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私が描く私の夢 1

 私は自分の描く絵をどうしようかと考える。

 夕べの夢で一番印象に残っているのは、屋上で見上げたどうしようもない灰色の空だから、灰色で一面塗ってみようか…


 そう言えばキタは、絵の評価を期末の点に加算するって言っていた。

 ダメだ。

 夢を作りだそう。

 私がこれから描くのは私が見たい夢だ。私が見たい夢を見た夢だと思って描く。明るくて前向きなわくわくするような夢を。



 例えばサクラちゃんやミノリちゃんとピクニックに行く夢。

 例えばツブツブと映画に行く夢。

 例えばゴトウハルカに、「1年の時から気になってたんだ山根さんの事」

と言われる夢。

 どれもやっぱり嘘っぱちだ。

 私の頭の中には、ヤグチに手を繋がれてうす暗い迷路をグルグルと回る自分が浮かぶ。


 「なぁ」と授業中なのにふいにヤグチが後ろを向いて来た。

 今またキタは美術準備室に何かを取りにいっている。

 「オレはお前の夢に出てきた事ある?」

「え…」

ヤグチはそういう事をモチダタケトとかに聞かれるのが恥ずかしくはないのかな。

「見た事…ないよ?」

「へー」ヤグチが睨むような目で見てくるので私は思わず視線をずらしてしまう。


「オレ結構見るよお前の夢」

ぶわっと顔が紅くなったのが自分でわかった。

 とうとうモチダタケトが口を出した。「ヤグチって山根が好きなの?」

 ヤグチはそれには返事をせずに私を見つめたまま白目をむいて見せた。



 どう言う事!?

 なんちゃって~~みたいな事?

 キタが戻って来たのでヤグチはまた前の方を向く。私はいったい、ヤグチのどんな夢に出演してるんだろう。



 考えあぐねて全く絵が描けない。早く描かないと美術の時間が終わってしまう。

 だいたい夢なんてどうでもいい。私の見た夢は私の見た夢でしかなくて

他人にはわからないんだから。


 桜井に言われたみんなの話を聞いて、「3,4人の違和感のある人を選ぶ」事。

 私はまだみんなの話を聞き終えていないけれど、選ぶだけだったら今でも誰でも選べるのだ。

 でも選ばないといけないのはこのクラスで違和感のある人……



 私の頭には、どういうわけかクラスメートではないゲゲゲの鬼太郎のヘアスタイルが浮かぶ。

 キタだ。

 おかしいな。さっきまで見ていたのに、美術準備室に入ってしまったキタの顔は、目を瞑った私の脳裏には全く浮かんでこない。


 キタは結構違和感があるな…まぁクラスメイトじゃないけど。

 今各教科を担当している教師の中で、何て言うんだろう…うまく言えないけれど、周りにある空気がなんとなく他の誰とも違うように思える時がある。

 そりゃあみんなまとっている空気や雰囲気は違うけれど、何て言うんだろう…キタは違うのだ。

 …うまく言い表せないけれど私はそれを「違う」と感じる。



 「山根?」

戻ってきたキタが私を呼んだ。

 何だよ!という気持ちが隠せずに、ふてくされた声を出してしまう。「はい」

「どんな夢見たの?」世間話でもするようにキタが聞いてくる。

言うのか?私はみんなの前でそれを喋らなければいけないのか。


「え~と、見てません」

ヤグチにも見てないと答えた。

「ふうん」とキタは気のない様子でうなずく。

いいのか?見てないって事で。

「じゃあまぁいいや」とキタに言われ、

突き放された気分を味わう。

「やっぱり見ました」と私はキタに言ってしまう。「今描きますから」

「よしわかった後20分な。20分で終わらせて後ろから集めて」


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