↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
112/130

穴 2

 「お前今日休みって…」ヤグチが言う。

「私もそう聞いた」とハヅキモエノ。

確認してなかったのは私だけか…。二人ともしっかりしてるな。

 でもこの穴が、果てしなく深くて、とめどなく暗くて、どうしようもなく気持ち悪い事を知っているのは私だけだ。



 「かったくるてさ、学校来るの」とキタが言った。「今日学校は休んでるんだけど、そこから出て来た」

キタが、そこ、と指したのはもちろんキャンバスに開けられた穴だ。

 


 うっげ~~~~~~…超!超気持ち悪いんですけど!

 キモっ!!キモキモキモキモキモ、キタキモっ!

 今日もグレーのコーデュロイのスーツだし季節感全くなしだ。唇も黒いし、最高にキモい。

 

 あんまりキタの事をキモいと思ったものだから、愚かな私はせっかく3人そろった夢から目を覚ましてしまった。

 どーーーーん。



     ★   ★    ★    ★    ★




 私はすごくバカなんだと思う。

 ごめんヤグチ、ごめんハヅキモエノ。

 私は今ベッドの上に身体を起こし、布団から両手を出して手のひらをじっと見る。そしてそのまま考える。

 今ここにいる私は夢の中なのか、そうじゃないのか。



 私は寝てそして夢を見た。

 それをちゃんと覚えている。

 最初ヤグチが家に迎えに来てくれて、バスに乗るところでその夢は終わり。

 次に目を覚ました時にはツブツブが家に迎えに来てくれて、私はバスに乗って、ヤグチがいないから降りようとしたのに学校へ着いてしまって、行きたくもない美術室へ行ったらヤグチが来てくれて、私はヤグチと美術準備室に入ったのだ。

 そこには穴があった。

 床に置かれたキャンバスに描かれた気味の悪い穴。私にしか見えていなかった穴。キタが書いたのだ。たぶん。あのキャンバスに。

 そしてキタが書いた真っ黒い穴は本物の不気味な真っ暗闇の穴になった。

私をそこに落とすために。

 ハヅキモエノも来てくれた。せっかく3人そろったのに、私はキタの気持ち悪さに…



 夕べは高森からもらったお茶を飲んだのだ。

 そしてその前には電話をもらった。

 ミノリちゃんやサクラちゃんやヤグチからの。うれしい電話。私はそれを全部、ちゃんと覚えている。



 ちゃんと全部覚えている。たぶん。

 たぶん…夕べの事も、その前の事も、もしかしたらやっぱり、桜井に初めて話を聞いた時からが全部夢だったんじゃないかという考えが浮かんだが、

それを必死で振り払った。



 だめだ。そんな事を考えたらもう動けなくなる。

 私の見たモノはみな、私が見たモノなのだ。

 それが実際の世界にあるものでも、私の夢の中にしかないものでも。全てこの私が見たモノなのだ。



 私は引き出しを開けフクロウの入った黒い小さな箱を出す。

 ちょっと開けてみようと思うが箱は開かない。そのまま通学カバンに入れる。

 ほら、今度は忘れない。私だってちゃんと少しずつ成長できてるんだから。


 今は家にいる。ありがたい事にまた降り出しからだが、ありがたくない事に私は今一人だ。

 ヤグチはちゃんと迎えに来てくれるだろうか。私はどこにも行かずにこのまま家にいればいいんじゃないのか?



 …それにしても私はヤグチに頼りすぎだ。

 男子に頼り過ぎる女子ってなんか嫌だよね?

 だってそういう女子に限って、女子だけの時には滅茶苦茶したたかなんだから。


 私の頭には、今のヤグチじゃなくて中学の頃のヤグチが浮かぶ。

 髪を染めて目つきも悪くて。けれど3年間ずっとそうだったわけじゃない。あんまり良く覚えていないけど、2年生の後半くらいはそんなちょっと悪いような感じだった。

 ヤグチは言っていたけれど、私はヤグチの事をなんでそんな風になちゃったんだろう、みたいな事を人に言ってはいないと思うんだけどな。

 そういう風に思ってはいたけど、口に出してそれを言うほどヤグチの事は近い存在ではなかった。



 …やっぱ頼ろう!

 私の事、好きだって思ってくれてるんだもん。この際頼ろう。

 だって…私もヤグチに一緒にいて欲しい。


 そう思ってヤグチにメールを打つことに決めた。うちに迎えに来てくれるように頼んでみよう。

 …今日になって急に嫌がったりしないよね?

 どうかヤグチが快く私を迎えに来てくれますように。

 ベッドから起き上がりながらそう思った時にケイタイが鳴り、見るとサクラちゃんとミノリちゃんからほぼ同時にメールだ。

「「今日迎えに行くから」」



 うちにって事?学区も全然違うのに?

 私は念のため返信してみる。「朝来てくれるの?」

 すぐ返信が来た。サクラちゃんからだ。

 「 後15分くらいで着く。

   朝ごはん抜いて来たからおにぎり作っといて  」

 そしてミノリちゃんから。

 「 後少しで着くよ

   あ、サクラいた  」


 ヤグチでもツブツブでもなく、今回私を迎えに来てくれるのはサクラちゃんとミノリちゃん?

 夕べの電話を思い出す。嬉しかったな、二人からの電話。

 ミノリちゃんに言われたのだ。今日全部話を聞くからって。ヤグチとの事も、私が話したくないと言った事も。



 でも私が選んだのはヤグチとハヅキモエノだ。サクラちゃんとミノリちゃんをこの変な事に巻き込みたくない。

 手をつねってみる。

 普通に痛い。

 

 ここは夢なの?私がいた元の世界なの?どっちなの!

 そう思った次の瞬間私は台所にいた。

 あ、やっぱこれ夢だ。

「お母さん、私…」

「おはよ。いつもより早いじゃん」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。