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外交官

藤堂直樹記念病院。響子の個室。

四つ子のベッドは空である。


最近、静香(姉)医院長が息抜きにくる。

偉い人ばかりで疲れる。人目気にせずダラけるのに、この部屋が都合良いと。

それでもこの人、印象と違って実はお嬢様である。ホテルや高級スイーツに詳しいし、いい服も持っている。人目が無ければ、鍋から直食いするが、TPOに合わせたマナーで振る舞える人だった。

これでも、代々、産婦人科の開業医やからねと言う。納得である。


そして、足利、西園寺が退院して、空いた特別室に、

メリケンのIT企業創業者の娘ドミニク、

フランク王女カトリーヌが入院した。

そして、明月公女とドミニク、カトリーヌの3人して、この部屋に入り浸っている。

もちろん、静香(妹)もよく遊びにくる。


だいたい4人で桃鉄をしている。実在の企業名がポンポン出てくる。

モノポリーもしている。ホテルの名前を実在するのに変えて遊んでいるみたいだ。


今日は久しぶりに、誰も部屋にいない。

響子はベッドの上で、あちこちにメールを返している。

ノックの音がした。

「どうぞ」


入ってきたのは後任の駐日大使、同期で友人の香澄だった。

「響子ちゃんおめでとう。高齢だからちょっと心配だったの。私の娘も妊娠中だけど、私の孫と貴方の娘が同級生なんて冗談みたいだわ。」

「ありがとう。座って。自分でもこの年でって思ったわ。赤ちゃんは新生児室。日本だと35才って普通らしくて。逆に4つ子が珍しいらしいわ」


香澄はご祝儀袋を両手で差し出した。受け取りながら、響子は香澄の顔を見た。

目の下に隈がある。

「忙しい?」

「知ってるでしょ。前任者」

香澄は椅子に座りながら言った。

「六甲アイランド行くついでに来れたけど、昼ご飯食べ損ねたわよ」

響子は少し考えてから言った。

「そりゃどうも、1万円のクッキーと、100円のラーメン。どっちにする?」

香澄の視線が、机に置かれた巨大なクッキー缶に落ちた。

原琉おばさんのフォーチュンクッキー。


「……ラーメンで」

即答だった。

響子は立ち上がり、病室を出た。


しばらくして、盆を手に戻ってきた。

香澄は盆の上を見た。

景徳鎮の青花どんぶり。

裏返しのチキンラーメン。

中心からずれた生卵。

お湯。

サランラップ。

割り箸。


香澄はため息をついた。

「……これ、今の私?」

響子は盆を置きながら答えた。

「駐日大使というのは、そういうものよ」

香澄

「私が玉子で貴方がラーメンじゃないかな」

響子

「妊婦相手に手厳しいなあ。出世から外れたし、四つ子相手にスローライフしたいんだけど」

香澄

「外務省は人手不足よ。次期皇帝から景徳鎮を下賜された人間を遊ばせないわよ。悪くても駐漢大使。次官もあるかも」

響子

「日本では産休は6か月よ」

香澄

「邪馬台国では7日。外務省なら3日。でも、ベビーシッターは経費で落とせるわ」

響子

「何させたいの?」

香澄

「不動産の営業。あのトリプルタワー、新しい産婦人科病院。総事業費が1兆円超えそうで、財務省がキレた。空母より高いって。邪馬台国国内にも病院作りたかったら他所の国にも金出させろって」

響子

「一部屋おいくらで」

香澄

「出来れば30億円」

響子

「高い。せいぜい20億円でしょ。儲けようとしないで。下手すりゃ10億まで叩きに来るわよ」


2人は建設中のトリプルタワーを見てため息をついた


響子

「引き受けてもいいけど、クッキー持って帰ってくれないかな。大使館のみんなで分けれるし」




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