第15話 ティオ、魔法のライチをゲットする
読んでいただきありがとうございました。
さていよいよ次回が最終回となりまする。ティオ君頑張れ
旅の一行はとうとう、南の森へと入った。
南の森は、湿っぽくてすごく熱い、変わった形の木や、葉の大きな木が多い、派手な色の鳥がいたり、バナナが生っていたり派手な色のヘビがいたり、ツルに捕まって飛んでる人がいたり、そこはまるでジャングルだった。
魔法の果実、キューティーライチは何処にある、今回は派手な看板もゆかいなトラップも見当たらない。
そんな南の森を進み目指す魔法のライチを探す、大きな長い葉っぱをかき分けたその先に、ふんわりとウエーブのかかった青くて長い髪の女が、白いヒラヒラのワンピース姿で、うつろな目をして座っていた……。
「これはこれは美しきお嬢さん、このような場所でどうなさいました」
こんなところにこんな女がこんな恰好でって、どう見ても怪しすぎるだろと疑う前に、セロはもう女の手を取り、話しかけていた。
「ちょっとセロ、何やってんのよ‼」
リケの声も聞こえないかのように、男前な顔で女を見つめるセロに、女はゆっくりと顔を上げた。
目鼻立ちの整った美しい顔、白く透き通るような白くて細い手、しかしその瞳は何かをぼんやり考えているような、トロリとした目でセロを見る。
「――あなたは誰かしら?」
おっとりとした口調で、セロに問うと。
「俺の名はセロ、どうぞお見知りおきを」
「――そうなのですか、わたしはここに棲む妖精なのです」
妖精はそう言うと、更に。
「――あなた、わたしとケッコンしてくださいませんか」
「はい?」「はぁ⁉」
思わぬ展開に、驚くセロと、もっと驚くリケだった。
「ちょっと、何言ってんのよあんたはぁ!」
暴れそうになったリケを、セロは優しく制止して。
「そうですか――この俺の魅力に取りつかれて、このような言葉を発してしまうあなたの気持ちはよく分かります、あなたは確かに美しい、ここであなたの申し出を今すぐ受けたい気持ちは山々なのですが、しかし、この俺がもし、誰か一人のものになってしまえばきっと、世界中の女性が悲しみに沈んでしまいます、そんな事になれば、女性たちの涙で海の水があふれ、町は海の底に沈んでしまう」
「言ってる意味がよく分からないのだ」
そう言うティオの横で、リケもロズもあきれた顔でセロを見ていた。
「――つまり、あなたは、わたしとの結婚を断ると言うのですね」
「世界を守るためなのです、お許しください」
すると妖精はふわりと立ち上がり、両手を広げ体を宙に浮かべて。
「わたしの申し出を断るとは、不届き千万!成敗してくれるわ!」
「――はい?」
そう言ってなぜかヒョウタンを取り出し、その口をあまりの展開にビックリしているセロに向けると、その瞬間セロの体はヒョウタンの中に吸い込まれるように消えてしまった。
「セ、セロー⁉」
ビックリしたリケは、宙に浮かんだまま、ヒョウタンの口に栓をしている妖精に駆け寄って、引きずり降ろそうとその足元にしがみついた。
「こら、ちょっとあんた、セロを返しなさい‼」
大声でどなると、妖精はふわりと降りてきて、リケの手を取った。
「――あなた、よく見ると男前なのね、わたしとケッコンしませんか」
「はぁ⁉ふざけんなっ、あたしは女だ結婚なんかできるかぁ、セロを返せぇ!」
「――なんですって!あなたが女だと?このわたしを騙すとは不届き千万、食い殺してくれるわ!」
妖精は突然怒り出し、今度は口が耳元まで裂け鋭い牙が出て、両手は太くなり、しっぽが生え、四つん這いのまるで大きなトカゲのような姿になった。
「ギャァァァー、妖怪‼」
「妖精とお呼びなさい」
妖精は、ビックリして逃げるリケに襲いかかって来た、そんなリケを守ろうと、大きくなったロズが妖精ののど元に喰らいつくが、すぐに振り払われた、にらみ合う大きいロズと大トカゲ妖精、リケも、作ってもらったばかりの剣を抜いて構える。
「グレ子も行くのだ」
ティオに言われ、中グレ子も参戦、しかし大トカゲ妖精はかなり強く二匹とも苦戦している。
リケは、剣は抜くもののそこから攻撃する事も出来ない。
大トカゲ妖精は、グレ子とロズを振り払うと、リケに襲いかかって来た、押し倒さてしまうリケは、噛み付かれまいと、剣を盾に必死で抵抗する、その時リケは思った。
「(これが、あの時占いババ様が言っていた女に難儀するってやつか、だとしたら、本気で冗談じゃない、シャレになんないよぉ‼)」
「リケがピンチなのだ!」
ティオは必死で、大トカゲ妖精のボディーに体当たりする、予想外の攻撃だったのか吹っ飛ばされる大トカゲ妖精。
その拍子に、大トカゲ妖精は持っていたヒョウタンを落としてしまった。
ゴロンゴロンと転がってゆくヒョウタン。
「セロが‼」
リケはすぐに立ち上がって、ヒョウタンを追う、ティオも追う。
大トカゲ妖精も、取られまいと追いかける。
ヒョウタンは、その形ゆえにまっすぐ転がらず、あっちにこっちにぶつけながらゴロンゴロンと、何処に向かってゆくのやら。
やっと転がるのを止めたヒョウタンを、取り戻さんとする大トカゲ妖精、それを阻止せんと引き留めるロズとグレ子、その程度ではひるまない大トカゲ妖精、そこにリケが加わり、一人と二匹で大トカゲ妖精の体を押さえつける。
大騒ぎの脇をすり抜けて、ティオがヒョウタンに駆け寄る、拾い上げようと手を伸ばしたその時、ヒョウタンのその向こう、ティオの目に映ったものは。
矢印の描かれた小さな看板
そこには、キューティーライチの文字。
「あー、ライチだぁ~」
探しているものが見つかった、矢印の差す方向、そこには小さな一本の木にライチが一つ生っていたのだ。
ティオがヒョウタンを取るために伸ばした手は、ヒョウタンを素通りし、ライチを採るために体を寄せようと足に力を入れた、その瞬間踏み込んだ足が滑り、その場に尻もちを付いてしまった。
そのお尻の下にはヒョウタンが。
「あいたっ」
ヒョウタンは、ティオのお尻に押され、カポンとひびが入った。
ティオはヒョウタンに乗っかかると、勢いで後ろに背中から滑るように落ちた。
「うきゃぁぁ――!」と悲鳴を上げる大トカゲ妖精。
ヒビは更に大きくなり、そのヒビからレーザー光線のように光が漏れ、ボムンと爆発が起き、辺り一面白い煙に覆われた。
「ギャァァァー‼」
ヒョウタンが割れてしまったからなのか、大トカゲ妖精は断末魔の叫び声をあげ、ヒョウタンの形になって、そのまま砂のように細かい塵となって消えてしまった。
「あいたたた……」
煙の中に人影が現れ、懐かしい声が聞こえた。
ヒョウタンが割れた事で外に出る事が出来たセロは、尻もち着いた状態で煙の中から現れたのだ。
「セロだー、無事だったんだねー」
セロの側には、転んで寝っ転がったままのティオがいる。
「何だ、何がどうしたんだ?」
突然ヒョウタンの中に吸い込まれたセロには、イマイチ状況が分からないらしい、するとリケがティオの側にズンズンと歩み寄ってきて、腰に手を当てて仁王立ちするとティオを見下ろした。
「ちょっとあんた、今セロよりライチを採ろうとしたでしょ‼」
かなり怒っている、無理もないけど。
目をまん丸にしてティオは考えた、どんな言い訳をしようと――。
そして、転がったままの状態で、リケに向かって親指を立て。
「結果オーライ‼」
「ティオーっ‼」
もちろんそんな事で、リケの怒りは収まる事も無く、グーだのパーだのがティオ襲うかと思われた時、残っていた煙の中からもう一組人影が現れた。
煙にむせてゲホゲホと咳をしている女の人、お嬢様なドレス姿で座り込んでいるシャロルと、その後ろに、無表情を繕いながらも少し恥ずかしそうに座っている執事のグランディスだった。
この二人も、ヒョウタンに吸い込まれていたのか。
吸い込まれていたのだ。
ティオたち一行がここに到着するより先にこの森に来ていたシャロルとグランディスは、同じように妖精に会い、もちろんグランディスはセロのように見境なく女の人に声をかけるような事はしないが、妖精の方からプロポーズされてしまった、だが、シャロルお嬢様でさえまだ嫁に行っていないのに、それを差し置いて先に結婚してはお嬢様に申し訳ないと、やんわり断ったら、そのままヒョウタンに吸い込まれた、吸い込まれる瞬間、驚いたシャロルがグランディスにしがみついたことで、一緒に連れて行かれてしまったと、こういう訳だった。
思わず目が合ったシャロルとティオたち。
しばしの沈黙の後、シャロルは何事も無かったかのように黙って立ち上がり、ドレスをパンパンして、裾をきれいに整えると。
「オーホホホホホ、待ちかねたわよ、ちっこい魔法使いとゆかいな仲間たちー」
あ然とするみんなを無視して、高飛車なお嬢様ポーズをとるシャロルに、ティオは。
「また現れたの、オバサンもしつこいなぁ」
「お……おぉオバ、って」
またいらぬことを言われて、ホホがピクピクしている。
「あんたもしつこいガキだわよね、きれいなお嬢様とお呼びなさい!」
にらみ合うティオとシャロルだったが、すぐ傍に矢印の看板があるのに気が付いたシャロル。
「あらぁー何という事、こんなところにキューティーライチがあるじゃないの、わたくしが頂いて行くわ!」
「だっ、だめだよ、これはボクのだ!」
手を伸ばそうとするシャロルを、ティオが立ち塞がって止めた。
「何よ、ガキの分際で偉そうに、そこをどきなさい!」
「そうはさせねぇ!」
ティオを庇うように、セロとリケも来た、なのでシャロルは、グランディスの後ろに隠れるように下がる。
「何よもう、どいつもこいつもわたくしの邪魔をして、グランディス、やっておしまい‼」
「えー、やるんですか」
嫌そうなグランディスだったが。
「当たり前でしょ、そのための執事なんだから!」
命令とあらば仕方ないと、テキトーに、セロたちに向けて光の輪を放つ、が、セロの銃から撃った攻撃に跳ね返される。
「ティオ、今のうちにライチを!」
セロに言われて、ティオは攻撃のスキをくぐり抜けて、ライチに近付きその実をもぎ取った。
「キューティーライチ、ゲットなのだー‼」
「そうはいかないわよ!」
その実を奪おうと、シャロルが迫って来る、逃げるティオ、追いかけるシャロル。
そんなティオを守ろうと、チビグレ子がシャロルの足元でワンワン吠える。
「な、何よ、何なのよー」
「お嬢様!」
グランディスは、シャロルの足元にまとわりつくグレ子を追い払おうと攻撃を仕掛けて来た、グレ子の足元でバチバチと光が弾ける。
「キャイン」
「キャー」
ビックリして飛びのいて転がってしまうグレ子と、至近距離に居たために、同じようにビックリして尻もちを付いてしまうシャロルだった。
「グレ子!」
「お嬢様!」
ティオは、グレ子を守ろうとして駆け寄る、そこへ尻もちを付いていたはずのシャロルが起き上がってティオの持っているライチを奪い取ろうとした処を、シャロルを守ろうとしたグランディスが来て、そこへティオを守ろうとしたセロが乱入するので負けじとリケも参戦して、そこにロズも入ってきてもう訳が分かんなくなって
。
ライチが、地面に転がった。コロコロと……。
「どうして魔法の実が絡むとみんな大騒ぎするんだよ、ボクのなのにー」
またまた醜い争いになる人たちを複雑な思いで見ながらティオは、持っていた魔法の杖を手を伸ばして高くかざした、そして。
「ベリオガスバル・ヴィスヴィトール!」
力一杯呪文を唱えるティオの声が響き渡り、持っていた杖が今まで以上に金色に光り輝いて、その光は辺り一面に広がった――
ポンポンポン!
そして。
その光は、沢山のライチになった、大量のライチが皆になだれ込んできた。
みんなの体も呑み込まれんというくらい、ライチまみれになってしまった、ライチの甘ったるい香りがみんなを包み込む。
「な、何だこりゃ‼」
体をずっぽりとライチに埋め尽くされ、身動きが取れない。
これがティオの魔法のせいだとは分かったけれど、ティオは何処に行った、ティオの姿が見えない。
みんなで、ライチに埋もれながらティオを探すと、向こうの方でボコボコとライチが動きだした、まるでモグラが潜っているかのように動くライチの中からズボリとティオが顔を出した。
「キューティーライチ、ゲットォ‼」
その手にライチを一つ握りしめている。
「これが本物なの、ボクのなの‼」
「何で分かるんだよ、こんなにたくさんあるのに」
「だって、他のは全部ボクの魔法で出したものだもん、偽物と本物くらい分かるよ!」
みんなは、さすがだと感心していると。
「さぁ、すぐにこれにボクの願いをかけるんd――……」
嬉しそうにそう言いかけたティオの言葉が途中で止まる。
ライチに体が半分埋もれているティオの前に、あの黒コートの男が現れたのだ。




