Ⅵ - 1
期末テストは人によっては選択科目のテストがないので、中間テスト同様5教科の結果が張り出され、やはり小川が500点満点の一位。二位は同じく隣のクラスのヤツで、今回は490点だった。
惜しいと思ってしまった。一問か二問の差だろうから…英語が苦手みたい、と誰かがしゃべってた。
それにしたって、それ以外は完璧なんだろ?
他校は国語だったら現国、古典、漢文てそれぞれテストがあるらしい。理科だったら一年次は生物と天文とか。
うちの学校は、それをひとまとめにしている
現国50、古典と漢文は25ずつとか。
でも、それぞれの授業で小テストが異常に多い。ほぼ毎回出してくる先生もいる。宿題も多いし、塾に行ってるヤツは、塾の授業の合間にやるとか言ってる。それで部活もやってるんだから、みんなどうかしてる。
僕は塾には行きたくない。今はいいけど、そのうち考えないと行けないんだろうな。なんちゃら高校講座とかやったほうがいいのかな。
夏休みにアメフト部の合宿があり、須田はウキウキしてる。足首はすっかり治って、毎日走り込みをしていてすごい。
淡路は東京の博物館での漫画展と、京都の大学の漫画博物館に行く。高校合格のご褒美なのだとか。
小川はバイトするらしい。家の近くのファミレスで時給がいいとかで、実は土曜日だけやってんだって。もちろん学校には無届け…
僕はどうしよう。なんの予定もない。家族旅行なんてない。伯父のところでも行ってみようかな。いや…その前に大量の宿題をどうするかだ。
結局、伯父の店でバイトすることになった。伯父の方から電話があって、母と勝手に決められた。
土産店の店番で、暇な時は宿題やってていい。
祖父母がいた頃、店の続きに六畳の和室があって、大体いつもそこにいて、テレビもつけっぱなしだったり、食事をしたりしてた。
土産店と言っても特別なものを置いているわけでもない。江ノ島や鎌倉の風景をモチーフにしたレターセットやメモ帳、ハンカチタオル、Tシャツやトートバッグなんかを置いている。
知り合いのイラストレーターに描いてもらっていて、淡い色合いで結構評判がいいらしい。
最初はTシャツ着てたけど、割とジロジロ見られてしまうのでやめた。
子どもの頃は竹でできたヘビ(龍かも…)のクネクネ動くおもちゃとか、木刀とか絵葉書とか人気のキャラクターのご当地キーホルダーとか売ってた。ちょっとした土産物のお菓子も売ってたと思う。
一番売れていたのは、夏はやはり飲料だ。氷水で冷やしたペットボトルはよく売れていた記憶があり、しょっちゅう祖父が倉庫から出してきて補充していた。
麦茶にジュース…ではなく、ミネラルウオーターはあったが、スポーツドリンクやジンジャーエール、炭酸水、レモネード、ラムネもあった。麦茶は家で作ってるから、ジュースは甘ったるい…と祖父母の好みのものだった。
祖父母は売り物を『あっついな〜』と言いながらよく飲んでたし、僕もよくジンジャーエールを飲まされた。
でも、なんだかよく売れていたらしい。
それは今はない。自販機を置くようになったから。だがそれもない。
ゴミ箱やその周りにゴミを置かれて、観光客が置くのは目をつぶるとして、家庭ゴミが置かれるようになった。
張り紙をしたが収まらないので、自販機を撤去してしまった。その代わりカフェで飲んでね!という事だ。
カフェは伯父とキッチン担当の叔母、主婦のパートさん、学生のアルバイト数名でやっている。
普段は土産店は客が入ると、メロディが鳴るようになっているので、誰か手の空いてる人が対応しているらしい。
さすがに夏場は手が足りず、叔父も洗い物をしたり、メロディに気付かない事もよくあるらしかった。
カフェと土産店は暖簾(いかにも土産店にかかってそうな)だけで隔ててあり、土産店にいるとカフェの様子がよくわかる。
あまりにも忙しそうなので、あまりにも暇な僕は何か手伝える事ないか聞いたが、店番がいてくれるだけで助かると言われた。土産店を休もうかとも思ったらしい。
美味しいまかないも出してくれる叔母の美沙は、伯父と母の弟宏樹の妻で、管理栄養士と調理師の免許を持っている。
結婚前は小学校の給食室などで働いていたらしい。結婚後は子育て等あり専業主婦だったが、末っ子が小学校入学のタイミングでカフェの手伝いを申し出た。
当時は、やはり調理師の女性を雇っていたらしいが、いまいち味付けに難があったとか。叔母が来て、すっかり評判が上がったらしい。学生時代に喫茶店でバイトしていて自分でもやってみたいと思っていた。
メニューは日替わりのみ。
ご飯と汁物、メインのおかずと小鉢が2、3品。あとはコーヒーと紅茶とウーロン茶とリンゴジュース。
ケーキも日替わりで一種類。近隣のケーキ店に頼んでいるが、週一回、伯父(!)が焼く。昔からお菓子作りが趣味だったとか。
以前はメニューがいろいろあったが、叔母が入ってから、このようになった。月曜日定休日だけど、たまに叔母がいない時に伯父や調理担当のパートさんが大変にならないような配慮がしてある。
まかないも同じメニューだけど、お子様ランチみたいな皿にドバッと盛られている。ご飯におかずの汁が滲んでたりして、これが美味しい。毎日、楽しみだ。メインは今のところ、同じ物は出ていない。給食の仕事していただけあって、バラエティーに富んでいる。
家も近いし、昼時は時折、叔母の子ども達がまかないを食べにくるので、僕も全くひとりで食事っていうこともない。
子ども(いとこ)は高二、中ニ、小四で上が女の子で下二人は男の子。
高二の千宏はおしゃべりで、弟にうるさがられている。大学生になったらカフェでバイトしたいと言って、
『伯父さんの後継ごうかな。料理も好きだしぃ。タッちゃんはお土産屋さんのバイト続けるでしょ?』
考えたことなかったけど…ちょっと考えさせて、と言うか、ハッキリ言ってそのつもりはない。
大学生と言わず今だってカフェでバイトしたっていいのにと思ったが、通ってる高校がバイト禁止だとか。バレると停学処分が下され、実際、同級生や先輩たちのそんなところを見てるのでやらないと言っていた。
同級生の一人は父親の実家の家業の店番をちょっと頼まれてやってただけで、親御さんも抗議したらしいが許されなかったとか…
厳しすぎないか? て言うか、どうして学校に知れたのか、
『自分で友達に話しちゃったんじゃないかな。それでチクられたんだよ』
女子校っぽい…
中ニの卓也は陸上部があって、来たり来なかったりしてる。
末っ子の友也は学童に行っているが、土日はやってくる。甘えん坊でキッチンの入り口から叔母に話しかけている。だいたいが姉兄への不平不満だ。
叔母はめんどくさがらず、作業をしながら聞いて返事していて、すごいなと思う。母だったら『うるさーい!』と大声出しそう。実際、母は皿洗いの手伝いにたまに来るが、友也にイライラしてるのがわかる。叔父の宏樹が時折来ては友也を連れ出して行くが、お店がいいと言って直ぐに戻ってきてしまう。でもまあ土日だけだからね。
兄と青山先生が来て慌てた。
青山先生には口頭でバイトの事は話したが、許可証をもらってない。本当は許可証もらって携帯しておくのがルールだけど。
「ああ、忘れてた。でも、俺が知ってんだからいいんじゃない?それにOBの店で甥っ子なんだしさ、『ちょっと、お手伝いしてまぁす、担任も知ってまぁす』で平気だよ」
「はぁ」
千宏の女子校とはその辺は違うか。バレたら、青山先生に聞いてと言ってと言われた。
その後、伯父と三人で食事しながらおしゃべりしていた。
今日は平日だけど、割と暇だ。たまにそういう日がある。そんな日もないとね。
僕は土産店に戻ったが、伯父の笑い声が大きくて、お客さんがびっくりしてるのがわかった。
「すみませ〜ん」と愛想笑いをした。




