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15の春 未来を奪われた私達が絶望の中見つけた希望は○年後に花開く ―真奈side―  作者: 汐野悠翔


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8/25

ガールズトーク

帰り道、会社の最寄りの駅で、電車を待っている私と紗耶香。


この駅の近くには大学があって、6時過ぎのこの時間は、そこの学生達の帰宅ラッシュと重なるらしく、いつもホームはごった返している。


私とそう歳の変わらない学生達の楽しそうな笑い声がホームには響いていた。


その姿を、私はぼんやり見つめながら電車を待つ。



「ねぇ、真奈?あんたさ、好きな人とかいないの?」


「……はぁ? 突然何?」



唐突に、紗耶香がそんな事を聞いてきた。



「ん? たまには真奈とガールズトークもしてみたいな~って思って。で? いるの? いないの? 好きな人!」


「…………いる……ような……いない……ような?」


「何それ? はっきりしなさいよ!」


「そう言われても、自分でもよく分かんないんだもん」


「あ~分かった。分かったから、その話詳しく聞かせな」


「前に話した事あったでしょ。中学生の時、9年間同じクラスだった腐れ縁の男子の話。そいつの事、好きになっちゃったかもって」


「あ~、そう言えばそんな話した事あったね。中3の夏頃だっけ?」


「うん」


「……え? もしかして……まだ好きなの? その人の事が」


「だから、それがわからないんだって。もう4年近く会ってないから……まだ好きなのか、もう好きじゃないのか。でもね、ただ一つ言えるのは、あいつと離れてからの4年間で、あいつ以上に好きになれる人とは、出会えてないって事だけかな」


「こ、これは……もの凄い強敵出現? 橘さんピ~ンチ!!」



何やらぶつぶつ独り言を呟く紗耶香。周りの雑音で上手く聞き取れなかった私は、紗耶香に聞き返す。



「え? 何か言った?」


「いやいや。何でもない。じゃあさ、真奈としては、まだその人に会いたいって思う?」


「それは、まぁ……会いたい気持ちが無いと言ったら嘘になる。けど……私には会いに行く勇気がないんだ」



結局、4年経った今も、あの街に行く勇気は出せずにいるのだから。


私は、目の前にどこまでも伸びる線路を目で追いかける。


そんな私を見つめる紗耶香の視線に気付いて



「……会いに行く勇気もないのに想い続けてるなんておかしいよね」



と、苦笑いを浮かべながらそう言葉を続けた。



「真奈は、忘れたいって思ってるの? その人の事」



私は、いつまでもずっと立ち止まったまま、このままじゃいけないって思ってる。歩き出さなきゃ。


いつまでも過去に囚われ続けてないで歩き出さなければいけない。


その為にも



「忘れた方が良いんだろうな~って事はわかってるんだ。私、バレンタインに告白して、それで一度フラれてるしね。潔く忘れなきゃいけないんだろうなとは思うの」



でも、あんな別れ方なんかしたから――



   ◇◇◇



『で、どうしたの浩太。話って何?』


『え? あ……えっと……お、お前に……渡したいものがあって……』


『渡したいもの?』


『……あぁ。あと少しでホワイトデーだろ。だから、バレンタインのお返しにクッキーを買ったんだ』


『……え?』


『お前が早退するって聞いて急いで来たから、今この場には持ってこられてないんだけど……あ、明日……卒業式が終わった後に渡したいから……生徒会室に来てくれないか?』


『お返しなんて、そんな気を遣わなくても良かったのに』


『別に気を遣ってとかじゃない! た、ただ……腐れ縁を切るってあれは……撤回して欲しくて……』


『……どうして?』


『どうしてって聞かれると、困るんだけど……俺、今までみたいなお前との腐れ縁の関係は嫌いじゃなかった。いや、結構好きだったかもしれない。だからお前との腐れ縁を切られてしまうのは、素直に嫌だと思ったんだ』


『………』


『だから……もう一度お前と仲直りしたい。仲直りの印に受け取って欲しい』


『仲直り?』


『そう、仲直り』


『ずるいな~浩太は』


『……ダメか?』


『やっぱりずるい。やっとの思いで、浩太への気持ちに整理をつけて、その気持ちにバイバイ出来たと思ったのに、せっかくの私の決意をいとも簡単に打ち砕いてくれるんだから』


『?』


『分かった、約束する。明日卒業式が終わった後、必ず生徒会室に行くよ。そこでもう一度仲直りしよう』


『ほ、本当か?』


『うん、約束』


『『指切りげんまん嘘ついたら針千本飲~ます、指切った』』



この約束の数時間後、あの地震が起こった――



   ◇◇◇



約束なんて、しなければ良かった。

あの時、約束なんてしたから、いつまでも浩太の事が気になって、心の片隅から消えてくれなくて、忘れたくても忘れさせてくれない。



「ね、忘れたいって思ってるんならさ、新しい恋探すってのはど?」


「え?」


「きっと新しい恋をすれば、自然とその人の事忘れられる日がくるよ! ね、そうしよう! はい決まり~!」 


「ちょっと、決まりって、そんな勝手な」


「ってわけで真奈、合コンしよう! 合コン!!」


「えぇ?」


「実はさ、同じ高校だった木村陽斗(はると)って覚えてる? そいつから合コンの誘い来ててさ、あんたも連れて来てって頼まれてるんだよね~。良かった良かった。これであんたを誘う動機が出来た!」


「ちょっと紗耶香? あんた、何か楽しんでない? こっちは真剣に悩んでるのに」


「そんな事ないよ~。ん~あともう2、3人誘えって言われてるんだよな。橘さんは絶対誘うとして、あとは誰を誘おうか」


「ちょっと! どうして橘さん? お願いだから、橘さんにまで迷惑かけるのはやめてよ??」


「大丈夫大丈夫~!この紗耶香様に任せときなさいって~」


「何がどう大丈夫なのよ!行かないからね!私、絶対行かないからね!!」


ニコニコと怖い笑みを浮かべている紗耶香に、私は大声でそう主張した。


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