Ⅳ - 1
6月に入ると文化祭がある。
部活メインの文化祭で、クラスで何かって事もなかったし(もちろんやっても良い)、部によっては参加しない部もある。
結局、歴史部に入ったけど、歴史部はここ数年参加しておらず、今年もやらないと先輩達が言ってたからホッとしてたら、やる気満々の顧問のおかげでやらざるを得なくなった。
顧問の岩本先生はニ年生の担任で、定年退職した前顧問の後を受け就任した。以前は地理部だったらしいが、元々は歴史部をやりたかったらしい。
話し合いの末に、鎌倉の歴史や発掘現場見学レポートなど案も出たが、学校の歴史になった。学校の歴史は案外知らないかもしれない。パンフレットやホームページに簡単には載ってるけど。
資料なら学内にあるしね…なーんて言ってたら、卒業生にインタビューすることになり、担当になってしまった。
先生や親族はダメで対象を探さなくてはならなくなった。10年前より以前の同窓会名簿から探すが、まったくわからない。近所の人もチラホラいるけど、対象にはならなそう。
まずは父の知り合いを教えてもらおうと思い聞いたら、
「和ちゃんは?」
と母の兄の名を言った。
「あぁ!いいじゃん、兄さん!」
僕はだいぶガッカリした。それは僕も思った。でも親族はダメなの。
「だからさ、誰かに紹介してやれば?」
ああ、なるほどね。そしたら僕はまた誰か探さないとだよ。
「その先生って何歳くらいよ」
「えー? お母さんくらいかなぁ、ちょっと上かな、五十歳くらい?」
母は四十八歳だ。
「じゃあ、知ってんじゃねぇの?卒業生なんだろ?」
「どうかなぁ」
「でも、どうしょうもない問題児だったんだから、許可出ないんじゃない?」
母は笑うと言うか苦笑。
「確かにな」
父も笑う。
母は兄と弟がいる。
母の実家は江ノ島近くで土産店をやっていて、母の三歳上の伯父の和樹が家業を継いでいる。伯父が引き継いでからカフェを併設して、結構繁盛しているらしい。
小さな頃は、夏休みに泊まりに行って、祖父母と一緒に店番の真似事をするのが楽しかったが、祖父母が亡くなってからはあまり行かなくなってしまった。
その頃、伯父は普通に会社員だったが、未婚だと思っていたが、バツイチだと知ったのは、わりと最近だ。元奥さんが病気で伯父を頼ってきたらしく、それを知って母が憤慨してたのだ。
『浮気して出てったくせに!』
と父と話していたのを聞いた。子どももおらず、実家は頼れず、浮気相手とは結婚したが、離婚したとか。その後、元奥さんがどうなったか知らない。
伯父は中高生の頃、よく問題を起こしていたらしい。
一番大騒ぎになったのは、高一の時に家に帰らなかった時だ。帰らず友だちの家に止まってた、なんて事はよくあったらしいが、せいぜい2、3日の事だった。
その時は一週間帰らず、さすがに心配した両親が心当たりを探したがいなかった。いなかったが学校には登校していたことがわかった。
伯父は学校の使われていなかった用務員室で寝泊まりしていたのだった。
かつては用務員や教員が当直で利用していたが、今も当時も使われていなかった。ちょっとしたワンルームアパートのような間取りで、ミニキッチン、ユニットバスが付いている。二段ベッドもあり、伯父は下校せずここで過ごしていた。
食堂から食材を持ち出し自炊していた。オマケに猫も飼っていた(猫は祖父母が引き取った)。
伯父のことで初めて用務員室の鍵がなくなっていたことに気付いたらしい。
伯父は一週間出席停止になったが、再登校後は武勇伝のように語られ、ちょっとした有名人だったらしい。
そんな人のインタビューなんて許されるはずないって。




