思いがけない人との再会
30分後――
「やっと、やっと来た~!! どれだけお前の事を待ち侘びた事か!」
「おい、木村っ! お前は俺のストーカーか? 3分おきに電話かけてきやがって!!」
「なかなか来てくれないお前が悪いんだろ」
「嫌だって断っただろ! なのにしつこく付き纏いやがって」
遠くから、木村君ともう一人、男の人の言い争う声が聞こえて来る。
「ねぇ、紗耶香。木村君、どうしたの?」
「ん?どうやら、遅れてたメンバーと何か揉めてるみたい」
「……ふ~ん」
「どうやらその人、イケメンらしいから真奈、あんた頑張りなさいよ!」
「え? 頑張るって何を?」
「何って勿論、彼氏ゲット! せっかく彼氏にするなら、イケメンの方が良いでしょ! ま、私は橘さんでも全然ありだとは思うけど、選択肢は多いに越した事ないからね~」
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながら一人ぶつぶつ何かを呟いている紗耶香。
やっぱり、ただ単に紗耶香は楽しんでるだけのようにしか思えないな、と私は小さくため息をついて、飲みかけの烏龍茶に手を伸ばす。
「お待たせしました! やっと遅れてたメンバーが到着しましたのでご紹介を!」
「おい木村。お前の顔を立てて少し顔出してやるけど、俺はすぐ帰るからな! 30分だ。30分したら、俺は帰るからな!」
「はいはい、分かりました分かりました」
「お前、絶対分かってねぇだろ」
「分かってるって!」
木村君が連れて来たその人は、まだ木村君と言い争ってる感じで、あの人も私と同じで、無理矢理連れて来られたくちなのかな。
ふとそんな事を思いながら、飲んでいた烏龍茶から顔をあげる。
瞬間、私は驚きのあまり息が止まる。
………どうして?
「? どうした真奈? そんな驚いた顔して」
橘さんの声にビックリして、手にしていたコップを離してしまった。
“パリンッ”
乾いた音が賑やかな店内に響く。
一瞬にして店内の音が止んで、皆の視線が一斉に私に注がれた。
勿論、木村君が連れてきたその人も例外ではなく、視線が合う。
相手も驚いた顔で私の名前を口にした。
「……さく……ら……い? あんた、もしかして桜井真奈か?」
どうして……どうして沢田君がここにいるの?
私は、目の前に突然現れたその人の存在に頭が真っ白になって、気付いたらその人から逃げるように駆け出していた。
「え? ちょっと真奈?」
「どうしたんだ、真奈?」
背中に、紗耶香や、橘さんの心配した声を聞きながら、私は店を飛び出した。
***
「真奈っ!」
紗耶香の真奈を呼び止める声に、陽斗が連れて来た男、沢田は確信する。
やはり、彼女は桜井真奈なのだと。
「悪い木村、やっぱり俺、今日は帰るわ」
陽斗にそれだけ言い捨てると、沢田は真奈の後を追うべく店を出て行こうとした。
だが、その腕を慌てて陽斗が掴む。
「ちょ、ちょ~っと待てって!俺を差し置いてお前を行かせるわけには行かない!! 前に言っただろ? 高校の頃から片思いしてる相手がいるって。彼女がその子なんだよ。だからここは俺に花を持たせてくれよ。な?」
「悪いけど、俺は中学からだ」
「……え?」
予想もしていなかった沢田の言葉に、彼の腕を掴んでいた陽斗の手が一瞬緩む。
その隙をついて、沢田は陽斗の手を振り払って駆け出した。
「…………」
沢田の背中をぼんやりと見送る陽斗。
その二人の様子を見ながら
「なんかよく分かんないけど……面白い事になって来た? もしかして彼が、真奈が言ってた4年間忘れられない腐れ縁の男の子?」
紗耶香が興奮した様子でそんな言葉を漏らす。
「……真奈の……?」
紗耶香の呟きに、隣にいた橘の瞳が揺れる。
「私も、心配だから二人の後追いかけてくる!木村、こっちの後の事はあんたに任せるから、解散するなり二次会行くなり好きにして!」
「えっ?! おい、紗耶香~~!」
紗耶香までも二人の後を追って、店の外へと消えて行ってしまった。
「何だよ皆して、何なんだよいったい!」
残された陽斗は、苛立ちを吐き捨てるなりその場に力無くしゃがみ込む。
そして「俺は………単なるピエロか?」と頭を抱えながらそう小さく呟いた。




