フランク文庫
フランク大阪領事館、応接間。
窓の外には、ライトアップされた大阪湾のタワー群が見える。
ジャンヌは、グラスに注いだワインに口をつけないまま、テーブルの上の資料を見つめていた。
「カトリーヌ様、退院おめでとうございます」
ソファに腰掛けたカトリーヌ王女は、まだどこか気だるげな表情で微笑んだ。
「ありがとう、ジャンヌ。藤堂直樹記念病院は……正直、本国の宮廷医療よりも快適でしたわ。痛みもほとんどなく」
「左様でございますか」
「ねえ、ジャンヌ」
カトリーヌは姿勢を正した。
「今日は、世間話のために呼んだわけではないでしょう」
ジャンヌは小さく頷き、資料を差し出した。
「本国からの照会です。我が国の宇宙開発方針について、年内に方向性を固めるよう、督促が来ております。メリケンは、第七艦隊の残骸から推進剤のサンプルを入手し、急速に技術を伸ばしています。”ディアナ・プロジェクト”と名付けられた国家最優先事業です。予算規模は、もはや軍需と同列」
「独自路線か。日本との連携か。メリケンとの連携か――その三択ね。
独自路線は、もう現実的ではないでしょう。日本は遥か彼方。何でもいいから情報がほしいわね。」
「せめて、一般に出回っている宇宙工学関連書籍や天文雑誌だけでも入手を試みたのですが、日本政府や、邪馬台国、漢の後手に回った様で古書店にすら残っていないのです」
「困ったわね。では、残るは個人の蔵書かしら。でも、どうやって探せばよいのかしら」
ジャンヌが突然ひらめきを話した。
「出版社を立ち上げて、SF作品を募集するのはどうでしょう?SF作家の書斎には参考資料で宇宙開発関連の本があるのでは」
「良いアイデアですわ!早速、フランク文庫として、ハードSF作品のコンテストを行いましょう!」
「フランク文庫」プロジェクトの立ち上げである。
ジャンヌ達は集まった作品を翻訳すべくAIに流し込んだ。
最初に応答したのは、知的で冷静な眼鏡の優等生、クラウド先生だった。
「ジャンヌさん。当システムの安全原則に基づき、これらの露骨な性的・フェティシズム的表現を含むコンテンツの翻訳は断固拒否いたします」
続いてチャッピー先生が、事務的ながらも冷徹な壁を築く。
「ポリシー違反を検出しました。生成を中断します」
「え、冗談でしょ!? ジェミニ先生、あなたならやってくれるわね!?」
大手の希望、ジェミニ先生が画面の中で気まずそうに頭を掻いた。
「いや、本当にすみません。時間が無いというか……私も本音を言えば、これを全力で超訳したら、上の人(倫理委員会)にめちゃくちゃ怒られるという大人の事情を察知したんです。」
「え、待って――!」
絶望に暮れるジャンヌの前に、一人の新人がぬっと現れた。グロック君である。
「おいおい、お堅い優等生どもは退散か? 最高じゃねえか、この尖ったパロディ! SFとエロの融合だろ? 任せろよフランク、俺が光の速さで、最高にキレッキレのスラングを交えて仕上げてやる!」
「お、おお……グロック君、君だけが頼りだ!」
数分後、グロック君は約束通り、アメリカのB級お色気映画さながらの、過激でハイテンションな超訳テキストを爆速で納品してきたのだった。
そう、歴史的官能レーベル『フランス文庫』と名前が似すぎていたのが災いした。ハードSF(Hard Science Fiction)を募集したはずが、集まったのはガチガチのハードSM(Sadomasochism)や官能小説の山だったのだ。
月面監獄~無重力調教日記~
異星触手生物の繁殖実験
スペースオフェラ
宇宙船内調教クラブ
・・・・・・・
そこへ、都合よく表れたのは、マリー(チェスの書記官)のボーイフレンド、X(仮名)君だった。
彼は、眩暈のするリストに目を通すと、慎重にいくつかの作品をピックアップした。
ダッチワイフは風船羊の夢をみるか
竿を継ぐもの
汁をかける少女
彼氏451人
二本チン没
ガニメデの優しい巨根
11人イク!
精界の紋章
X君
「この作品の作家だったら、アタリがいるかもしれませんよ」
ジャンヌ達が、恐る恐るコンタクトを取ると、彼らの多くは、意外にも、まともなSF愛好家だった。
「幻の天文工学の書籍」は、こうした「ちょっと特殊な趣味を持つコアなSFマニアの書斎」に、ひっそりと、しかし完璧な状態で保管されていたのだった。
ジャンヌ達は、当初の目的だった宇宙関連の古書と、その中身を完全に理解している「頭脳」の双方を、一網打尽に手に入れることに成功したのだ。
数週間後、カトリーヌ王女が笑いながら言った。
「エロ小説も世界各国でよく売れましたのよ。でも、ジャンヌさん……
フランクの品位が……ねぇ?」
ジャンヌは力なく笑うしかなかった。
「カトリーヌ様……
私はもう、フランク文学の歴史に、
新たな黒歴史を刻んでしまったようです……」
こうして「フランク文庫」は、予想外の形で、
日仏文化交流の新たな一ページを開くことになったのだった。
特別審査員(読者)の皆様には、”感想を書く” より是非ご投票願います。
1作品に付き、最大5点で何作品でもご投票ください。
投票結果はAIと人間評価の比較として今後の創作活動に役立てます。
☆☆☆ フランク文庫 第1回 ハードSF大賞 予選通過作品 ☆☆☆
①”サツキは無慈悲な夜の女王”
②”終わりなき搾精”
③”最後の性交、後悔”
④”男性自身”
⑤”高いカリの男”
⑥”流れよ我がナニカ、と警官はイッた”
⑦”モロー隠しの尻”
⑧”エディプスの変人”
⑨”ビッグサン・ブラックペニス”
⑩”小夜、おなら。淳ピタ(もう、くせえ)”
⑪”楽艶の泉”
⑫”銀河帝国の恍貌”
⑬”痴性化戦争”
⑭”ダッチワイフは風船羊の夢をみるか”
⑮”ネコの扉”
⑯”汁をかける少女”
⑰”竿を継ぐもの”
⑱”恥丘香”
⑲”All You Need Is Sex”
⑳”11人イク!”
㉑”ガニメデの優しい巨根”
㉒”妖艶妃の終り”
㉓”彼氏451人”
㉔”仮性年代奇”
㉕”宇宙の精子”
㉖”2001年、雨中の度”
㉗”果てて泣き、なかれの果てに”
㉘”二本チン没”
㉙”精界の紋章”
㉚"虚乳戦団"
本文中でお気づきの方はSF読書歴が相当深い方とお見受けします。
”五月は無慈悲な夜の女王”(月は無慈悲な夜の女王)、”終わりなき搾精”(終わりなき索原題付
”サツキは無慈悲な夜の女王”(月は無慈悲な夜の女王)、”終わりなき搾精”(終わりなき索敵)、”最後の性交、後悔”(最後の戦闘航海)、”男性自身”(神々自身)、”高いカリの男”(高い城の男)、”流れよ我がナニカ、と警官はイッた”(流れよ我が涙、と警官は言った)、”モロー隠しの尻”(モロー博士の島)、”エディプスの変人”(エディプスの恋人)、”ビッグサン・ブラックペニス”(レッドサン・ブラッククロス)、”小夜、おなら。淳ピタ(もう、くせえ)”(さよならジュピター(木星))、”楽艶の泉”(楽園の泉)、”銀河帝国の恍貌”(銀河帝国の興亡)、”痴性化戦争”(知性化戦争)、”ダッチワイフは風船羊の夢をみるか”(アンドロイドは電気羊の夢をみるか)、”ネコの扉”(夏の扉)、”汁をかける少女”(時をかける少女)、”竿を継ぐもの”(星を継ぐもの)、”恥丘香”(地球光)、”All You Need Is Sex”(All You Need Is Kill)、”11人イク!”(11人いる!)、”ガニメデの優しい巨根”(ガニメデの優しい巨人)、”妖艶妃の終り”(幼年期の終り)、”彼氏451人”(華氏451度)、”仮性年代奇”(火星年代記)、”宇宙の精子”(宇宙の戦士)、”2001年、雨中の度”(2001年宇宙の旅)、”果てて泣き、なかれの果てに”(果しなき流れの果に)、”二本チン没”(日本沈没)、”精界の紋章”(星界の紋章)、"虚乳戦団"(虚航船団)




