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図書室 1

ヤグチは帰って来ない。

たぶんエダノノカに捕まったんだろう。放課後までずっと捕まってればいいのに。



「山根さん?」

呼ばれて振り向くとフジイさんだ。

「山根さんの事、図書の先生が呼んでたんだけど」

「私を?」

「そう。今ちょっと委員の集まりがあって、その時に」

「私今、何にも本借りてないよ」

「ん~~何の用事かは私聞いてない。呼んでって言われただけだから。伝えたからね。行ってみて?」

 フジイさんの下の名前は何だっけ?

 フジイさんは要件を告げるととっとと去っていったが、私に話したい事はないんだろうか。

 もう自分からガンガン聞いてみようかな。話しかけて来てくれた人全員に「私に話したい事ない?」って。


 

 こんなペースじゃヤグチが言ってたように、1週間でクラス全員終われない。

 クラスの子たちの話は聞いてないのに、朝から教科担当の教師には無駄に呼ばれ話を聞かされる。



 3階の一番端にある図書室に急ぐ。

 早くしないと掃除時間がが始まってしまうからだ。

 図書室に入るとUB40 の『好きにならずにいられない』が流れていた。

図書室にはなぜかいつも小さく音楽が流れている。司書の先生の趣味の音楽らしい。そして校長からもそれは許しが出ているらしい。

 この間来た時にはオアシスの『ヒンドゥー・タイムズ』がかかっていた。



 私も1年生の最初の頃はよく図書室へ来ていた。

 その頃にはもうサクラちゃんとミノリちゃんが、お昼を一緒に食べるように誘ってくれていたけれど、人見知りの私はその後の会話が続かなさそうで、仲のいい2人の間に割って入っているような罪悪感も感じて、よく、本を借りに行ってくる、と行って弁当を食べ終わるとここへ来て、ずっと本棚と本棚の間で一人きり、ゆっくりと取って開きもしない本の背表紙を眺めながら音楽を聞いていた。



 あれ?そう言えばその頃何回か、図書館でヤグチを見たかもしれない。

 え?いや?何か他の記憶との入れ違いかな。

 だってヤグチは図書館に通うようなキャラじゃないから。

 そして私もやがて図書室にはあまり行かなくなった。ミノリちゃんとサクラちゃんと、3人でいる事がとても居心地が良くなってきたからだ。



 司書の先生は黒ぶちの眼鏡をかけて、化粧っ気もないし、いつもひっつめ髪をしているが、音楽の趣味はとてもいい。

 それに化粧っ気がないにもかかわらず結構な美人だ。

 私の中で彼女の点数は94点。非常に高い。

 そう言えばハヅキモエノは私に事を88点をつけてくれた。

 まぁそれはハヅキモエノが変わっているからなんだろうけど。すごく嬉しかったな。…ハヅキモエノともっと話したい。

 友達になれたらいいのに。



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