Ⅸ - 2
小川は一人で神戸のその住所に行った。
中二なのにすごい。
どういう人なのかもわかってないのに。
母に言わせると、お年玉を貯めていてお金があったからと言っていたらしいが、それも衝動的だ。
行って尋ねるわけでもなく、家の前を行ったり来たりしただけだそうだ。沢田さんのアパートに初めて行った時の事を思い出した。訪ねるわけではないんだ。
会社の支社が神戸にあるのはわかっていたので、電話で問い合わせると退職した事がわかった。
そこで行き詰まった。
その後、SNSで名前や住所を調べると、大学時代のゼミのレポートが見つかった。数名での共同レポートだった。
そこで大学がわかり、その他のメンバーを一人ひとり調べると、SNSに写真をあげている人がいて、そこに写り込んでいた。
そこから調べて、シングルマザーである事や鎌倉に住んでいることがわかった。アパートの隅の方が少し映っていただけだが、マップで調べ突き止めた。
「いや〜怖いねぇ。今時っぽいけどさ。自分の知らない誰かが、自分の事を簡単に調べられるなんて。沢田さん、知ってんのかねぇ、自分が晒されてること。友だちだからって気にしてないのか?」
父はすっかり食事の手を止めてしまっていた。
「本当よね、執念ね」
母はお構いなしに食べている。僕も箸を置いてしまった。
小川ってどんなヤツだったっけ?
学校だと普通の高校生だと思う。カッとしやすいとかもないし、おとなしすぎとかもない。
本当に普通だと思う。
でも心の中で何考えているかなんてわからない。
須田や淡路だってそうだ。皆から見たら僕だってそうかもしれない。
「小川くんって父親似なんだろうな」
僕の考えていた事を父が言った。
「多分ねぇ、こうなってみると小川くんと健ちゃんって似てるよね」
「あっ、そっち?」
父は苦笑したが、母はすぐに
「わかってるわよぅ、中身のことでしょう」
ねぇと僕に同意を求めるので、
「どっちも似てるんじゃないの」
と言うと二人とも笑った。
この父と母と、そして兄の元に生まれてきてよかった。
小川には悪いけど、つくづく感じた夜だった。




