになんでも切る。

因みに一人だけ名前を呼ばれなかったマーは、治療薬を抱きしめたまま立ち尽くしていた。

まあ、何だ。気持ちは分かるぞ。気持ちはな。

ビビってはいたが目を閉じたりうずくまったりもしなかった田中さんは、少し困った顔をした後こう聞いてきた。

「……これ、どうします?」

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