第十三話 トライシクルドライバー
第十三話 トライシクルドライバー
次の日の朝、六時過ぎに起きた。
今から行くと、早朝のビーチは流石に寒いかも知れない。かと言って、十時くらいだと人が多すぎて、ホテル前のトライシクルは、つかまらないかも知れない。
なので、八時三十分には出ようと言う事になり、急いでフロントまで向かった。
ホテルの前には既に何処も人だかりで、どのトライシクルドライバーに乗っていいかわからなかった。
金の交渉もする必要があったのだが、思っていた以上に高い。
基本ドライバー達はグループで固まっている。
それで、固まっていない、独立した大人しそうなドライバーを探したが、全然いない。会話していると、感に触る連中も多かった。ボラカイ島は思ったよりガラ悪い。
タクシーは全然来ないし、タクシー乗り場の順番待ちは半端なかった。
仕方なしに、一度断った元締めみたいなおっさんのトライシクルに乗ったが、何故か十分もしないうちに停止して、他のドライバーに乗り換えと言う、
「は?!、何故に?!」と言うと、さらにここで、最初に約束したホワイトビーチまでの料金を払えと言う。
流石にキレて、文句を言おうとしたら、先にえりんがキレてしまった。
「なんで払わなあかんねん!!ビーチまで連れて行かんかい」と男顔負けの関西弁で怒鳴り出した。
おいおい、いかつい元締も強気だったが、自分も、
「ドライバーは、代わる必要ないやろ!!ビーチ着くまで金は払えない」と、ここは英語だが怒鳴った。笑笑。
すると、何台ものトライシクル軍団が集まって来て囲まれてしまった。
さらにえりんのヒートアップは止まらない。
「もともとの値段も高すぎるやろ!!、ええ加減にしいや」もう、映画の、極妻の姉さん状態だった。ドライバーの人数は七、八人はいた。しかし、えりんのど迫力に、日本語がわからない元締めは戸惑い出した。まぢでビビり出したのだ。マズイ。
フィリピンでは、叱責などされて、人前で恥をかかされる事は良くない事なのだ。名誉に関わる。
しかも、元締めが怒鳴られるなんて示しがつかない。他のドライバーは子分らしかったが、小柄の連中が多かったので、いざとなったらぶちのめすかと思ったが、映画ぢゃあるまいし、複数の人数に勝てるはずがない。えりんは散々ヤラれて、海に捨てられて、自分はあっさり殺されるだろう。
日本とは全く違って、大袈裟な話ではない。フィリピンではこんな事で殺人事件など日常茶飯だ。元締めが怒鳴られているので、合図さえあれば飛びかかってくる状態だ。ここは冷静に収める必要があったので、
「ここまでで最初の金額の半額でどうだ?!」と交渉に持ち込もうとしたが、えりんのヒートアップは止まらず怖いくらいだった。
なので、まず先にえりんをなんとか抑えて、
「まあまあ、ブラザー!!落ち着こうや」と話に持っていた。けれど、流石に全額払いは流石にふざけているので、引かない所は引けない。
「現地に到着していないのは確かなのだから、ここは譲れない、
「半額払うし、ここで終了にしてくれ、また今度乗せてくれよと」上手に持っていった。
かなりの時間揉めたが、流石に向こうも、折れて握手して、こっちも下がったので、元締めも、観光客に手を出すと、今後のマイナスになるのはわかっていたので半額で収まった。
実は、前の晩、中国に遠征してる例のフィリピン人のトレーナーに電話して、ボラカイ島の治安を聞いていたのだ。
基本はセイフ、安全だが、時々ノーセイフと聞いていたのである。最近殺人があったらしい。
まあ、とりあえず冷や汗もんで安全にはなったが、もちろん何かの捨て台詞を言われたて、そこで放置されてしまった。
「とりあえず歩くか?!」とえりんに言うと、怒り狂って色々とブー垂れていたが、素直に歩き出した。
しかし意外にもすぐに別のドライバーが見つかったので、何とかホワイトビーチまで行ける事になった。十分くらいでビーチに着いた。
ビーチに着くと、なんとその連中が、海の家の露店商の前に、やはり七、八人で、たむろし、こっちを指差しながら、明らかに悪口を言っている。悪い予感がモロ当たりだったが、ここは逃げてはいけないので、ビールを二本買い、元締めに一本渡し、もう一本は自分で、元締めとビールで乾杯しながら、
「許してくれよブラザー、ウチの中国人のワイフはブチ切れたら、止まんないんだよ、俺も困っているのさ」と洋画のワンシーンみたいに素直に謝った。
もちろんこっちは悪くないが、仕方ない。殺されたくはない。あと、四、五日の安全は積極的に買わなければならない。
流石に気持ちが通じたのか、
「うちのワイフもうるさい」とかの話になり、
「俺には、ネグレス島にフィリピン人チャンプのボクサーの友人が何人もいる」と、何気に入れておいた。笑笑。
なんとか助かったが、えりんは不満そうだった。また、
「いざとなったら中国人が助けてれるから大丈夫」とか寝言を言っていた。
「その前にヤラレたらどないすんねん」と言ったが、ぷいとしていた。
確かに島の中にも華僑の店は、至る所にあって多かったが、その人らも暇ではない。他人のトラブルなんか面倒なだけだろう。
少しは安心したので、海の家に行って、ロッカーを借りて、着替えた。
とりあえず、飯を食おうと、テーブルに座った。二人でビールとジュースを飲んで、焼いたサンドウィッチみたいやつを食べた。「レイレイも連れてくれば良かったなぁ〜」って言うと、少しずつ機嫌が直って来た。
ビーチは流石に綺麗だった。外の日差しはきついが、意外に海の家の中は涼しかった。そこは二階で、風もあるし、海の眺めも良かった。だいぶ落ち着いてきたので、「そろそろ行こうか?!」で、下に降りた。砂浜はとても綺麗で、砂も白く、まんまのホワイトビーチだった。
海の色も最高に綺麗だった。
しかし、家族連ればかり多くて、モデル的なお姉ちゃん達は少なかった。えりんと来ているので、関係ないが、やはり気になるのは男の性だ。
それでも時々いるブロンドや、褐色のスレンダーなお姉いちゃん達をチラチラ観ているとえりんに、
「あなたは本当に女好きね」と言われてしまった。
砂浜からちょっとだけ沖に、上陸出来る、ちょっとした島みたいな場所があって、みんな一度はそこに行く。
階段もあって上に上がって展望台みたいな感じだった。そこへ行ってちょっと休憩し、また少し泳いで砂浜で休憩した。
色々なイベントやっていて、ありきたりのバナナボートや、パラシュートがあったが、驚いたのが、ヘリコプターに乗るというツアーだ。二十分か四十分か忘れたが、そう言う面白いイベントもあった。
今更アトラクションも要らないので、砂浜で二人、ゴロゴロしていた。ヤシの実が売っていたので、えりんに買って行ったが、ここでもぼったくりにあった。
確か四十ペソと書いてあって、確認もしたのに、カットして、受け取る時に、
「五十ペソ」とか言われ、
「なんで?!四十ってゆうたやん」と言うと、
「これはサイズが大きいので」とか言うのである。ホンマ、中には程度の低いやついるんやなぁ〜と呆れ返ってしまった。
こっちも慣れてきたので、怒鳴りまくって、書いてる看板指差して、四十ペソしか払わなかった。
ちなみにフィリピンにも、出稼ぎ労働者がアジア各国から来ているので、地元の人ではなかったかも知れない。
フィリピン人が大好きなので、そうであって欲しかった。まあ、なんやかんやで、昼の三時前になり、帰ろうと言う事になった。えりんは結構泳いだので、まあまあ満足そうだった。
流しのトライシクルを何とか見つけて、ホテルに帰って来た。
「明日も行く?!」と服を脱ぎながら言うと、
「うん、行く」と言いながら抱きついて来た。もう、がっつく事も無かったので、一発だけヤって、シャワー浴びてすぐ寝た。
次の日もビーチに向かった。今回は、七時にはホテルの前のタクシー乗り場に行き、タクシーを待った。
というか、もうマイクロバスみたいな、乗り合いのタクシーはもう既にいて、先に家族らしい客が乗っていた。早朝は意外と空いているのだろう。
しかも、均一料金で乗って行けるという。なので、えりんと二人同乗した。
すぐに時間が来て、マイクロタクシーは出発した。家族連れはアメリカ人だった。
子供達は嬉しそうに話していて、ホワイトビーチ以外のビーチは、既に昨日行っていたので、
「今日はホワイトビーチに行くんだ」と言っていた。
マイクロタクシーだと早い。
あっという間の十ニ、三分くらいで着いた。
昨日と違って、本日は、幸先良さげだ。朝は早かったが、それほど現地は寒くなくて、ええ感じだった。
何のトラブルもなく、水に浸かった。
そして、今日はビーチの後、お土産を見に行くので、午前中で切り上げた。
続く〜




