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Ⅵ - 2

 「タツー、友達来てるよ。小川くんだって」

伯父が暖簾から顔を出して呼んだ。

 ランチの時間も過ぎて、少しゆったりしてる時間帯だ。

 「えっ?小川?」

覗くと窓際の席に小川がいた。食後のコーヒーを飲んでいた。女の子が一緒で、もしかして彼女?

 「いらっしゃい」

知り合いが来たのは初めてで、と言うか須田が母親と来たらしいが、カフェも土産店も混雑してたから、声をかけるのを遠慮したとメールで言ってた。今は他に二組しかいない。

 「忙しいのにごめんな。妹の晴子」

「妹さん…初めまして三崎です」

「こんにちは」

 晴子は少し恥ずかしそうに会釈した。中二と聞いていたが幼く見える。肩まで伸びた髪を二つに分けて耳の後ろで結いている。

 「こっちに来たことないから、連れてきた。学校行って、八幡様行ったけど…」

「観光客ね」

わかりますよ、もちろん。

て言うか、わかってるつもりだったけど、バイト始めて、改めてわかったかもしれない。家で引っ込んでたら、本当の状況はわからないよ。

 「少し休んでいいからさ」

と伯父がアイスティーを持ってきてくれて、僕は小川の隣に座った。

「すみません」

と小川が言い、伯父はいいからいいからって感じでキッチンに戻った。

 「今日、午前中凄かったけど、昼過ぎたら少し収まってきた感じ」

「須田が凄く混んでてって言ってたから、どうしようかなと思ったけど、大丈夫かなと思ってさ」

 

 伯父があの伯父なのかと改めて小川が聞き、想像と違ってたと言った。どんな想像してたのか?

「どんなってこともないけど、あんなシュッとしている感じとは思わなかった」

 伯父は痩せ型で背も高く、伸ばした癖毛をお団子にしている。特にユニフォームはなくて、エプロン以外自由だけど、伯父はいつも黒のシャツかTシャツに黒パンツで、店名の入った薄い緑のエプロンをしている。お客さんに『かっこいい』と言われているとか。

 「どっちかって言うと、太っている感じ?岩本先生みたいな」

「同級生って聞くとイメージしちゃうよね」

岩本先生はぽっちゃりしてる。

「伯父さんと母さんと、弟もいるんだけど、あんな感じだよ。よく似た兄弟なんじゃない? おじいちゃんも背が高かったし」

「ふーん」

小川は母を思い出したかな。

 母も背は高い方だと思う。父も背が高いからよくわからなかったけど。と言うか、僕はどうなんだろう? 普通?


 帰り際に

「夏休みになって鎌倉来たの初めて。なんか違うところに来たみたい」

と小川は言った。ずっとバイトと宿題だけだそうだ。僕もそうだけど。

 新学期に、と別れた。

 別れ際、晴子ちゃんから小さな紙袋を渡された。小川は

「そんなのもらっても迷惑だって言ったんだけどね」

と笑った。小川のボディバッグに付いているピンク色の守り袋と同じものだった。色は青。

「いつも兄がお世話になっているので…」

 妹は妹で兄を心配していたのだろう。今日初めて来て遠くて驚いた、具合が悪くなるのもわかると言った。毎日毎日大変だなぁと思うと

兄に友達ができてよかったとも言った。小川は何言ってんだか?みたいな顔をしていた。

 “友達いないんじゃない?”

母の言葉を思い出し、

「ありがとう。これからもよろしくね」

と受け取った。

 小川の妹が兄思いでよかった。

「中身は綿だよ」

小川が言ってた通りのようで、お守り袋の形のマスコットって感じ。リュックのファスナーに付けた。


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