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マーネは見下ろされる状態で、ニッコリと微笑まれていた。戸惑いながら頬をひきつらせて笑い返せば、隣から勢いよく飛び出たオルレアの蹴りが少年のおでこにクリティカルヒットした。うっ!という声とバランスを崩した少年は頭から崩れ落ちる。同時にオルレアが反動を使って空中後転してマーネの頭の上に立つと、ぺしっと叩いた。
「マーネ、さっさと起きなさい!」
オルレアの怒気に反射的にはい!と返事をしたマーネだが、ふと我にかえる。
この人出迎えの人なのでは?
「って駄目だよ!何で飛び蹴りしたの!?」
慌てふためくマーネを余所にオルレアは一秒たりとも少年から目線を外さなかった。こんなに近い距離にいたのに気配が全くなかったからだ。普通の人間なら何メートル離れていても匂いと音で分かる。でも気づけば真上にいた。そして近場から複数の目線を感じる。嫌な感じ…魔法かしら?とオルレアはいぶかしむ。
少年はおでこを擦りながら、少し涙で潤んだ瞳をオルレアに向けた。
「痛ってー。その子ってアニマ? 小さいのに結構狂暴なんだね。」
オルレアは動じない。マーネは心配そうに眉をひそめるもオルレアの警戒にならって気づかれないように距離を取る。
「あんた、闇魔法使ったでしょ。」
「使ったよ。それが俺の魔力属性だからね。」
詰め寄るオルレアに淡々と返す少年。
「闇魔法は違法のはずよ。」
「表向きはね。でもここは魔法を学ぶ所で、国の諜報部隊には闇魔法所持者がいる。そういう場所で活躍出来るような魔法しか習わないよ。」
言葉に棘がある言い方のオルレアに対して少年は笑顔で答えていく。その姿を見て、マーネはこの人普通にいい人なのではと思い始めていた。オルレアが警戒するのも分かる。マーネが戦争孤児になったとき闇魔法使いに拐われたことがあるからだ。悪いことをする人間=闇魔法使いのイメージは世界共通認識で、目の前の男の子もそれを分かっているみたいだった。だからなるべく波風立てないよう丁寧に話しているのかもしれない。相手の誤解がなくなるまで説明しないといけないのはすごく大変だ。理解してくれるか分からないのに終わらない問答を繰り返してるみたい。それに学生服を着ているのだから関係者ではあるはずなのだ。こっちに非があるのは明らかすぎる。とマーネは思った。
オルレアが次の質問をしようと口を開けたとき、マーネは声を上げて遮るように話しに割って入った。
「っあの!! そんなことより、おでこ大丈夫ですか? 私はマーネ。彼女はオルレアです。彼女の蹴りは容赦がないので、しばらく痛むかも…。ごめんなさい。」
ちょっと、どういう意味よ!と怒るオルレアを
頭から肩に移動させる。落ち着いての意味を込めて彼女の下顎を撫でれば、仕方ない。と渋々話す時間をくれた。
「…平気。確かに痛かったけど、治癒魔法かけるほどでもないから。あんた転校生のマーネ・ノクスウェルだよね?オレはヨル・ブライト。」
男の子は左手を差し出してきたのでマーネは握手する。すかさヨルはもう片方の手でマーネの手をサンドイッチのように挟んだ。首を傾げる一人と一匹。
「…あの?」
「あんたを迎えに来た。ようこそ、ソフィアスコラへ。」
ヨルは翡翠の瞳を細める。
言い終わる前にオルレアはマーネに何かを叫んだが、マーネには届かなかった。真っ暗闇に包まれて何も見えず、そして何も聞こえなくなった。




