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合図と共にヨルが一気詰め寄って刀を振り下ろす。間合いに入ればこっちものと言わんばかりにさっきとは打って変わって近づいて来る。
マーネはヨルの頭を狙ってナイフを投げながらそれを後ろへ避ける。
キンっとナイフが弾かれる音と合わせて追加で3つほど違う部位に投げた。
ヨルは至近距離からのナイフに避けれず刀で受け流す。
攻防一体の試合にオルレアは木陰から状況を冷静に分析していた。
武器の相性では向こうが強そうだけど、マーネの身軽さとナイフ精度で近づくのが難しいみたいね。どちらもこういう経験が豊富なわけではないし、一つ崩れればそこから綻びが出始める。現に今マーネのナイフの数は着実に減っているし…。
オルレアは短時間で勝負を決めなければマーネが勝つには厳しいと見た。
ヨルもそれを解っていそうで、距離を詰めたり離れたりを繰り返している。
マーネは手元に残った1本のナイフを構えてヨルを見る。 殺気はない。でも刀を振り下ろすときの容赦もない。彼の本音は何処にあるのか。昨日のヨルさんの苦悩は本物だった。一瞬だけ見えた悲しげなヨルの顔が頭をよぎったが振り払う。この勝負に集中しなくちゃ。
マーネが最後のナイフを投げると同時にヨルが踏み込む。ヨルは刀でナイフを弾きながら下から上へ流れるように振り上げる。これで勝った。とヨルは思った。マーネはナイフを使い切った、後ろは避けれるほどの距離がない。左右に避けてもそのまま振り下ろせばいい。武器がなければ勝つ手段がない。
間合いに入る。マーネはヨルに向かって飛んだ。刀が当たるより速くヨルの肩を使ってマーネが飛び上がり、空中で回転して、刀に掠れることもなくヨルの背後をとった。そのままヨルの背中に抱きついて脇腹を擽る。ヨルはギャーと叫んで膝をついた。
勝負あり。とイチカ先生が震える声で叫ぶ。
呆気にとられる生徒達を尻目に、笑いを噛み締めるイチカ先生はこの読めなかった結末に拍手を送った。まさかの武器を使い捨てる選択をするなんて誰が予想できただろう。
「ノクスウェルさんの勝ち!!いやー、2人ともお疲れ様です。とても面白い勝負でした。さてさて、折角なので、残り時間は今の試合を参考にした授業にしましょうか。」
イチカ先生の楽しそうな声を受けて生徒達も我に返った。そうか、今ので勝負が決着したのだと。
パチパチと拍手が増える。マーネは勝ったよ。とオルレアへ顔を向ければ、木陰で白鼠が笑い転げながら親指を立てているのが見えた。




