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後ろを見るヤグチ 2

「薫?」ヤグチが私を呼んだ。

思わず顔を上げてヤグチを睨んでしまう。モチダタケトもピクッと振り向いた。

「これ、オレのシャーペンと交換な」

ヤグチが勝手に私のペンケースから黄色のシャーペンを取り出して自分のペンケースに入れ、自分のペンケースから銀色のシャーペンを取り出して私のペンケースに入れた。

「ダメ!」

私が言うがもう遅い。怖くて私はエダノノカの顔が見れない。



「ヒカルの描いた絵ぇ見して?」

シャーペンの事は何もなかったかのようにエダノノカが言った。

「見せない」とヤグチがあっけなく答える。

もう私この席に居たくないな。

 「でも見せて?何か描きにくくない?山根さんて」

エダノノカの顔をちらっと見てしまったらやっぱり怖い顔をしていた。

「まぁな」とヤグチがそう答えたので、不思議な事に私の胃がチリッと痛む。

 エダノノカが嬉しそうに笑った。



「薫?」

ヤグチが今自分のペンケースに仕舞ったばかりの、私から取った黄色いシャーペンをまた取り出してカチカチ言わせながら私を呼んだ。

「今日はお前んちな」

モチダタケトがあからさまにこちらを見ながらニヤついた。

「なに?」エダノノカが怒り出す。「この子と約束してんの?」

 私の「してない」という声は、ヤグチの「してるしてる」という声に被せられて意味をなさない。

「あんたヒカルとは付き合ってないって言ったじゃん!」

声が大きいよエダノノカ!美術室で話す事じゃないじゃん。



 「本当に付き合ったりしてない」

エダノノカがそれ以上大騒ぎしないように私は落ち着いた声で言った。

が、ヤグチはエダノノカの存在を無視して私に話を振り続ける。

「聞いてんの?薫。今日は、おまえんち」

「今日は、とか言わないでよヤグチ君!1回もどっちの家にも行った事ないじゃん!」

ヤグチがにっこりと私に笑って見せてからエダノノカに言った。

「まだ、な?まだ付き合うまでは行ってねぇけど、今良い感じだから邪魔すんな」



 …最悪だ。最悪ヤグチ。

 私はエダノノカが嫌いだが、エダノノカに嫌われるのは嫌だ。面倒くさいから。



 立ち上がって美術室から出たかったが我慢した。そんな事をしたらますます面倒くさい事になる。

「でも山根さんてさ」エダノノカが憎々しげに言う。「ツブツブと今仲良くしてんじゃないの?」

仲良くしたいけど、まだそこまでじゃないんだよ。

 水を差さないで欲しいな。



 「オレの絵見る?」ヤグチが私に嬉しそうに言った。

ヤグチはもうエダノノカがそこにいないかのように私に話す。

 さっきエダノノカにはきっぱり「見せない」って言ったくせに。そんなに嫌なのかな、エダノノカの事。すごくお似合いだと思うけど。派手な感じ同士。

 うん、とも言わないのにヤグチは私に自分の描いた絵を見せた。



 ヤグチの描いた絵には私はいなかった。

真ん中に羽を広げた鳥がいて、鳥は斜め向こうを向いている。

「鳥?」と思わず聞いてしまう。

「鳥」とヤグチがにっこりしながら肯定する。

「私が鳥って事?」

「わかんない。でも鳥が出てくる夢が浮かんだ」

そこでやっとあきらめたのか、エダノノカが「バッカみたい」と言いながら離れて行った。


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