図書室 3
「それで?」と目の前の高森先生は言った。
「借りるの?借りないの?借りるならさっさとカードに記入しなよ」
「これ、何て言って桜井先生が私に渡すように言ったんですか?」
3冊の本をカウンターの上に横に並べて私は聞いた。
『世界は密室で出来ている。』の表紙が少し変色している。
何だろう?共通点は…冒険?変わり者?
「さっき言ったじゃん」高森姉の声は冷たい。「渡してくれって言われただけ。ほら、早くしないと…」
そう高森先生が言った時に掃除予鈴のチャイムが鳴った。
「ほら~~」と先生が言う。「あのカエル触るとヤバいよ?」
「え?」
「イボできるよ。イボ」
え~~~!
結局本は放課後まで置いておいてもらう事にして、掃除場所の渡り廊下に急ぐが掃除をさぼりたくなってきた。
ヤグチと顔を合わせたくない。
さすがに私は小心者だから授業をさぼったりはできないが、今日だけは掃除をサボろう。確かに私はゴトウハルカよりツブツブの方が断然気にかかって来ているが、ゴトウハルカの前でヤグチに「薫」って呼ばれるのは嫌だ。
私は図書室に引き返した。
「先生、急にお腹が痛くなりました。すみませんがしばらくここで休ませて下さい」
ゆっくりと、さっきの3冊の本の事も聞きたい。
ふん?と司書の高森は首をかしげる。
あ、今何か、生物の高森にすごく似てた感じがする。
「ダメ」とあっさりと司書の高森は拒否した。「ダメだよ私、先生だから。サボりに加担するわけにはいかないって。この3冊は預かっとくから放課後取りにおいで。早く掃除に行きなって。そんなに痛いんなら保健室行ったらいいし」
「先生、でも私放課後は桜井先生のとこと、それから高森先生のとこのカエルの水槽運ぶの、手伝わなきゃいけないんですよ」
「あんなの水、こぼしちゃえばいいんだよ」
司書の高森が吐き捨てるように言った。
仕方なく掃除場所へ向かう私だ。
…それにしても高森の双子の姉ちゃんが司書の先生だったなんて!誰かに早く教えたい。
掃除場所の渡り廊下へ行くとヤグチは居なかった。
良かった。
やぐちはよくサボっていたし、今日もやっぱりサボるのかも…エダノノカとどこかへ行ったのかもしれない。ヤグチみたいな男子は…何て言うか…イメージ的にエダノノカみたいな巨乳が好きそうな気がするもん。
「山根さん?」
後ろから呼ばれてたじろぐ。
この声ってもしかして!…もしかしなくてもゴトウハルカだ!
「ごめん、急に」ホウキを持ったゴトウハルカが言う。
これか!桜井が言ってた、ゴトウハルカも話をしに来るっていう…
「山根さんてアライサクラって子と仲いいでしょ?」
「え…うん」私はてんぱって消え入りそうな変な声を出してしまう。
今サクラちゃんの名前が出た…
「これ、渡して欲しいんだけど」
そう言いながらゴトウハルカはズボンのポケットから畳んだメモを取り出して私に渡してきた。
デジャブかと思う。
サイトウが渡して来たメモとほぼ同じ、畳んだメモを渡される。
「これ、アライさんに渡して欲しいんだけど」
はにかんだ、優しい顔でゴトウハルカが私にそう言った。
「山根さんて、アライさんと一緒のとこよく見るから」
そうか…
そうか、ゴトウハルカはサクラちゃんが好きなのか!
そうか…そうか…マジで…
何か微妙気持ち。
ゴトウハルカよりツブツブの方が好きになっていたけど、でも、微妙な気持ち。
そこへヤグチがやって来る。
「薫!」
うわ、ヤだな。もう…ほんとヤだな。
ちょっと感傷に浸りたいのに。しかもやっぱり薫って呼びやがった。
そうか…ゴトウハルカはサクラちゃんが好きなのか…
何か酷だな。桜井め。




