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穴 3


 「お母さん、私もしかしたら頭がおかしくなってんのかも」

 「ふん?」お母さんは私をじっとみる。「そうなの?」

そうなの?

 普通だったら、なんでそんな事言うの?とか、何言ってんの朝から、とか、そんな事ないよとか、そういう返しが来るんじゃないかと思うが、これは夢だからお母さんがこんな風に返事をするのか、元々のお母さんのキャラでこういう風に返事をするのか今一つよくわからない。お母さんならどっちも有り得る。

 が、まぁいいや、そんな事。


 「お母さん、友達が来てくれるの。いつも一緒にお弁当を食べてる友達二人。私が昨日元気がなかったって心配してくれて、うちから近くないのにわざわざ朝迎えに来てくれるって。でも朝ごはん食べてないからおにぎり作んなきゃ」

お母さんがとてもきれいな笑顔で私を優しく見てうなずいて言ってくれた。

「お母さんも手伝ってあげる」



 次の瞬間だ。

 サクラちゃんとミノリちゃんはもううちの居間に居た。

 次の瞬間、次の瞬間、て言って、前の夢の中でヤグチにバカだって言われた。

 でも二人は今とても可愛らしい顔で、私とお母さんが作った小ぶりなおにぎりを美味しそうにパクついてくれている。

「いつも薫と仲良くしてくれてありがとう」

お母さんが言うと二人ともニッコリと笑って答えてくれた。

「「私たちも薫ちゃんとまた同じクラスですごく嬉しかったんです」」

これが夢なら、すごく良い夢だ。ありがとう二人とも。



 でも…この二人と一緒の時にあの穴が見えて、そしてキタが出て来たら?

 どうしたらいいのか本当にわからない。ヤグチに今からでもメールを打ってみようか。

 それか、ヤグチがまだ出てこないこの夢から私は今すぐにでも目を覚ませばいいのか。

 …けれどそれは、もったいなくて出来ないな。

 サクラちゃんとミノリちゃんが朝からうちに来てくれて、しかも一緒におにぎり食べて、こんな嬉しい事も言ってくれたのに。

 どうしようか迷っていたら私たち3人は、次の瞬間バスの中にいた。



 私たちは3人一番後ろの席に座っている。私の右側にミノリちゃん、左側にサクラちゃん。二人に挟まれているのだ。

 ヤバい!私かばんを…あ、ちゃんと持って来てる、良かった。

 鞄の中からそっと、フクロウの入った黒い小さな箱を取り出しスカートのポケットに入れる。ゴツゴツして違和感があるけど仕方ない。

「その箱なに?」サクラちゃんが聞いてくる。

「え?え…と、ただの箱?」

「ふうん…」

「私、怒ってるんだからね」とミノリちゃんが言った。

「何にだかわかってる?」

 わかってる。私がいろんな事をちゃんと喋らない事にだ。

 私がそう口に出していないのに「そうだよ」とミノリちゃんは言った。

「そうそう」とサクラちゃんも言う。「私たちは大事な友達だと思ってるのに」

「私も!」慌てて言った。「二人の事を本当に大事な友達だと思ってる」

ちょっと恥ずかしいけど、夢の中なら恥ずかしい言葉も言える。


「

 ねぇ知ってるよね?」サクラちゃんが言った。「田代先生たち、本当は5人いるって」

「えっ!」

「私たちが薫ちゃんの事、1年の時に一緒にお弁当食べようって誘ったの、

薫ちゃんはどうせ、私たちが一人になりそうな薫ちゃんに気を使ったんだと思ってるんでしょう?違う?」

そうだけど、そんなことより…「田代先生たちが5人て…」

「え?5人でしょ?もっといる?」とサクラちゃん。

「いいんだよ」とミノリちゃんが吐き捨てるように言った。「5人いたって」

「えっ?」

「そんなことよりどうなの?気を使ったんだと思ってるんでしょ?」

サクラちゃん…そんな事よりって、と思うが私は素直にうなずく。

「…うん」

「「ほらね!」」二人で声を合わせる。「「そういうとこなんだよね」」

「ごめん」と私は謝る。

でもやっぱり、そんな事より田代先生たち5人て…

「ごめんとか言うし」とミノリちゃんが言った。

「…まぁそういうとこも好きだけど」

 どうして二人が、田代先生が5人いるのを把握しているかを聞きたいが、次の瞬間私たちは教室にいた。



 黒板に書いてある。前の夢と同じだ。

「1、2時間目は美術に変更になりました」

ヤバい。前の夢と同じだ。

 ヤグチがいないのにどうしよう…

 あれ…ミノリちゃんとサクラちゃんもいない…

 でもコンドウ君、デガワさん、ムラヤマさんがいる!


 サクラちゃんとミノリちゃんはもう、美術室に行ったんじゃないだろうか。ヤグチとハヅキモエノもまだ現れてくれない。

 が、私の目の前にはデガワさんがいた。

「ヤマネさん、聞いて欲しい事があるんだけど」

「う…ん」デガワさんの話は聞きたい。

いや本当はあんまり聞きたいわけじゃないけど聞いた方がいいと思う。

 それでも私はサクラちゃんとミノリちゃんの事が心配だ。

 二人が先に美術室に行っていたら、そして二人がキタになにかされていたら…



 二人はたぶん何もされないし、何も見ないだろうし、二人には嫌な事は起こらないと思う。

 …そうかな?

 二人は田代先生たちが5人いるって知っていたし、どんな人にも穴はあるって桜井が言っていた。


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