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「…取り敢えず中へ入ろうかな。」
その決断までかなり時間がかかったが、ようやく動き出したマーネにオルレアはホッと胸を撫で下ろした。やっとか!と思ったが口には出さない。また言い合いに成れば、今度は夕方までかかるかもしれないからだ。
目の前にある大きな金の門にはライオンの顔のドアノッカーが着いていた。それに名前を伝えればドアは開くはず。マーネはそーっと近づいて自分の名前を呟いた。
「マーネ・ノクスウェル」
言い終わると同時に、ラインオンから光が瞬いて承認と声が聞こえた。眩しくて目を閉じた瞬間マーネ達をドアノッカーが口を開けて、飲み込んだ。誰にも見られることなく。
次に目を開けたとき、マーネ達の前には門もライオンの顔もなかった。あるのは目の前に広がる草花や木々。白い石畳の向こうにそびえ立つ巨大な建物だった。
「凄いね…!」
マーネの感嘆に頷くオルレア。
「中に入れたようだけど…、出迎えはなさそうね。あのでっかい建物が学校かしら?」
「名前伝えたから誰か来るかもしれないし、待っといた方が良いかもしれないね?」
さっきとは打って変わって穏やかな顔をしたマーネはふふふと笑っている。さっきの緊張は何処へ行ったのか、オルレアは微笑んでいるマーネの目線で推測した。
「…あそこの芝生。木漏れ日が気持ち良さそう~とか思ってるでしょ。」
「……ちょっとだけ駄目?」
少しの間の沈黙。 やっぱりなと呆れた顔のオルレアを見て、マーネは弁明する。
「だって!!ここまで来るのも大変だったし。孤児院出てから色々ありすぎて、頭パンクしそうなんだもん。自然の中で休憩して頭と心を休ませたい…。」
お願いっ!とオルレアに懇願するマーネ。
「別に駄目なんて一言も言ってないわよ。やっぱりなと思っただけ。何年一緒にいると思ってるの、それぐらい理解してるわ。」
マーネはやったー!と叫ぶと、青々と繁る芝生の上に寝転んだ。程よい木漏れ日とそよそよと木の葉の擦れ合う音に癒される。光輝く太陽も好きだけど、合間に溢れる微かな光もマーネは大好きである。何かに埋もれてても必ず見つけて貰えるような、見守って貰っているような気持ちになるからだ。孤児院の近くの森に似た空気を感じて、マーネは少し懐かしくなった。
オルレアもポケットから出てきてマーネと同じように隣に寝転がった。
「良い天気で気持ちいいわね。誰か来たら恥ずかしい格好だけど…。」
背伸びしながら言うオルレアにマーネは同意する。
新品だった白シャツは皺になってるし、黒いプリーツスカートには土が付着している。服も鞄も今日のために準備してくれたものだ。
ふと、親代わりになったあの人の顔が浮かぶ。
「怒られるかな…?あの人って怒るのかな?」
急に不安になってオルレアを見れば、気持ち良さそうに目を閉じて船を漕いでいる途中だった。
それを見ていると、マーネも眠たくなってきて瞼を閉じた。誰かが来たら音でオルレアは気づくだろうから。
マーネが安心しきって全身の力を抜いた時、
「はい、起きてくださーい。」
突然、真上から声がして目を開けると、翡翠色の綺麗な瞳と目があったのだった。




