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カジさんが魔法で部屋中に飛び散った水をあっという間に乾かすと、イチカ先生は始末書書かなくてすんだよ、本当にありがとうーと頭を垂れた。やっぱり火属性はうんたらかんたらと1人で呟き始めるイチカ先生に目頭をおさえてため息をつくカジ。
しびれを切らしたカジが話し続ける先生に制止をかける。
「転入生に今日の説明は終わったんですか?」
「マギア見せて終わっちゃいました。でも、手続きは終わってるし、ラピスも渡したし、後は明日にしても大丈夫でしょう。」
イチカ先生は時計とカジの顔を見比べる。その姿を呆れた様子で見るカジ。
「マギアの話は手短にお願いします。いつもそれで時間越えてるんですから。しょうがないので残りは俺が引き継ぎますよ。」
カジの一言にイチカ先生は、じゃあ、これとこれを頼むよ。と遠慮なく言うと、カジに謝りながら去っていった。
「悪いな。イチカ先生はこの後実験室に籠るらしいから、俺が代理でお前に説明する。良いか?」
カジの言葉に頷くマーネ。
職員室に残された2人はカジの提案で移動することにした。道中カジはマーネに注意するべき事をいろいろ教えてくれる。
「イチカ先生。あの人はマギアオタクだ。魔法のことになると周りが見えなくなるタイプで、それで振り回される人が少なからずいる。関わる時は時間に余裕がある時だけにした方がいい。」
イチカ先生の取扱説明を教えてもらうマーネ。他にも注意すべき人が何人かいるらしい。先生も生徒にもカジの小言は止まらなかった。
マーネは生徒会室では挨拶してなかったと思い出し、慌ててカジへ向き直りお辞儀する。
「さっきはありがとうございました。私は今日転入してきたマーネ・ノクスウェルです。よろしくお願いします。えっとヨルくんのお兄さんですよね?」
「ああ、俺はカジ・ブライト。よろしく。弟のヨルから何か聞いてるか?」
「はい?」
何かとは何だろうとマーネが首をかしげると、カジはだろうな。と言って少し考えてからポケットからマーネに何かのバッジを手渡した。
「これを着けていると良いことが起こる。初日から不運なお前にやろう。」
マーネは受け取ったバッジを見る。校章である梟と鷹のど真ん中に黒い文字で生徒会と焼印されている。これはどう見ても正規のものではないなと一目見て分かる出来映えだった。
でも、貰ったものは大事にしないといけないと教わっているマーネは無下に出来ず、お礼を言って胸ポケットに着ける。
「生徒会って書いてありますけど…。」
マーネが本当に良いのか不安そうにしていると、それを見たカジは絶対に外すなよと念を指した。
「明日会ったら着いてるか確認するからな。もし外してたら…」
話の途中でチャイムが鳴った。
「今のが終業の合図だ。最後のチャイムが一番長くて音が低い。さっさと帰れという意味だ。分かりやすいだろ?」
カジは答える。マーネはそれどころではない。バッジを外したらどうなるのか、胸が不安でいっぱいだ。
「明日から授業が始まる。転入生のお前は暫く忙しいだろうな。同じクラスなら教えてやれるが…。まぁヨルがいるからアイツに聞いてみれば良い。」
「授業…。マギアを使ったことないんですけど大丈夫ですかね?」
「心配ない。俺もここに来るまでは使ったことがなかった。魔力があるのは分かっていたが、使い方なんざ一般人は知らないからな。学べば使えるようになるさ。イチカ先生が担当するだろうから大丈夫だろ。授業は遅刻厳禁。あとこれ、生徒手帳。失くすなよ。中に校則と時間割等、色々書いてるからな。」
ピタリと立ち止まるカジにつられて顔を上げるマーネ。紅い瞳がマーネを見下ろしている。カジは手を伸ばすと、マーネの頭に手を乗せてグシャグシャにした。
「とりあえず、明日に備えて今日は休め。そのバッジの説明も明日するから。そして朝起きたら職員室へ行け。じゃあな。」
慌ててマーネがお礼を伝えると、カジはひらひらと手を翻して去っていった。
マーネはいつの間にかカジによって女子寮まで案内されていたのだった。




