第十四話 過払い請求
第十四話 過払い請求
ビーチを上がってそのままモールに向かった。
一番近いモールは歩いて行けたので、プラプラしたが、身体がベトベトで気持ち悪かったので、一度ホテルに帰る事にした。
トライシクルの連中にも慣れて来て、スムーズにホテルまで帰って来た。
普通は、連中も、殆どは気のいい人達で、たまたま最初の軍団が悪かったのだろう。
シャワーを浴びて、結局、モールは夕方にして、晩御飯もそこにして、
「昼寝でもすっか」になった。時間はたっぷりあるのである。
別にバタバタする必要ないのだ。窓を開けたら涼しかった。うとうとしていると、伊丹のマッサージのママから電話がかかって来た。
「正ちゃん、何してんの?!」
「ボラカイ島にいるよ」と言うと、
「ゆいが逮捕されたわよ」
「えっ、嘘やろ」と言うと、
「大阪のお店の女の子から聞いたから間違いない」と言う。
結構荒稼ぎをやっていたので、ガサが入ったらしい。
「ホンマかいな」と言うと、
「あの子ウチでも色々あったから当然よ」と、ざまみろ感が凄かった。
それほどの恨み辛みがあったのだろうか?!
「それと、部屋を貸して欲しいのよ」と言う。
中国人留学生で専門学校に行ってる男の子らしい。前から伊丹ママは、アパート売ってくれとか、色々と無茶な事を言って来ていた。
塚口の土地も高騰し出したので興味あるのだろう。
アパート貸すのに、えりんは特別だが、中国人の留学生に貸すと、全然違う学生に入れ替わったり、学生が勝手に自分の部屋を赤の他人に又貸ししたりするのだ。
ママとの話は、面倒くさいので、
「フィリピン帰ってから考えるよ」と答えると、
「今度は、私もフィリピンに連れて行ってよ」と言う。
このママは以前、自分が一級船舶の免許を持っていると言うと、免許を取りたいから教えてと、うちのお化けアパートに押しかけて来たが、絶対にヤラせてくれなかった。
必死で頑張っても、拒否されるので、諦めて、机の上のテンガをママに握らせて、テンガにぶち込もうとしたが、大爆笑となり、ヤル気が無くなったが、
後で、店の女の子達に言いふらして、大受けしていた。笑笑。
彼女は個性が強すぎて、自分が、ど中心主義の女だった。ただ、凄い美人なのである。日本で人気だった韓国人女優にそっくりだったのだ。
一級船舶の免許の海図の見方とか色々教えてやったが、ほぼ五択とは言え、日本語で受験して、合格出来るのだから頭も根性も座っていた。
手足も長くて、高身長だ。
なので、容姿を武器に男達を振り回していた。時には、甘えたりも出来るし、本当に狡くて優秀な女だった。適当に電話を切り、えりんに、
「ゆい捕まったってよ」と言うと、
「うそ?!、でも電話が繋がらないのよ」、
「WeChatもか?!」WeChatとは、所謂、中国のLINEである。
自分はリョウちゃんとしか繋がっていないが、当時の中国人同士なら、ほぼ100%使っていたはず。
えりんはゆいとは、仲違いしているが、同じマッサージ仲間で戦友だ。連絡くらいはしていたと思う。
「全然繋がらない、どうしよう、本当かしら?!」、
「いや、伊丹ママの言う事は、全然信用出来ないし、ゆいはそんなヘマしないだろう」と言うと、
「そうね」と言った。
あんなに、最期喧嘩しても、一緒に店やるくらいだから、まだ信頼関係あるのだろう。
少し嫌な変な気分になったので、
「そろそろ行こうか」とえりんに言った。周りの中国人の知り合いが、個性過ぎるなか、えりんは、気が強い割には、慎重で優しかった。
以前塚口で、浮浪者に自分の買ったばかりのパンをあげているのをみた事がある。昨日のぶち切れ感とは違い、少し、しおらしくなっていた。
海辺へ行く。
トライシクルに乗りながら、
「大丈夫だよ、ガサ掛けられたところで、全員逮捕されるかどうかはわかんないし、逮捕されても、証拠不十分で、すぐに出て来れるかも知れない」とえりんに言った。トライシクルは、モールに着いた。
ボラカイ島には、第一ステーション、第二ステーション、第三ステーションに大体分かれている。
何処のステーションか、何処のモールに行ったか忘れたが、適当に賑わっている所に連れて行って貰った。
これらは繋がっているので、歩こうと思えば歩いて行ける。
とにかく適当に夜の街を回った。中華系の旅行代理店や、韓国系もあった。色々な国から進出して来ているのだろう。
最近は日本でも知られるようになって来たが、その当時は、みんなフィリピンなら、マカティか、セブ島くらいしか知らなかったと思う。
ボラカイ島のお土産に関しては、ティーシャツくらいで、余程目につく物はなかったが、食べ物は面白そうだった。
とりあえず、チキン丸焼きがぐるぐるの店に入った。テイクアウトだけかと思ったら、中で食べれるらしい。
ずっとアルコール漬けだったので、コーラにして、デカいチキンを頼んだ。
えりんはスプライト系に戻っていた。その後、軽く散策し、レイレイのお土産と、おばあちゃんのお土産を買って、ホテルに帰って来た。
トライシクルの運転は難しそうで、無口な人が多いが、だいぶ空気感を掴める様になって、たまの会話も、ええ感じになって来た。
夜風が結構気持ちいい。アルコール飲んでないのに良い気分だ。
ホテルに着いた。ホテルのロビーは何だか賑わっている。何かイベントをやっているようだ。あまりノリが違ったので、自分らの部屋に帰って来た。
シャワー浴びて、色々と会話していたら、リョウちゃんの話になった。
「別れて欲しいとかの前に、あなた普通に騙されているわよ、イイカモぢゃん」と言う。
確かに今まで貢いだ額は、どれくらいだろうか?!
初めて知り合ったのは中国人スナックママが普通に、
「彼女いないなら紹介してあげる」と言われ、紹介して貰ったのがリョウちゃんだった。中国名は難しい。日本と読み方が全然違うくて、発音が日本人には難しい。
でも、日本読みが、リョウとも読めるので、リョウちゃんと呼ぶ事にした。えりんもそうとう美人だが、リョウちゃんには全く勝てない。
普通の人が木材なら鉄は可愛い、銅は美人、銀がえりん、金かプラチナがリョウちゃんだった。
リョウちゃんとは、自分が、普通の日本人より面白そうだったのか、よくつるんでいた。
リョウちゃんの部屋に行く時、
「マルボロメンソール買って来て」から、自転車、自動車教習所代、日々のプレゼント、大学受験料、大学の入学金など、覚えてないのも山程あって、本職やカルチャーセンター、学習塾、不動産の家賃、稼いでも稼いでも足りないくらいだった。
それでも何とも思っていなかった。ブサイクな女と付き合ったって、人生面白くないと思っていたからだ。
それに最終的には、退職金で払えばいいさと思っていたので、どーって事なかった。
でも、えりんの説教は続く。
「ゆいちゃんの中国人の友達が、リョウちゃん知ってるって、あの娘評判悪いよ。あなたが教習所代、出してあげたのに、最初に他の男をレンタカーに乗せたんだって?!」と言われた。
「知っとるわ、塚口で返却するとこ見たわ」と言うと、自分の馬鹿さ加減に、笑いも出てしまった。
「馬鹿ぢゃないの?!」と二人で笑った。「確かにイイ女だけど、人として終わってるわね」とえりんが言ったが、
(お前もだろ)と思った。
二十代の頃、泣く泣く借金で、ちゃんとした会社員の彼女と別れて以来、ろくな女と知り合っていない。その彼女だけが、本当にちゃんとした人だった。
ちゃんと付き合って、結婚まで考えていたのに別れてしまった。
それ以来ろくな事はない。何度も何度も、同じ過ちを繰り返してしまった。過払い請求で一発逆転してしまったのが更に失敗だったかも知れなかった。
サラ金や銀行、信販、など他に借金が、六百万程あったのに、借金はちゃらになり、何と過払金と過払い利息で、逆に六百二十万程返って来たのである。実際には、弁護士と、司法書士に2割と手数料払ったので、借金ちゃらで、四百八十万程返ってきた。
その時、書類とか、ちゃんとファイリングしてあったので、サラ金も信販会社も司法書士や弁護士との話し合いで、全然誤魔化しが効かず、司法書士の先生に、
「あんた、こんなに、かちっと書類揃えたり、ファイリング出来るマトモな人間が、何で借金なんかすんねん。他の人は殆ど書類とか捨てて、大変なんやで」と言われてしまった。
その当時は、売れない芸人の、ゴスロリ女と暮らしていて、結構資金のつもりでいたが、金受け取ると、贅沢三昧になり、「舞踏会やりたい」とか言い出し、ヴァイオリンとピアノを買ったのだ。
自分はヴァイオリンは十年以上弾いていたし、そろそろ少し良いのが欲しかったので、全部で百万くらいのを買った。
と言っても、プロが使うのは一千万どころじゃないので、ショボいが、良いヴァイオリンだ。
ピアノは、デジタルピアノにした。お化けアパートには持ち込めないし、midi端子の付いてるスタンダードな、アップライト風のデジタルピアノにした。
所謂電源入れるやつである。それでも五十万くらいした。残りはアパート購入資金と、くだらない散財と、舞踏会を二回もやった。
全国からゴスロリ達が芦屋に集まり、びっくりした。そして現金がなくなる頃に、ゴスロリは出て行ったのである。
そうや、リョウちゃんの話だった。えりんはそんなにきつくは責めなかったが、「あいつもヤバいかも知れないわよ」とえりんが言った。リョウちゃんの事である。リョウの友人の『ネネ』ちゃんが、また悪いのである。
後に、この子は本当に捕まる。
留学生の女ボスらしい。何か中国人のコミュニティに行くと、関西圏の噂話が色々出て来て、ネネちゃんの周りのリョウちゃん達は、社会人の中国人コミュニティの中でも相当評判がよくなかったのだ。
俺には全く知ったこっちゃないが、えりんが色々聞いてきて、しつこく寝物語に話をするのである。
今夜は、あまりもう聴きたくなかったので早く寝た。
続く〜




