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第2話 ティオ、仲間を得る


 背丈ほどの草をかき分けてしばらく進むと。

「あ、キノコだー」

 ティオはキノコを見つけた、白い水玉模様の赤いキノコ。

「なんかソレ、やばくねーか?」

「えー、でもいい香りだよ」

 仮面を外して匂いを嗅いでいる、匂いはいいらしいが、うかつに食べて大丈夫なのか、と心配するリケをよそに。


「まだあるよ」

 今度は白い水玉模様の青いキノコを見せた。

「――完全ヤバいだろそれ」

「そうかなぁーそんな事ないと思うけどなぁ」


 でもとりあえず食べるのは後にして、キノコをポシェットに入れると、他にないかと探すティオを見てリケは、キノコよりはましなものをと、再び木の実を探し始めた。


 やがて、手の届きそうな場所に、赤い実をたくさん付けた木を見つけた、握りこぶしほどの実をもぎ取ると、中身は簡単に割れた、匂いを嗅いでみて一口かじってみる。

「すっぱ!」

 顔のパーツが真ん中に集まってしまうほど無理だった。


 こんなの食べれない、と思わず後ろに放り投げたが、その実が何かモコッとしたものに当たった事にリケは気づかない。


 モコッとしたものは、目をギラリと開いてノソリと動き出した。

 今、気持ちよく昼寝していたのに、ケツに何かをぶつけられた、よくも起こしやがったな、どこの誰だと後ろを振り返ったそこにはティオがいて、思いっきり目が合った。


 そいつは、キノコを探すのにしゃがみ込んでいたティオの体と同じくらいの大きさの モフモフした黒い犬だった。

「きゃぁん、モフモフだぁー可愛い~!」


 昼寝を邪魔されて機嫌が悪い犬は、ティオに対して牙をむいて威嚇している。

「ほら、怖くないよ、おいで~」

 しかし、ティオはそんな犬に恐れる素振りも見せずに手を伸ばしてくるので、ますます怒った犬は『グモモモー』と唸り声を上げて、今よりも三倍もの大きさに姿を変えた、ただの犬じゃなかった。


 どうぶつ好きなティオもこれにはびっくり、大きくなったモンスター犬は凶暴で凶悪そうな顔になって可愛くない。

「うわぁぁぁっ‼」

 大きな口を開けてティオに襲い掛かろうとした時、後ろにいたリケが投げた丸い玉がモンスターの口の中にヒットしたかと思うと、口の中でボワフンっと爆発した。リケお得意のコショウ爆弾だ。


 ダメージが相当大きかったらしく、くしゃみを連発して悶えている、少し納まると涙目になりながら、ティオとリケをにらみ付けてきた、完全に怒らせてしまったようだ。

「これ、やばくね?」

「うん、かなりヤバいね」


 危機を感じ一斉に走り出す二人、牙をむいてうなり声をあげながら四本の足で大地を踏み、長いシッポを振り上げながらどこまでも追いかけてくる凶暴なモンスター。

「もぉっ、しつこいなぁ!」

 そう言ってリケは、ポンチョを風になびかせて、腰の剣を抜くと追って来るモンスターに向かって構えてみせた。


 渾身の一撃とばかりにその顔面に向かってその剣を振り下ろす、が、モンスターは前足を振ってリケを弾き飛ばした。

「うわぁぁっ!」

「リケーっ!」

 ポンチョが空高く舞い上がる。


 敵の一人を始末出来たモンスターは今度は、ティオを狙って鼻息荒くゆっくり近付いて来る。

「よ、よくもリケをー、リケの仇だぁ!」

「勝手に殺すなー!」


 舞い上がったのはポンチョだけでリケ自身は近くの茂みに飛ばされ、それがクッションとなりほとんど無傷で大丈夫だったのだが、モンスターはそんな事はお構いなしとばかりにティオに襲いかかってきたので、ティオは魔法の杖を固く握り閉めた。


 足を力強く踏ん張って杖を高く掲げる、すると空気の渦が青い光となりティオの体を吹き抜けると、マントがブァサッと風になびく、その勢いで杖を大きく振り回すと、杖の先に青い焔がまとわり付き、その勢いで襲いかからんとするモンスターに向かって。

「ベリオガルパス・ヴィスヴィトールっ‼」


 呪文を唱え振り下ろした、すると青い焔はモンスターに襲いかかり 倒す!

 ……はずだった。

『ぽすん』

「――あれ?」

 一連の動きはかっこ良かったのだが、最後は気の抜けるような音を立てて消えてしまった。


「それだけかい!」

 しかし、目の前で、ぽすっと消えた焔に逆にビックリさせられたモンスターは怒り心頭、更に体を大きくさせ、目は吊り上がり牙もさらに大きく伸び二本足で立ち上がり、増々凶暴で凶悪な巨大モンスターの姿になった。


「うわぁ、進化した!」

 そして今度は、炎を吐き出して再び襲いかかってきたのである。

「うわぁぁぁぁーん‼」

「余計に怒らせただけじゃんか!」


 炎を振り切り走る二人、周りの木々をなぎ倒しながら容赦なく襲いかかってくるモンスター、更に必死に逃げる二人、更に追いかけて来るモンスター。

 間の悪い事に、逃げてきた先はもう行き止まりだった。


 足元は高い高い崖になって下が見えない、落ちたらひとたまりもないだろう、モンスターはもうそこまで迫ってきていた。

 ターゲットの二人はもう逃げられないと分かったのか、ガルルと息を吐き出してゆっくりと近付いて来る。


「まじヤバイよ、どうしよう~」

 頭を大きく振り上げて、炎を吹く体制になったモンスターに、ティオとリケは絶体絶命のピンチ。

 しかしその時突然モンスターが叫び声をあげたと思ったら、なぜかその場に倒れてしまった。

「⁉」

 何が起こったのかよく分からない二人だったが、倒れたモンスターの向こうに人影が見える。

 茶色の膝まである長いコートを風になびかせ立っている茶髪の男性、顔にゴーグルをはめ、手には大きなラッパ銃を構えている。

「誰……?」


 その男性はゆっくりと銃を降ろすと、かっこよく腰の太いベルトに差し、唖然としているティオとリケにゆっくりと近付いてきた。

「大丈夫か二人共、ケガは無いか?」

 優しく声をかけてきたが、ゴーグルのせいで表情が見えない。

 少しまだ警戒している二人に、今度は外したゴーグルをおでこにかけ、ニコッ。


「あーっ‼」

 驚いた、完全にサバイバル戦士な姿になってはいるが、この顔はさっきティオをしくこく追いかけて来た串屋のにいちゃん。

「それにしても危ない処だったな」

「な、何でこんなとこまで――」


 素直に驚くリケだったが、ティオはいつの間にか面白仮面をかぶっていた。

「や、やぁ、助けてくれてありがとう、ボクは君の事なんか知らないけどね」

「いや、もうバレてるって」

 リケがあきれて言うと。

「あははは、安心しろ、串代をもらいにしつこく追いかけて来た訳じゃねーよ」


 串屋の兄ちゃんは、面白仮面の前にしゃがみ込むと仮面をそっと外して、優しく微笑みかけながら、そのおでこに。

 デコピン‼

「いでっ‼」


 痛そうにしてうずくまるティオに、兄ちゃんは両手をパンパンさせて。

「―っしゃ、食い逃げの罪はこれくらいで許してやるとして」

 そう言いながら立ち上がると、腰に手を当てて、少し偉そうに二人を見た。

「俺の名はセロ、こう見えて元ハンターだ、魔法だって少しは使えるんだぜ、ヨロシクっ」

 親指を立てて、にっこりと笑顔。


「よ、よろしく……」

 そんなセロの笑顔に、つられて二人も恐る恐るの笑顔でこたえる。

「で、そのハンターさんが何の用なのさ」

「いや、たまたまティオを見かけて、今でも純粋な魔法使いがいるんだなと感心したんだよ」

「ボクはいつでもどこでもこの格好だよ」


「しかし、西の森に行くのなら、子供のお前らにはまだまだ危険すぎるぞ、今のようなモンスターだってまだいるかもしれねーし」

「西の森に行く事、何で知ってるのさ」

「話は全部聞かせてもらった、こいつにな」

 セロが自分の肩に手をやると、そこに小さな可愛い茶色のトラ縞な猫が、ひょこっと顔を出した。

「こいつの名はロズウエルト、ロズって呼んでやってくれ」


 ティオは、突然現れた可愛いロズを興奮気味に、思いっきり瞳をうるうるさせながら見つめた。

「可愛いぃぃぃー、この子おっちゃんのペットなの?」

「おっちゃん言うな‼お前らが煙幕の中を逃げた後、こいつに後を追わせたんだ」


 肩にいたロズが口を開いた。

「ずっとこのアタシに後を付けられていたのに全く気付かないなんテ、二人共ダサッ」

「なっ‼」

 思わず生意気な事を言われて、カチンとくるリケだったが、ティオは気にしていない様子でロズを見ている。


「言葉もしゃべれるんだー、かしこいぃ~!」

「それにアタシはペットなんかじゃなくテ、セロの立派な相棒なのヨ、馬鹿にしないでちょうだイ」

 セロの肩から飛び降りそっぽを向くロズに、ティオは遠慮なしに近付いて行く。


「ほーら、おいで~、ゴロゴロ~~」

 猫をあやすように指を差し出してきた、バカにされたと思ったロズは、全身の毛を逆立ててフキーっと威嚇したが、ティオは全く恐れるフリもせず、可愛いを連発している。

 威嚇だけでは効果がないと悟ったロズは、今度は爪を立てて猫パンチを繰り出したが、ひらりとかわされると、余計にムキーッとなり、更に猫パンチを繰り出したが、どのパンチもかわされて、挙句には体をハグぎゅぅ。


「すげー、あのロズを手なずけるとは」

「無理やり捕まえたようにも見えるけど」

 ロズはめちゃくちゃ不機嫌な顔だったが抵抗するのも諦めたのだろう、ティオのハグ攻撃にされるがままになっていた。


「そんな訳でだ、俺もお前らの旅に付き合ってやろうかと思うんだが」

「――はぁ⁉」

「お前らを見て、俺のハンターの血が騒ぐというか、またあんなモンスターが現れたら俺に任せろってんだ、どうだ?」


 軽くウインクして見せるセロに、ロズをハグしたままのティオが言う。

「美味しいごはん作ってくれる?」

「もちろんだとも」

「わぁーい、あぁ、何て親切なお肉屋さんー」


 単純な理由でセロを受け入れたティオだったが、リケは思った、確かにピンチの時助けてくれたし強そうだ、この先どんな敵が現れても頼りになるだろう、でも何で仲間になろうとか思ったんだろう、何か裏があるかも、何かたくらんでいるのか?


「いやもう肉屋じゃねーけどな、っと、後これ――」

 セロがそう言いながら腰の後ろのベルトに引っ掛けていたものを外し、警戒したような目で見ていたリケに手渡した。

「これ……」

 それはさっきモンスターにやられた時に吹き飛んでしまったリケの茶色いポンチョだった。


「その恰好もセクシーでいいけど、寒いだろ?」

 ポンチョを脱いだ今のリケは、剣を納めるために腰に巻いた太いベルトの下は青いショートパンツに足首までの白いブーツ、上半身は首に巻いた赤いスカーフと、未発達の胸元を隠しているだけの青地に白のデザインが施されたトップスだけだ、これではおへそが丸見えで風邪をひきそうだ。


「子供扱いしないで、余計なお世話よ、戦士は皆正体を隠しているものなの!」

 セロから奪い取るようにポンチョを受け取り、急いで羽織るリケに、横で見ていたティオがポツリと。

「リケは恥ずかしがり屋さんなの?」

「は、恥ずかしくなんか無いわよぉ!」


 そう言い返したリケだったがその顔は真っ赤だった。

 女戦士ならこういう格好がいいと思ったんだけれど、イザ着てみれば少し恥ずかしくなってポンチョで隠したとは恥ずかしくて言えない。


「そ、それにまだあたしは、あんたの事仲間にするつもりは――」

「グルルルー……」

 リケのセリフが終わらないうちに、倒れていたはずの犬モンスターが唸り声を出した、まだダメージがあるようだが、何とかして起き上がろうとしている。


「こいつ、まだ生きてやがったか!」

「ちょっと待って、ボクに任せて」

 銃を手に構えるセロをティオが制止させ、起き上がろうとするモンスターに駆け寄って行った。

 倒れているモンスターの口元にしゃがみ込むと、小さい手で優しくなでてあげた。


「大丈夫?痛かったよね、これ食べて元気出して」

 そう言ってポケットから出したものを、弱弱しく開けた口の中に入れてあげると、しばらく美味しそうにモグモグしそのままゴックン。


 すると突然、電撃でもくらったかのように大きな体をヒクンと跳ね上げると、全身から煙を吐き出さんかのような勢いで、苦しそうに体をくねらせてもがき出した。

「な、何を食べさせたの⁉」

「えっとね、赤いキノコ」


 周りの木々をなぎ倒し、のたうち回って苦しんでいるモンスターを見ながらティオは。

「やっぱり食べちゃダメなキノコだったんだ」

「悪魔かお前は‼」


 毒味をさせられた苦しさも少しは治まってきたモンスターは、涙目になりながらティオを睨み付けると、いきなり襲い掛かってきた。

「うわぁぁぁ!」

 突然の事だったので逃げる間もなく体をつかまれ、襲われ押し倒されたティオは――。


 その大きな舌で、ベロンとなめられた。

 その後は、大きなほっぺでスリスリされ、巨大だった身体も最初のモフモフわんこに戻っていった、あとはもう、しっぽをちぎれんばかりにフリフリして、ティオの体に乗っかってベロベロ攻撃。


「きゃはははは、くすぐったいぃ~‼」

 どうやら、完全にティオになついてしまったようだ。

「なんだこれ」

 いきなりな展開に唖然としているリケに、セロはしばらく考えてから。

「もしかすると、あのキノコには、食べた後に見たものを仲間だと思わせる効果があったのかも」


 いやこれは仲間というよりもその、何というか仲間以上の、仲間だったらそこまでベロベロしない。

「そんなヤバいキノコだったんだ、食べなくてよかった、色んな意味で……」


「名前を付けてあげなきゃ」

 ティオが体を起こすと、犬は可愛くお座りして、しっぽをフリフリしながらティオを見つめる。

「って、連れていくんかい!」


 リケがびっくりして叫ぶと、ティオは犬の体をハグして。

「だぁーってぇ、こんなに可愛いんだよぉ!」

 犬もティオも同じウルウル瞳でリケを見た、そんな目で見られると弱い。


「た、確かに可愛いけどよぉ、でもこいつはモンスターだぞ!大っきくなるんだぞ、凶暴なんだぞ、火ぃ吹くんだぞ!」

「まぁまぁ、今はこんなに懐いてんだ、もう襲ってくることも無いだろう」

 セロもリケをなだめてくれた。


「どんな名前がいいかなぁ、三つに進化するモンスターだから、ミコちゃん」

「女の子かよ!」

「んー、じゃぁ、黒い犬だから、クロちゃん」

「……お前、ネーミングセンス全く無いのな」

「じゃぁ、グレナディート・ギル・バルール!」

「なっ、突然どこからそんな立派な名前が‼」

「ボクの師匠の名前だよ、略してグレ子ってのはどう?ねっ、グレ子!」


 グレ子と呼ばれたモンスターは、ちぎれんばかりにシッポを振って、うれしそうに体を一回転させると、ティオの体にスリスリ。

「あははは、気に入ったのかい、よかったーグレ子!」


 楽しそうにじゃれあっているティオとグレ子を黙って見ていた二人は。

「師匠の名前をモンスターに付けるとか……」

「しかも喜んでるし、グレ子……」


 ぐぅぅ~

 ティオのお腹が鳴った、そうだった、お腹すいていたんだった。

「おじさーん、お腹すきました」

「おじさんも言うなセロと呼べ、それに俺はまだ二十歳だおじさんでは無い!」

「セロー、お腹すきましたー」

「よし、何か食えるものを探さないと」

 辺りを見回したけれど、ここでは食べられそうなものは見当たらない。


「もっと山の奥に行けば、食えそうな物がありそうだ、山菜とか木の実とか」

 すると、グレ子がティオの体を鼻でツンと突くと、体を大きくして大中小で言うところの真ん中、中グレコになった。

 体をかがめて、どうやらティオに背中に乗れと言っているようだ。


「どこかに連れていってくれるの?」

 グレ子の背中は、ふんわりして乗り心地がとてもいい。

「ちょっとまて、あたしも乗せろよ」

 グレ子は、そんなリケを乗せるのを少し渋っていた様子だったが。

「リケはボクの大切な友達なんだからグレ子にとっても友達なんだよ、乗せてあげなきゃダメだよ!」

 ティオにそう言われて納得したのか、ニッコリして二人を乗せると、ドスドスと力強く走り出した。


「あ、おいこらっ!」

 セロを置いてきぼりにして。

 グレ子は、森の木々の間を抜けて走る。

「どこに行くつもりなんだろう」

 リケに聞かれたけれどティオにも分からない。

「さぁ、どこに行くんだろうね」


 と、そこへ。

「こらこら、俺を置いて行くんじゃねぇっての!」

 セロが後ろから追い付いてきた、セロは大きなトラの背中に乗っている。

「うわっ、何ソレ、かっこいいぃー!」 

 ティオがびっくりして見ていると。

「フン、アタシの本気出した時の姿はこっちなのサ!」


 その声はロズだった、肩に乗っていたネコタイプの時とは違い、セロを乗せて走れるほどの大きさになって顔つきも大人びた表情に変わっている。

「大きいロズも可愛い~」

「可愛いって言うナ、セクシーなロズ姐さんとお呼ビ!」

「うんうん、ロズ姐さん素敵」

 ティオがそう言うと、走っていたグレ子がギャォンと一鳴きしてティオの方を軽く振り返った。

「もちろん、グレ子はもっと可愛いよ~」


 ティオは、つかまっているグレ子の首元をパフパフしてあげると、嬉しそうにキュゥンと鳴き、また元気に走りだした。

「か、かわいい……かなぁ」

 ティオの後ろに乗っているリケは何とも複雑な表情をみせる。だって、モンスターだし、でかいし、凶暴な顔だし、火ぃ吹くし……


 グレ子に連れられて着いた先は、少し開けた川辺だった。

 せせらぎの音が心地いい、川では魚が気持ちよさそうに泳いでいる、木々の間からこぼれる日の光がきれい、周りには美味しそうな山菜や木の実もなっていた。


「何、ここ?」

 大きな木のその根元には、乾燥した草や細い枝を集めて柔らかく丸く積み上げた場所があった、二人を降ろしてチビの姿に戻ったグレ子に丁度いい大きさ。


「もしかして、これってベッド、って事はここはグレ子のおうちなの?」

 グレ子は、お座りすると、そうだよと言うような表情でシッポをフリフリして答えた。

「へぇー、なかなかいい感じの場所じゃん」

 リケにも褒められた事で、うれしそうなグレ子は川に入って、しばらくバシャバシャすると、魚が何匹も打ちあがってきた。


「うわぁー、グレ子魚捕るの上手―」

「よし、火を起こそう、メシの準備だ」

 魚は串に刺して火であぶる、柔らかい木の実はそのまま食べられそうだ、山菜は煮てスープにすればいい、太い木を削って器にした、鍋はティオが持っている。


 全部セロが手際よく作ってくれた、流石はハンター、サバイバル術にも長けている。

 火を囲んでみんなで食べるごはんは美味しい、みんなの楽しそうな笑い声が山の奥にまで響いていった。


 夕焼けもいつしか月に変わり、星がキラキラと輝きだした、お腹もいっぱいになって眠くなって、たき火の日も消え、皆もそれぞれの場所で眠りについている。

 グレ子は今夜は自分の寝床ではなく、ティオの傍らで眠ることにしたようだ。


 ティオはモフモフグレ子の横で、眠れずにぽっかり浮かんだせんべいのような月を見上げていた。

「今日は色んな事があったよぉ……」

 突然旅に出る羽目になって、バタバタになって、友達が出来て、明日からは皆で西の森に向けて出発する。


 ティオは、体をごろんと横に向けると、グレ子の体に顔を半分埋めた、モフモフが気持ちいい、獣の匂いと一緒に、昼間の太陽の光をいっぱい集めた匂いがする。


「君は、今までずっとここで一人きりで暮らしていたの?」

 グレ子は、キュルルと静かに鳴いて、しっぽをふわりと揺らす。

 この辺りには、他のモンスターの気配はない、縄張りを持っているのかそれとも狩りの標的にあって数が減ってしまったのか。


「一人ぼっちで、さみしかったよね」

 ティオの小さな手が、グレ子のモフモフにそっと優しく触れる。

「ボクと一緒だ、ボクもね、ずっと一人ぼっちだったんだよ、寂しくてどうしようもなくてさ、でも、どうにもならないんだよ一人ぼっちはね……」


 そんなティオの声が小川のせせらぎと虫の声に溶け合うようにコロコロと転がってゆく。

「ボクもね……も、……も、ずっとね……」

 まぶたが段々と重くなってくる、ティオはすごく幼い頃の夢を見ていたようだったが、いつしか眠りについてしまって、もう何も覚えていない。




「……」

 明るい日差しにチュンチュンという鳥の鳴く声と、何やらいい香りがして目が覚めた。

「よぉ、起きたか」

 セロはもう起きていて、火を起こして何かを焼いていた。

「ほらほら、早く起きて準備しろよ」


 リケももう支度は整っていた、元気のいい二人とは反対に、ティオはまだ眠い目をこすりながらノソリと起き上がると、川の水で顔を洗って、もそもそと支度をして、朝ごはんの前に座った。

 木の枝に刺してある白いお団子のようなものが、火にあぶられてパチパチと音を立てている、香ばしいいい香りが漂ってくる。


「朝捕れたての魚をすり身にして、木の実とハーブを混ぜて焼いてみたんだ、旨そうだろ?」

 セロはそう言いながら、程よく焼けたお魚団子を枝ごと手渡してくれた。

「ほら、熱いから気ぃつけろよ」

「うん……」

 熱くてホコホコなので、フーフーしてから一口そーっとかじってみた。

「……おいし」


 魚のやわららかい食感と甘みが、香ばしい木の実と混ざり合って、それでいてほのかにフルーティーな香りが口の中に広がって、とにかく美味しかった。

「すっごく美味しい‼」

 思わず満面の笑顔、昨日の夜のおセンチな気分もすっかり吹っ飛んでしまったようだ。

「だろ、まだあるから、いっぱい食えよ‼」

「うん、いっぱい食べるー」

「――ったく、単純な奴」


 ティオが元気になったのを見て、ちょっと安心して顔を見合わせるセロとリケだった。

「美味しいっていいねー」 

 結局用意していた朝ごはんを全部平らげて、お腹も笑顔もいっぱいになったところで、みんな揃って西の森に向けて出発となった。


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― 新着の感想 ―
青に白の水玉のキノコ!それ絶対食べちゃ駄目なやつでしょ!赤に白水玉のキノコとか…ベニテングダケ…。リケはツッコミだと思ってたら二人ボケ(笑)新たな仲間セロがツッコミなんだね。それからゴメン、セロは串焼…
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