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桜井への確認 1

「こっち」とヤグチは言って私の手を掴んだまま走り出した。

 つんのめりそうになる。ヤグチは走るのが速い。ヤグチに手を引かれて校舎の中を凄い速さで走る。階段も最後の何段かは飛んで降りる。私は思わず、きゃあ、と声が出てしまう。

「ちょっと待って!速過ぎ!私、校舎の外に出たいんだよ!」

ヤグチがスピードを緩めないまま振り向いた。

「わかってる!オレが外に連れ出してやるから」


 ヤグチがどれだけ速く私を走らせてくれても、私達は校舎の外に出る事が出来ない。

「仕方ねえな」とヤグチが階段を上り始める。

もちろん私の手を握ったまま、スピードも緩めない。

 上がったらダメなんじゃないの?

 階段は降りないと外へ出られない。

 登って登って登って、ヤグチは屋上へのドアを開けた。出口って言っても屋上じゃ校舎から出た事にはならない。

 灰色の雲の下、灰色のコンクリートの屋上で、ヤグチに手を握られたまま私は途方に暮れた。



 目覚めると私は、本当に全力疾走した後のように疲れていた。

 夢は暗示なのだ。高森は気持ち悪くて、ツブツブに助けて欲しいと思っても助けてはもらえなくて、そんなに助けて欲しいとは思えないヤグチは勝手に手助けしてくれて、そしてそれは実際手助けになっていない。

 私は夢の中のヤグチに舌打ちをした。



 予定していた通り少し早めに家を出て、1本早いバスに乗ったが、乗り込んですぐ足を止めた。

 一番後ろの席に桜井が乗っていたのだ。もしかして私は見張られているんじゃないだろうか。

 私と目が合うと桜井は微笑んで手招きをした。


1本早い便はいつものバスより混んではいない。

 空いている席が結構あるのに、私はものすごく嫌だと思いながら一番奥へと進む。ずっと桜井が手招きしているからだ。

 早い便に乗った真面目そうな子たちがチラチラと私を見るので、まだ席にも座っていないのにすでに居心地が悪い。

 桜井は近寄った私に「おはよう」と言った。

「…ございます」と私はほんの口先だけの返事をする。

「今日は早いね」と桜井は言いながら、自分の隣の席をぽんぽんと叩いて私座るようにと促した。

 嫌だなぁ。

 桜井の所へ朝一で行こうと思っていたけれど、こんな風に待ち伏せみたいな感じでいられると落ち着かない。


 私が隣にぎこちなく座ると、もう一度桜井が「おはよう」とさっきより大きな声で、私の目をしっかりと見つめながら言った。

 椅子から立ち上がってまでこちらを振り返る人はいなかったが、何人かの頭がぐらっと動いて、声の元を少し気にしているのがわかった。

 さっきの私の返事が悪かったからだろうか。

「おはようございます」と今度ははっきりと言うと桜井がうんうん、とうなずいてにっこりと笑った。


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