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桜井への確認 2

「先生、昨日はここよりもっと学校側でバスを降りましたよね?」

「そうそう。市立図書館に寄ったからね」

「ヤグチ君から聞きました。一昨日の放課後、私が控室に呼ばれていた時

ヤグチ君も呼ばれてて、話を聞いてたって」

私はまず聞こうと思っていた事を単刀直入に聞く。

「ああ、そうだね」何でもなさそうな桜井の口調。

 私はムッとする。

「どうしてヤグチ君には私との話を聞かせて、私にはヤグチ君がいる事を教えてくれなかったんですか?」

「う~ん」と桜井は唸った。「まぁいろいろだよ」

「はぁ?」

バス中に聞こえるような声を出してしまい、私は口を押さえながらうつむいて顔を隠した。



「ヤグチ君は先生に『見届ける役だ』って言われたらしいですけど…何を見届けるんですか?私には報告とかいらないって言ったじゃないですか。ヤグチ君…私を助けてくれる気でいるし」

「ほう」

いや、ほう、じゃなくて。「見届けるって何ですか?」

「山根も一人よりは心強いだろう」

「…ヤグチ君も一緒にみんなの話を聞くって事ですか?」

「山根、山根は細かい事を気にしすぎだな。だからみんなにもなじめないんだぞ」

 久しぶりに聞いたな『なじめないんだぞ』。

 小学校の時はよく先生に言われた。もっとみんなの輪に入っていけるように自分でも頑張りなさい、って。

 できないっつうの!それが出来たらもうそれは私じゃない。

「そんな事はない」と桜井が静かに言うので、私はゆっくりと桜井の顔を見つめてしまった。

「私とか、私じゃないとか、そんな事もどうでもいい。この世の大概の事は山根、どうでもいい事なんだぞ?」

「…」


「でも気になるよな?いろんな事は気にかかる。それでいいんだよ」言って桜井はふんふんとうなずく。

 何?何がふんふんなの?

 それで一体どうなんだ?

 私の聞きたかった事はそんな事じゃない。

「ヤグチの事はな」と桜井がまた、私が口に出していないのに答える。「現実味を持たせるためだよ。山根一人でみんなの話を聞いていると、たぶんだんだん不思議な気持ちになってくると思うんだよ。自分一人違うとこにいる、みたいな」

最初から不思議な気持ちで満杯ですけど?

「でもホラ、それを他に知っている子がいると何て言うのかな~~、自分がここにいるなって思えるっていうかな?そんな感じだ。だからホラ、みんなの話を聞くのは山根だけど、もうどうしても誰かにバラしたいと思う時には

ヤグチがいると思えば、な?」

「嫌ですよ!人が私だけに話してくれた事を誰かにバラしたりは私はしません!」

 桜井が嬉しそうな顔でうんうん、とうなずく。


「それに」私は声を抑えて言う。「みんなが私の所へ話をしに来るって事でしたけど、その誰かがやって来て私に話した事が私にただ話をしてんのか、

先生が言う『話』をしに来てんのか、もうさっぱりよくわかりません」

「何?何を言ってるかよくわからんな」

「話をしに来られても、何て言うか、すごく秘密だったり重要とは思えない

その程度の話っていうか…」

「その程度!」桜井が声を張ったのでびくっとする。

 前の人たちが振り向きそうで私はまたうつむいて顔を隠した。


「山根~人が心に想ってる事を『その程度』って、冷たいなぁ」

「違いますよ!よくわかんないって言ってるだけです。それで誰かの夢に出る人を3,4人選ぶんでしょう?私にはやっぱり出来ません。そんな事。出来ませんて言うか、信じられないっていうかやっぱわけわかんない…」

いい加減な人間だと思われていいからこの仕事を降りたい。

「…もう面倒くさいからやりたくありません」



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