最終話 ティオ、かく語りぬ
今まで読んでいただきありがとうございました。
ティオ君のお話、書いていてとても楽しかったです
「――ストーカー……さん?」
黒コートの男は、冷たい目でティオを見下ろすと。
「そいつをよこせ」 冷たく言い放った。
「やだ!」
ティオは怖いはずの黒コートの男に負けないくらいの表情で睨み返した。
「いいからよこせ!」
黒コートの男は、手のひらを前に出すと、そこに青い焔が浮かび上がる。
「やだ、これボクのだもん‼」
体がライチに埋もれているので動けなくなっているが、それでも怯まずにいるティオ。
「ならば」
男は、その焔をティオに向けて放つ。
「うわぁぁっ‼」
ティオの体は、周りのライチもろとも吹き飛ばされ、そばにあった岩に背中をぶつけてしまった。
「ティオっ‼」
そんなティオを助けようと埋もれているライチから身を乗り出そうとするリケだったが、セロに制止された。
「セロ?」
確かに、リケが助けに入ったところで、あの男には敵わないと分かっているけど、このまま黙って見ている訳にはいかない、とセロを見ると、ティオを心配するというより、事の成り行きを見守ろうとしているのか、そんな表情のセロだった。
前のめりに倒れているティオに黒コートの男がゆっくり近づいて行く、手にはまた更に大きな青い焔を出して。
「命が惜しくば、そいつをよこせ」
「やだー」
前のめりになった体制で、ライチを体の下に隠し、守るように丸くなるティオに、グレ子が駆け寄って、黒コートの男に向かって牙をむいて威嚇する。
黒コートの男は足を止め、そんなティオとグレ子を見下すようににらみ付けると、容赦なく青い焔をティオに向けて撃った。
ティオの目の前で爆発が起き、爆風と眩しい電光がみんなを襲う。
「ティオ‼」
思わず顔を伏せてしまうセロとリケだったが、あの攻撃をまともに喰らったティオは無事なのかと顔を上げる、衝撃で巻き起こった爆風がかき消されると、そこには魔法の杖にしがみついてしゃがみ込んでいるティオが現れた、脇にはグレ子もいる、あの衝撃の中で無事だったようだ。
その手に構えた魔法の杖が黄色く光りながら爆風の渦を吸収させているのが解る、とっさに防御の魔法を使ったのだろう、しかしティオには慣れない魔法だったせいか、辛そうに肩で息をしている、体力もかなり消耗したかもしれない。
「ほぉ」
黒コートの男が、感心したようにティオを見る。
「この俺の攻撃を防ぐとは、大したものだな、その度胸は褒めてやろう」
だが、次は無いぞと言いながらさらに大きな焔を出した黒コートの男を、それでもティオはにらみ付ける、その眼は、今までのアホの子からは想像もできないほどの、厳しい強さをはらんだ眼だった。
「どうした、それ程までにそいつを手放すのが惜しいか、欲の深い奴め」
黒コートの男にそう言われて、ハッとなるティオ。
「ち、違うもん、ボクの願いとかはどうでもいいもん、ボクはただ、石になった師匠に元に戻って欲しいだけなんだもん!」
それを聞いて、黒コートの男の頬が、小さくヒクッと震えた。
「そこまでして何になる、貴様にとっては命より大切な師匠なのか?」
鼻で笑われた、ティオは少し考えるように静かになる。
「――た……大切かって聞かれたら、そこまでよく分かんない……」
黒コートの男の手にした焔の威力が増した。
「でも、ちっちゃくって一人ぼっちだったボクを拾ってくれて育ててくれて、修行は厳しかったけど、でも楽しかった事もいっぱいあったし、それに、爺さんだから石の中に居たら狭くて窮屈で、腰でも痛めそうだなって思うから、早く出してあげたいし……」
「――言いたい事はそれだけか」
炎の威力をますます増して、完全に攻撃態勢になる黒コートの男に、それでもティオはひるまず、言葉を続けた。
「それに、リケやセロと、友達になれたんだもん!」
名前を呼ばれハッとする二人。
「師匠に無理やり旅に出ろって言われて、最初は嫌々だったけど、リケが一緒に行ってあげるって言ってくれて嬉しかったし、セロの作ったご飯はすごく美味しかったし、グレ子もロズも可愛くて、そういえばボク、友達が出来たのってこれが初めてで、だから、旅に出て本当に良かったなって、思うから、だから!」
「ティオ……」
リケだってセロだって、動機はどうあれ、今は思いは一緒だった。
「だから、ボクは師匠を石から出してあげなきゃいけないんだ、石から助け出して胸を張って、旅に出してくれて有難うって言うんだ‼」
みんなそんなティオに感動している、あのシャロルでさえ、自分の願いなんかどうでもいいと思えるくらい。
黒マントの男は、なぜか手にした焔を治めて静かに息を吐くと。
「わかったから、そいつを大人しくさせてくれんか」
「はい?」
そいつとは、さっきからずっと、ティオの前に出て男に向かって威嚇していたグレ子の事らしい、だから大人しくさせて後ろに下がらせると、黒コートの男はゆっくり近づいて来た。
「そこまで言われると、旅に出した甲斐があると言うものじゃ」
「???」
訳が分からず、キョトンとしているティオの前にしゃがみ込む。
「最後までワシの正体に気付かぬとは、まだまだアホの子じゃの」
「――はい?」
そんな黒コートの男は、今までのクールで怖い表情からは想像もできないほどの優しい顔になると、突然。
ポムン。
その体が、一瞬煙に包まれ、その後にはティオの師匠が現れたのだ。
「――――⁉」
ビックリしすぎて、丸い目を更にまん丸にしているティオに、師匠は。
「どうじゃすごいじゃろ、びっくりしたか」
「す――ストーカーさんが、師匠に化けた……」
「あほう、元々ワシじゃったんじゃ!」
その瞬間出したピコピコハンマーが、ティオの頭をピコリ。
「あいたっ」
「あ、あの男が、実はティオの師匠……?」
リケも思わぬ展開に驚いている。
「どうやら、そうらしいね」
でもセロはニコニコと余裕の表情、そう言えばさっきも、ティオが危ない目にあっていたのを助けようとしたのを引き留めた。
「セロは、知ってたの?」
「いや、途中で教えてもらった」
あの時、鬼ヶ島で鬼に捕まったリケを助けてくれた後、そっと耳打ちしてくれたのだ。
――ワシはティオの師匠、バレないように姿を変えて付いてきておったのじゃ――
「師匠なの?本物なの?石から出られたの?なんでどうして?まだ魔法のライチに願いをかけてないのに、ライチじゃダメなの?実はマンゴーとかパクチーだったの?それともまだこれで石の中に居る状態とか?」
意味がわからないのか、少しパニックになるティオだった。
「落ち着かんかティオ、これもお前に修行させるための方便だったのじゃ、許せ」
「――はにゃ?」
最初から石になど閉じ込められておらん、と今までの経緯を説明して、やっと理解してくれたようだった。
「言っておくがティオ」
と、師匠。
「ワシがストーカーをしていたのは、決してお前が可愛いからではない、お前のアホの子ぶりが心配だったからなのじゃ」
「それなら、最初から一緒についてくればいいじゃんかー」
「あほう、ワシが付いて行っては、修行の一人旅にならんではないか、それにお前のアホの子ぶりを目の前で見せつけられては、ワシもつい手を出してしまいそうだったからの、こうして距離を置いて見守るだけにしたんじゃ」
しかし、出来るだけ手を出さないようにしようとは思っていたものの、ティオがケガをした時はつい治してやったり、帽子のボロボロさに見かねてつい治してやったり、ピンチになった時は助けに行ったり、少々お節介が過ぎたかの、と師匠は言う。
「お前らも調子に乗って何やら危ない話に首を突っ込んで、無茶ばかりしておったではないか、鬼の島に行くと聞いたときは肝が冷えたぞ」
事前に鬼ヶ島に先回りして島の様子を伺って、鍛冶屋の主人がどこに居るか探して、鬼どもの弱点も調べて、お前らが来るまで身を隠して、こう見えて大変じゃったと言うと。
「師匠が修業してるみたいだね」
まるで他人事のように言うティオに「全くじゃ」と言いながら師匠のハンマーがピコリ。
その時、さっきから黙って見ていたグランディスが、ライチから抜け出して、ジャンプしてくると、師匠の前でひざまずいた
「お久しぶりでございます――師匠」
「おう、お前も相変わらず成長しとらんのう」
「はい、おかげさまで」
更にびっくりした。
「師匠――って、この人の分も師匠は師匠だったの?体半分こしたの?」
「意味がわからんぞ、実はこいつもワシの元で修行しておったのだ、ティオが来る前に修行を終えて出て行ったからの、知らぬのも無理はないが」
「師匠……改めて聞きますが、この者の修行にどうしてお嬢様まで巻き込んだのですか?」
「ほう、それはな、最初は貴様に偶然を装ってアホの子の修行の旅に同行させようかと思ったのじゃ、アホの子とストイックな青年との凸凹コンビは、結構見ものかと思うてのう」
「はぁ?」
「じゃが、その前に偶然にも運よく同行する者が現れよったのでな、ついでというかせっかくじゃから、ここはヒマそうにしている貴様の主人に言うて、旅を妨害する役になってもらおうかと思うて」
「……」
呆れ顔てため息をつくグランディスに、師匠はさらに。
「しかし、貴様らは思っていた以上に役立たずじゃったのう、邪魔しようにも追いつかんし、やっと先回りできたと思うたら、ヒョウタンの中に閉じ込められるとか、何処まで間抜けなのじゃ」
そこまで言われて、ちょっとだけ怒りのマークをおでこに出すと。
「あなたの弟子ですから」
「――言うてくれるではないか」
すると、それまでショックで固まっていたシャロル、いまだにライチに埋もれながら。
「グランディス、あなた知っていたの、あの高貴なお方だった人が、実はこんなへなちょこ爺さんだったなんて!」
「いえ、私は途中で気が付いただけで」
「どうして言ってくれなかったのよ!」
「ですから、お止めになった方がよろしいかと、申したはずですが」
「だったらもっとちゃんと言いなさいよ、こんな爺さんだって知ったら、こんなに頑張らなかったわよ!」
「本当の事を言っても、信じてもらえそうになかったので……」
「ムキーッ、よくもわたくしの乙女の純情を踏みにじってくれたわね‼」
「ほっほっほ、そこまで惚れられていたとは、この爺もまだまだ捨てたものではないの」
あっさり言われてしまった。
師匠は今度は、セロとリケに向き直って。
「そなた達には、ずいぶん世話になったのう、ワシからも礼を言うぞ、おかげでティオも少――しは成長したようじゃ」
そう言われた二人は、顔を見合わせて少し照れたように笑うと。
「待たんかジジィ!話はまだ終わって無いわよ‼」
すべてをぶち壊すような、シャロルの声が響いた。
「まだ居たんだ」
「居て悪かったわね、よくも乙女心を弄んでくれたわね、何がバラの似合う素敵な人よ、何が大自然に咲く可憐な一輪の百合の花よ、何が惚れた女は命がけで守ってみせるよ、何が将来はこの国すべてをわたくしによ、ふざけんじゃないわよ‼」
その話に、みんなは疑いの目で師匠を見る。
「――そこまで言った覚えは無いが」
「黙らっしゃい‼」
半分以上はシャロルの妄想の産物だったが、シャロルは聞く耳持たぬと言わんばかりに叫んだ、その手に適当につかんだライチを高く掲げて。
「このくそジジィ、てめーなんか、可笑しなへなちょこカエルになりやがれ‼」
ピッカーン。
その瞬間、手にしていたライチが、眩しいほどの光に包まれたかと思うと、みんなの体を埋め尽くしていたライチがポポポンと消えてゆく。
「もしかして、あれが本物⁉」
そう言うティオの手に持っていたライチもポンッと消えた。
「――……」
願いをかけると願いが叶うと言う魔法のライチに願い事をかけてしまったシャロル。
ライチを持っていたハズのその手には、白い小さな丸い石がキラリン。
願いが、叶ってしまった。
――師匠のいた場所には、もう師匠の姿は無く。
「ゲコ」
そこには一匹の、緑色のカエルが。
「――」
みんなも、何と声をかけていいか。
ただ気まずそうに、へなちょこカエルを見下ろしていた。
「へなちょこ」
ティオが言う。
「へなちょこ言うな!」
カエルが言う、どうやら言葉はしゃべれるようだ。
「だって、へなちょこ」
大きい目玉に大きい口、丸い体、そこから生えている足は短くて、ペタンペタンと飛び跳ねるように動く、言ったら悪いが、少々気持ち悪い。
「――元に戻る方法、無いんですかね」
やっとのことで、セロが口を開いた。
「じゃぁ、ボクが何とかしてあげる」
そう言うとティオは、魔法の杖を振り上げた。
「バカよせ止めろー、お前の魔法では無理じゃ‼」
しかしもうその時はすでにカエルに魔法をかけていた。
「ギャー‼」
白い煙に包まれたカエルは、可哀そうな悲鳴を上げていたが、再び現れたのは、カエルのままの師匠。
「あれー、おかしいなぁ、元に戻らないよ」
「戻れる訳なかろう‼」
「でも、少しは、マシになったのでは?」
一緒に覗いていたグランディスが言う、ティオの魔法でマシになったというか、ボディの色が可愛いピンクに変わり、首にはおしゃれに青いバンダナが巻かれていたのだ。
「ねー、お兄さんの魔法で何とかならない?」
そこで兄弟子グランディスにも話を振るティオだった。
「私ですか、私の魔法はどちらかというと戦闘向きというか、攻撃向きというか、こういったのは苦手で」
と言いながらも、なぜか魔法をかける体制にはなっていた。
「バカ止めろー、ワシを殺す気かー‼」
このままでは師匠は元には戻れない。
「ボクは、このままでもいいと思うけどなー」
ティオは、カエル師匠を両手で持ち上げてみた。
「ワシはこんな体嫌じゃー」
そりゃそうだろう、ティオを除く皆が思った。
「でもなっちゃったものは仕方ないじゃん」
ティオがそう言うと、皆一斉に今回魔法をかけてしまった張本人の方を見た。
「冗談じゃないわよ‼」
シャロルが叫んだ。
「わ、わたくしは悪くなくってよ、悪いのはこの爺さんでしょ、わたくしを好き勝手に弄んで!」
「はいはい、誰もお嬢様のせいだとは……」
グランディスがフォローしてくれたが、この執事もやっぱり自分のせいだと思っている、シャロルにはそう感じ取れて気分が悪い。
「とにかく!あれもこれもそれもこれもみーんなこの爺が悪いんじゃないの、自業自得ってやつですわよ‼」
結局何しに来たんだ状態なシャロルの、お嬢様としての矜持は逆切れと言う形で幕が下りそうなので、グランディスは軽くため息をついた。
「これに懲りたら二度とわたくしの前に現れないで頂戴ですわ‼」
そうして身をひるがえしたその時、シャロルのドレスの隙間に、どこかで見た事あるような気のする物体が、ちらりと見えた。
「あー、それー」
ふんわりしたドレスの腰に紐でつないで隙間に隠していたのだろう、見られたことに気付いたシャロルは。
「な、何よ、これはわたくしが買ったのよ、誰にもあげないわよ!」
そう言って、わざわざ腰から外して見せた。
「これは、あの伝説のウー大陸から発見された幻の仮面なのよ、高かったのよ!」
ウー大陸?幻の仮面て……。
そう、それは以前ティオが魔法で出したお面だった、その後鍛冶屋の主人にあげたものだが。
おそらく、その後鍛冶屋の主人が、適当な事を言ってシャロルに売りつけたのだろう、しかし、よりによってウー大陸とか大きく出たな鍛冶屋の主人よ、ウー大陸とははるか昔すごく昔、高度な文明と強い魔力を持っていたがある日突然消えてしまったという伝説の島だ、言い伝えによれば海の底に沈んだとも空中に浮かんで空のかなたに飛んで行ってしまったともいわれているが本当のことは誰も知らない真相は闇の中、もしかするとウー大陸自体存在などしていなかったという研究者もいたりする訳の分からない伝説の大陸から、どうやってお面が発見されるんだよ、そこは気付けよ。
「それ、ボクがマホーで――」
空気を読まないティオが、そこまで言いかけたのを、セロとリケは力ずくで止めた。
「それ以上は言ってやるな、高かったって言っていたじゃないか」
「そうだよー、本当の事を知ったら、ショック受けるだろー」
本人がそう信じているのなら、そのまま信じさせてやれという事で納まった。
シャロルはおそらく気付かなかったけれど、みんなの反応を見たグランディスは、薄々感じるものがあったのだろう、大きなため息をついている、きっと買う時もかなり止めたに違いない、ご愁傷様である。
「とにかく、あなたたちに関わるのはもう御免ですからね、行くわよグランディス‼」
そう言うとツカツカとその場を後にして行ってしまった。
「だそうですので、それでは皆様、お元気で」
グランディスは、皆に深々と頭を下げて、シャロルの後を追う。
グチグチブツブツと文句を言いながら歩くシャロルに追いついたグランディスは。
「一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「何よ」
「お嬢様は、あの魔法の果実に、どんな願いをかけるおつもりでした?」
すると、シャロルは顔を赤くして。
「そ、そんな事、いくらあんたにでも、言える訳ないじゃない!」
――そうよ、わたくしの願い事、一度でいいから、かわいいスーパーアイドルになって、舞台で歌って踊って、みんなからキャーキャー言われたい、だなんてそんな事、恥ずかしくて言えないわ‼
そう思いながらズンズンと歩くシャロル。
心の中で考えていたのだろうけど、しっかり口に出して言ってしまっている事にシャロル本人は気が付いていないようだった。
「……」
聞こえたこっちも恥ずかしい。
でもそんなシャロルお嬢様も、少し可愛いなと思ってしまうグランディスなのでありました。
さて、残されたティオたち。
これからどうしようかと不安の色を隠せないでいると。
「実は一つだけ、元に戻れる方法があるのじゃが」
カエル師匠はそう言うと、ティオはものすごく嫌そうな顔をして。
「もしかして今度は、東の森にドッカンパパイヤがあるとかなの?」
「うむ、惜しいのう、正解はビューティーオレンジじゃ」
ティオはそのまま静かにカエルの体をグレ子の前に差し出して。
「食べる?たぶん美味しくないと思うけど……」
グレ子もカエルに近付いて鼻をクンクン。
「ひぃっ‼」
師匠はやっぱり犬が苦手なのだろう、青ざめて体を大きく反らせて抵抗している、カエル師匠は魔法でグレ子を蹴散らそうとしたようだが、そこはただのカエル、以前の師匠のような魔法はもう使えないらしい。
「止めんかバカ弟子!元はといえば、貴様の持っていたライチが偽物だったからではないか!」
「だってー」
「今さっき、修行の旅に出てよかったと申しておったではないか」
「だってー」
そんなティオの肩を、リケが力強くボンッと叩く。
「心配いらないよ、あたしたちが付いてるじゃない」
当然のように旅を続けようと言わんばかりに笑顔を見せるリケ。
「そ、そうだよな……」
そんなリケを見て、なぜか苦笑いにも似た笑顔のセロだった。
「セロぉ、リケぇ」
そんな二人のかっこよくて優しい笑顔を見たティオは、丸い目をウルウルさせて、カエル師匠をセロに差し出した。
「ありがとう、師匠の事、よろしくお願いします‼」
「お、おう」
勢いに押されて、思わず受け取ってしまうセロだったが。
「――って違うだろ!お前も一緒に行くんだよ‼」
三人に思いっきり激しいツッコミを入れられて、ギャーってなるティオ。
やっぱりティオは、アホの子だった。
もうすっかり次の目的地に行く心構えが出来たような一行だが。思案顔のロズがセロの肩に音もなく飛び乗って、こっそり耳打ちしてきた。
「まったく、何処まで調子いいんだよあんタ」
そう言われて少々困ったような表情を見せるセロだった。
「そう言うなって、仕方ないだろあんなに楽しそうな笑顔を見りゃ」
「気持ちはわかるけどさ、お城のみんなは心配してるヨ⁉第七王女リネケリーア様の事」
「……それは、そうなんだけどさ……」
「ねぇ、何話してんの~?」
少し距離を置いて話していたセロとロズに近付いたティオが二人を見上げてきた、ティオのまん丸で純粋な目にすべてを見透かされそうな気がして、セロは思わず苦笑いを浮かべるのだった。
「あはは、悪い悪い」
向こうではリケとグレ子もこっちを伺うように見ている。
「あともう少し、せめて次の旅が終わるまで、な?」
まだ少し不機嫌そうなロズをなだめるようにのど元を優しく撫でてあげると、気持ちよさそうにゴロリと喉を軽く鳴らし、仕方ないなと言わんばかりにセロの耳元にスリスリ。
「―っしゃ‼お前ら気合入れていくぜぃ‼」
「う、うん……?」
「なんだどうした、元気ね―じゃねーか!いつものバカ元気はどうした?」
いや、今のはセロのいきなりの気合入れっぷりに驚いただけなんじゃないの?というロズのツッコミの前に、セロはもうティオとリケを振りまわさん勢いで両脇に抱えていた。
みんなが笑顔になる。
ティオとセロとリケ、グレ子にロズ、それにカエル師匠も加わった一行は次なる目的地、東の森へと出発する事となった、そこにはどんな冒険が待っているのか――
「疲れたよぉ~、少し休もうよ~」
まずは、そんなティオの声が山道に響いてきたのは、言うまでもない。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました
ティオ君たちのお話はひとまずこれにて終了
次回作も考えてございます。よろしければお付き合いください。




