表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

91/136

転移1.5年後の総理官邸

東京・総理官邸。


転移から一年と六か月。


外界の風景は変わったが、官邸の建物そのものは、まだ旧世界の設計思想を引きずっている。重厚な石材と防弾構造。だが、その内部で扱われる情報だけが、明確に別の時代へ移行していた。


総理は資料を手に取り、最初のページをめくった。

「……状況報告を」


官房長官は一拍置いてから、淡々と口を開く。

「日本・邪馬台国・漢の3か国は、同盟国化しています。通信、測位、気象、医療物流、そして軌道打ち上げ窓。これらの基幹機能を、日本が設計・管理しています。漢および邪馬台国はそれぞれ地域最適化運用に移行済みです」


総理は資料から目を上げた。

「メリケンは?」


国防担当補佐が即座に応じる。

「ディアナ・プロジェクトを国家最優先事業に格上げ。独自技術による衛星の軌道投入を目指しています。第7艦隊から手に入れた技術のリバースエンジニアリングを進めているようです。工作機械メーカーへの接触も確認されています。」


総理は短く息を吐いた。


「まあ。アメリカだ。来年には衛星ぐらい打ち上げるだろう」


官房長官が頷く。

「はい。私もそう思います。軍事圧力が減るのは歓迎しますが、目が離せません。」


麻田総理

「衛星の軌道利用にリソースを割いてくれりゃいいんだけどなあ……月なんて金がかかるだけだ」


官房長官

「はい。我が国としては、当面は外国分も引き受けて打ち上げ実績を積み、軌道投入能力の底上げを図ります。有人月計画については、最後まで秘匿します」


「月の件は?」


水沢連絡担当

「アポロ15地点からの応答は継続中です。質問に対する返答は、『ハイ』『イイエ』『フメイ』『キヨヒ』の四種類のみです」


「意思があると?」


「断定はできません。ただし、“情報圧縮された応答構造”と解釈されています」


「公開は」


「完全に封鎖しています。国内外ともに、技術異常として処理中です」


「よろしい。他の観測所ではどうだ」


「他の観測所でも微弱なノイズは確認されています。ただし、発生時刻を知らなければ観測誤差として除外される程度です」


短く、それだけを言う。


次の資料が提示される。


「藤堂直樹記念病院および関連施設群の医療モデルが標準化されつつあります。出産はもはや医療行為ではなく、“国家インフラ運用”に近い扱いです。記念病院で産む最上流、上流は日本の私立の周産期医療センター。残りは母国での出産になります。医療マニュアルの提供、抗生物質をはじめとする基礎医薬品の供給は継続しています。産科医の派遣要請はありますが、人材確保が難しく、希望に応えるのは困難な状態です」


防衛大臣

「軍事関連です。メリケンは機動艦隊の一部を本国へ引き揚げました。北中国の残党は分裂して軍閥化しています。最大勢力は雷鳳鳴率いる内モンゴル軍閥です。レアアース採掘場のある場所です。朝鮮は金王朝が再興しましたが、対外戦力は限定的です。拉致も発生していません。軍事安全保障環境は良好です」


経産大臣

「経済関連です。医療滞在を含む観光収支は大幅な黒字です。最大の収入源です。民生品、衣類、雑貨の輸出は良好。自動車は高級車に限定。一方、半導体産業は苦戦しています」


「理由は?」


「規格、設計が異なるため参入が困難な事、異世界各国の規格がバラバラでグローバルチェーンが存在しないこと。レアアースの不足。転移前とレアアースの供給体制が異なり、価格体系も変化しています。転移前の材料設計が、この世界の資源事情に適合していません。希少なレアアースに依存した設計が多く、逆に豊富な元素を活用する技術体系の再構築が遅れています」


「阪神エリアはどうなっている?」


「阪神エリアは中央のコントロールから徐々に離れつつあります。ただ、有効な対抗策が限られています。関西の政治家、企業が軽率です。外資受け入れに対する警戒感が薄い。四王女の構想を自分達の手柄と勘違いしています。東京への対抗心で目が曇っています。淡路島まで出しゃばってきてますし」


麻田総理

「頭が痛いねえ。ワシントンとニューヨークみたいになりかねん。しかし、止めるわけにもいかん。こっちも向こうの企業を買収してるし、おあいこか。で、誰が中心だ?」


「中心人物は、明月公女だと思われます」


総理


「静香ちゃんじゃないの? オタクの方か」

「あー、ちょうどいいもの持ってるんだ。

あとで作家の先生にサインをもらっとくか

早めに会談できるよう調整してくれ」


官房長官

「承知しました」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ