保健の時間は終わらない 2
チャイムはまだ鳴らない。
この体育館の中だけ時の進み方おかしいんじゃないのかさえ思う?
「「後3人~~~」」と田代姉妹は息も切らさずに言った。
「「山根~~~、後3人誰か話を聞きたいやつ選べ~~~」
しつこいな田代姉妹。
嫌だし!絶対選びたくない。
桜井は言ったんだって。私が聞こうと思わなくたって、向こうから勝手に話をしに来るって。
田代姉妹のダンスに気抜けしたみんなが少しずつ我に返る。テレビの特番であるような集団催眠にかかっていたみたいな感じだ。
ツブツブがゆっくりと立ち上がった。
「仕方ないな。オレはみんなの前では話したくなくて、山根さんにだけ話したかったんだけど」
ツブツブが普通のトーンでそう話すので驚く。
ざわざわと田代姉妹のダンスの呪縛が解けたみんなが騒ぐ。
ツブツブがちょっと目をつぶってから言った。「あ~やっぱ止めた。後で山根さんにだけ話す。パスです。田代先生」
煩い男子は「おおっ」と騒ぎ、女子のざわつきも酷くなり、隣のヤグチはあからさまに私の腕に自分の腕を当ててきた。
今朝声をかけてきたナナダハルミは見ないようにする。睨まれているような気がするから。
「「そうか~~仕方ないな~~」」田代姉妹が言った。「「じゃあ後2人だけど~~?山根~~~どうする?」」
「先生!」私は慌てて言った。
「もうごめんなさい!私が最初でちゃんと喋らなかったのが悪かったし…
みんなはクラスの皆の前で自分の事を喋るなんて、きっとすごく嫌なんです。私だったら絶対嫌だから。本当にさっき喋ってくれたムラカミさんたちごめんなさい。ありがとう。私がちゃんと最初からしゃべらなかったばっかりに。…みんな…本当にごめんなさい」
私はみんなに頭を下げた。
田代姉妹余計な事をしやがって。
「山根さんそんなに謝らなくてもいいんだよ」言ったのはハヅキモエノだ。
「山根さん、今朝から…ずっと先生に名前呼ばれてたし、今のだって山根さんも呼ばれて困ったんでしょう?みんなそれ、わかってるよ。それに話を聞く係に選ばれたのに、自分がみんなの前で話すなんて思ってなかったよね?
だから私が話す。自分の事はやっぱみんなの前では話したくないから山根さんの事話す」
ええ?
できればそんな事止めて欲しい。が、ハヅキモエノは話し始めてしまった。
「山根さん見てるとなんかすごく普通な気がする。すごく可愛いわけでもないし、すごく綺麗なわけでもないし、すごく素直でもないし、すごく面白いわけでもないし。でも可愛いし綺麗だし素直だし面白い。そんな感じ。私このクラスでは山根さんの事が一番好き」
ざわぁっと、みんなで作った輪が変な風に揺れ私は恥ずかしさで下を向く。
どうしてそんな事を、今そんな風によりによってみんなの前でハヅキモエノは話したんだろう。
「ちっ」とヤグチが舌打ちをしたのが聞こえて私はビクッとしてしまう。
何で舌打ち?




