Ⅶ - 3
放課後、先生は伯父の家に行っただろう。
僕が行ったって何もできないだろうけど、一緒に行きますとか言ったほうがよかったかな。
先生から一緒にと言われたら、行っただろうけど。先生もそこまで考えてないよね。先生と伯父に任せとけばいいかな。
父親となにかあったのかな。
僕が気にしてもしょうがないからさ。
でも、我慢できず、夕食後母がお茶を入れてくれてるとき、
「あのさ、話ししてもいい?今」
「いいわよ?何よ、赤点取りそうとか?」
一瞬、間を置いて母が言った。父はチラッと母を見てから僕を見た。
「赤点取りそうなのかよ」
と言った。
もちろんそんな事は思っていない、母は僕を気遣い、父は父で母を気遣っているのだ。
あんまり僕からいろいろ話すことってなかったし、でも“話があるなら話せよ”と言われたら言わずにいれない。
今日の話をした。
「そんで、その後連絡来たのかよ」
小川は既読つかないし、伯父からも来てない。
もちろん青山先生も。
「あたしが送ってみようか、兄さんに」
「タツが送ってみろよ、和ちゃんに、どうなった?とかさ」
僕はスマホのホーム画面を見ながら悩んだ。
「えー…なんて?」
「だから、どうなりましたか〜?とか」
「えー…」
とりあえず、伯父に“どうなりましたか?”
と送った。
すぐに返信が来て、三人で驚いてしまった。
“今、宴会中!盛り上がってます〜来る?”
「宴会って?まさかお酒飲ませてるんじゃないでしょうね!親御さんに言い訳が立たないじゃないよぅ」
母は口を尖らせる。父は和ちゃんならやりそうと面白がっている。
「早く返事して!お酒飲んでるの?って」
またすぐ返信。
“青ちゃんと小川くんは飲んでませ〜ん”
一人盛り上がってるのか。
“青山です。連絡遅れてごめんな。小川は今日俺んち泊まらせるから。家には連絡しといたから大丈夫。宴会って言うのはレトルトのカレー食べ比べてみようってやつです。和樹さんは飲んでるけど、俺たちは飲んでないから。心配かけてごめんな。お母様によろしくお伝えください”
と伯父のメールで来た。母が心配してるだろうと思っていたのだ。
「もう、兄さんたらぁ、やりかねないじゃない。心配しちゃうわよねぇ」
母はエプロンの裾で顔に風を送っている。
「青山先生んちって近いの?」
「平塚だっけ?戸塚だっけ?」
母が父に聞く。
「実家は東戸塚とか言ってなかったか?」
「厚木より全然近いわね、って言うか二人で兄さんとこ泊まっちゃえばいいんじゃないの?ねぇ」
結局そうなったようで、翌日なにごともなく二人は登校、出勤した。
昨夜遅くメールが来た。
“心配かけてごめん”
僕は
“寝られるといいけど”
と送ると、
“雑魚寝(笑) 結構波音聞こえるんだな”
そうだったっけ…? そうかもしれない。
幼い頃、祖父母と眠った事を思い出す。波音が聞こえるくらい静かな夜更けまで、起きていた事がないのだと思った。
須田と淡路は何も言わなかった。
「まだまだ暑いしなぁ」
とだけ須田が言った。サボったと思っているようだった。小川は苦笑していた。
そして何事もなかったように、体育祭の準備やその後に来るテストの勉強に忙殺された。




