Ⅶ - 1
土産店は閉店後、帳簿をつける。帳簿とは仰々しいが、昔からの習慣らしく、レジスターに記録されているのにわざわざ書き写す。
レジスターはタブレットでタッチパネル式。最近はどこに行っても、そうだけど、自分が使うようになると、なんだか奇妙だ。
カフェで“伝票”と呼んでいるのもタブレットだ。
子どもの頃は、今でもたまに見かける、大きくてボタンがいっぱい付いてた機械だった。祖母がチャチャチャーッと人差し指で叩いて、ガッチャとトレイが開き、開き過ぎないように、お腹で抑えて、お金を出し入れしていた。
現金払いの客はほとんどいない。子どもだって交通系カードだ。僕もだけど…
レターセットが結構売れて、補充が追いつかない。来週納品されるが、大丈夫か心配したが、伯父は“売り切れ”って貼っとけばいいからと案外ルーズな感じ。でも、カフェのウーロン茶の納品が遅れた時は物凄い勢いで業者に電話してた。土産店を閉めようと悩んでたらしいが、案外テキトーなのかも…
「あ、そうだ。カフェのエプロン売ってるか聞かれた」
伯父は驚いて、
「えーっ?これ?」
と自分が掛けているエプロンをつまんだ。
「可愛いって言ってたけど…」
「えーっ?マジかよ」
今日、食後、土産店に来た女性客から聞かれた。
薄緑で胸元に店名がプリントされていて、なんだかわからないけど、文字に葉っぱ模様が絡まっている。首に掛ける部分だけ茶色い革製だ。右側にポケットがあり、“伝票”を指している。左側はループが付いていてタオルを引っ掛けられる。
「可愛いって言ってたけど」
「これがー?」
伯父は信じられないようだ。なんともないエプロンに店名をプリントしただけで、レターセットを作ったイラストレーターに頼んだものだ。
「そういえば誰か言ってたよ、誰だったかな?アンちゃんだったかな」
コーヒーを持ってきてくれた叔母が言った。
「やっぱり、お客様がエプロンカッコいいですねって、売らないんですかって言われたって」
「カッコいいって…」
伯父はあきれてる。
「試しに売ってみれば?」
2、3枚置いて様子を見たらどうかと思った。
「えーっ?」
と言いつつ考えている。
8枚あった予備のエプロンは、1日で売れてしまった。
伯父は慌てて注文したが、売り物としてもだが、洗い替え用がなくなったのも支障がある。
「30枚頼んじゃった」
と言っていたが、30枚どころではなかった。夏休みが終わる頃にはなくなってしまった。
土産店に置いたので、ついでに他の物を買っていく人も多く、売り上げが伸びた。伯父は一過性な物と考えいるようだった。まあ、エプロンなんてそうそう買う物じゃないだろうしね。




