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政治家になろう

近の国会中継は、なんだか難しいことばかりやっている。


「政治家になろう!」党首の村上は、マイクの前に立った。

「総理に伺います。転移事象により、アフリカおよびオーストラリアからのレアアース供給が途絶え、沖縄防衛戦後の北中国政権崩壊により同地域からの輸入も停止しております。政府は代替措置として、在日米軍との信義を損なう形でメリケン政権と講和し、資源輸入を維持されました。しかし、それは長期的な国益に資する判断だったのでしょうか?」

村上は真正面から総理を見つめた。

「潜在的敵対勢力となり得る国家への依存は、安全保障上の重大なリスクです。

ここで、我が党は2つの政策を提言します。

第一に、高性能魚雷を装備した高速魚雷艇部隊の整備。

第二に、海底資源政策の見直し——レアアース泥だけでなく、採取容易性に優れたマンガンノジュールの戦略的重要性を再評価すべきです。

外交・安全保障・資源戦略を一体的に再設計するべき局面にあると考えます。政府の見解を伺います。」


麻田総理は軽く頷き、答弁を始めた。

「村上議員のご指摘は重要です。メリケンとの講和は確かに困難な判断でした。しかし、半導体・電池・誘導兵器に不可欠な鉱物供給を断たれれば、日本経済と防衛産業は数年で停止します。国家存続を優先した決定です。五年以内に戦略鉱物の対外依存率を四割以下に低減する計画を推進します……」


村上は席に戻りながら、内心でため息をついた。

(僕は国会議員六十人の政党代表をやっている。悪い夢を見ている気分だ。)

党名は――「政治家になろう!」

ふざけた名前だと思う。今でもそう思っている。

この政党の目的はただ一つ。

「政治参加の入口を下げる」

供託金さえ用意できれば誰でも名簿に載れる。思想も政策も統一しない。

選挙で一番票を取った人間があとから代表になるという、極めて不安定な統一名簿。

それでも僕らは、AIをフル活用することで「超有能政治家集団」の仮面を被っていた。

政府資料の即時要約、対案政策のドラフト作成、リアルタイム答弁支援……。

有権者には新鮮に映ったのだろう。転移後の総選挙で「政治家になろう!」は野党第一党に躍進した。

村上は再びため息をついた。

(こんなふざけた政党の代表なんて、やってられるか……)



「舞台裏の答弁製造機」

国会会期中・衆議院第一議員会館 「政治家になろう!」政策支援室

午後3時47分。国会中継が始まってからすでに2時間19分が経過していた。

薄暗い部屋に、8台のモニターの光が揺れている。

「村上代表、答弁中です。総理の返答をリアルタイム解析開始」

23歳の政策スタッフ・高橋がキーボードを叩きながら言った。隣ではAIオペレーターの佐藤(28)が複数の画面を睨んでいる。

モニター① 村上代表の登壇映像

モニター② 総理の答弁の文字起こし(リアルタイム)

モニター③ 政府資料の要約AI出力

モニター④ リスク分析・反論ドラフト(生成中)

佐藤「総理の『五年以内に依存率四割以下』という発言、根拠が薄い。過去の政府試算と矛盾しています。村上代表に『具体的な数値目標と工程表の提示』を要求するべきです」

高橋「了解。タブレットにプッシュします」

彼は素早くテキストを作成し、村上代表のタブレットに送信した。


国会本会議場(同時刻)

村上代表のタブレットの画面が切り替わった。

彼は登壇中、自然な動作で画面を確認した。

(……五年以内に四割以下。工程表を要求しろと)

村上はわずかに頷き、総理に向かって続けた。


再び支援室

部屋の奥では、30歳の女性スタッフ・山本がため息をついていた。

山本「またAIが『倫理的リスク』を無視してる……。『在日米軍との信義を損なう形での講和』という部分、村上さんは本当は相当気にしているのに、AIは『現実的な国益優先』って平然と書くんだもん」

佐藤「AIに良心はないからね。俺たちが調整しないと」

高橋「でも正直、助かってるよ。俺一人じゃ到底ここまで政策を深掘りできない。村上さんも本音では『こんな政党の代表なんかやってられるか』って思ってるだろうに」

山本「本当はね……私たち、ただの『超有能政治家製造装置』なんだよね」

部屋に一瞬、沈黙が落ちた。

モニターのひとつで、村上代表が総理に的確な追及をしている様子が映っている。視聴率はそこそこ良い。SNSでは「政治家になろう! また鋭い」と評価されている。

高橋が小さく笑った。

「でもさ、これが現代の民主主義ってやつなのかもな。

有権者は『優秀な政治家』を見たい。

俺たちは『優秀な政治家』を、AIと一緒に作ってる。

……ちょっとした詐欺だよな、これ」

佐藤「詐欺じゃなくて、サービスだよ。

有権者が望む『まともな国会』を、俺たちが裏で支えてるんだ」

山本はコーヒーを一口飲んで、疲れたように言った。

「それでも……、このシステム、

『政治家になろう!』は歴史にどう刻まれるんだろうね。」

その瞬間、モニターに新しい指示が表示された。

【村上代表へ緊急プッシュ】

総理が「マンガンノジュール」を前向きに検討すると言いました。

ここで「即時国家プロジェクト化と予算規模の明示」を要求してください。

高橋「よし、送る」

三人は再び画面に集中した。

表舞台では村上代表が堂々と質問を続けている。

裏舞台では、若者たちとAIが必死に「政治」を作り続けていた。

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