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小川の両親が伯父に会うため、カフェに来る事になった。
定休日が月曜だが、両親も仕事があるので、土日で構わない旨伝えると、大事な事なので月曜日に伺うと返事が来た。
青山先生と母も会う事になり、叔母が食事を用意してくれるそうだ。
その日はもちろん小川は登校する。小川は両親に下宿をしたいと伝えてあるそうで、特に反対されたりしなかったらしい。
沢田さんの事は話題には出ないだろう。母親は知らないようだ、と言うのは小川が言ってるだけだけど。
青山先生は朝のホームルームにはいたが、出張で出かけると言った。
先生はどの程度学校に話しているんだろう。校長や教頭、学年主任は知っているんだろうな。
小川は何も言わなかったが、帰り際にカフェに行くと言った。両親から、改めて伯父や母に挨拶するように言われているらしい。
母は帰ってくるなり
「ちょっと!これ食べてみてよぉ」
とテーブルにタッパーをいくつか並べた。叔母が昼食にと作ったものの余りをもらってきたのだ。
小川の両親も食べて絶賛してたとか。
「兄さんなんて、美沙ちゃんがいづれ独立するって言い出すんじゃないかーとか言ってんの」
タッパーにはカブとニンジンと鶏肉の煮物、カブの葉とチリメンジャコの炒め物、トマトのマリネ、グリーンサラダ入っていた。
カブが柔らかく崩れてしまいそうで、ほろ苦く甘辛いタレとよく合っている。
「全部食べないでよね、パパの分もあるんだから」
「はいはい」
「ごく普通のメニューなのに、なんでこうも違うんだろうねぇ」
母は箸で鶏肉をつまみながら、しみじみとみている。
「小川くんのお母さんも感激してたわよ。妹さんがすごく美味しかったって話してたって」
「お母さんってどんな感じの人だった?」
「う〜ん、あの人に似てる。えっと、ほら、女優さん?」
「誰よ」
「思い出せん」
と言いながら、ご飯を頬張る。ご飯は今日も炊いてあった。インスタントの味噌汁と昨日の残りのポテサラもでしてきた。
「お父さんは?」
「穏やかでずっと微笑んでらしたわよ。嫌な感じ一切ないの。孝太郎さんがきた時だけ、ちょっと真顔になったの、私見逃さなかったわよ」
自慢げに言っている。
「家賃とか契約とかビジネスの話になったからだと思うわ」
孝太郎さんに警戒してのかも。柔道やっててでかいし、坊主にグラサン(本当はど近眼)。それでもってイケボですっごく優しげに話すし、逆に怪しいって。
「じゃあ、決まったんだ」
「うん、はっきりとは返事はなかったけど、決めるんじゃない? 家も見てったしね。綺麗で驚いてたわ。私も久々見たけど、キッチンのテーブルや椅子も残ってるし、食器とか鍋とか全部残ってて、嫌じゃなかったら使って下さいって兄さんが言ったら、お母さんが“充分過ぎます”って言ってたもの。ベッド買うくらいじゃない?」
「ふーん」
「あんたたち、溜まり場にしちゃダメよ」
「しないよ」
何言ってんだか。でもこれで通学のストレスはなくなったんだもんな。よかった、と言っていいんだよね。
母によると、最初に小川が伯父のところに行ったのは、伯父と会ってみたいと思ったからだ。夏休みにカフェを訪れ伯父の様子を見て、ますます思いが強くなった。
所謂、“武勇伝”を聞きたかった。
どうして、家にあまり寄り付かず友達の家を泊まり歩いたり、学校に隠れたりしていたのか。何か家庭に問題があったのか。学校で問題があったのか。それらをどのように克服したのか。なにか大事なものを諦めたりしたのか。そして家業を継いだ時の思いとは…
伯父は初対面に近い小川の話しを上手く聞いてくれた。そのあたり母と似てるのかな。
母や僕に話したような事だったらしいが、伯父は聞きながら、やはり泣いてしまったそうだ。伯父から納得いく答えが得られたのかな。
そうだといいけど…




