EP-7 第3艦隊(Day+15)
「これで3機目ね」
メリケン国海軍の空母マッキンリーの副長エリザベスは腕を組んだまま呟く。
「文官を空母に送り付けるとは異例よね。……男だけの“もう一つの邪馬台国”、本物なのかしら?」
30分前に着艦したばかりの大統領補佐官のキャサリン。
「”日本”と名乗っている。人口一億二千万。その半分、六千万が男性。神話の男島伝説が実現になったのかしらね。」
「邪馬台国は仲介と2週間後の邪馬台国本国での会談を提案してきたわよ。初回の接触としては悪くないけど・・・。」
「英語で”男の声”が聞こえたから、全部放り出して駆けつけるってことよ」
「最新情報だと転移国家の日本には数万人の男性アメリカ人がいるらしいわ。私たちの男は箱舟に乗ってくるはずなんだけど間違った場所に上陸してしまったのかしら?」
「それは緊急事態。全艦31ノットに増速。」
「それでね、昼からの会合には向こうの”アメリカ代表”も加わるんですって。ヘリコプター2機で合計20人。大型ヘリを実用化しているの。技術体系が違うみたい。レーダーの反応だと超音速ステルスもありそうだし」
別の報告。
「艦内に軽微な変化。乗員が自発的に制服を整えています。シャワー室は満員です」
「現金なものね。普段はいくら言っても聞かないのに。」
エリザベスが鼻で笑う。
「炊事班から意見具申。ステーキランチをバーベキュー形式に変更したいと」
「急に働き者になったわね」
「過剰演出にならないかしら?」
エリザベスが少しだけ考える。
「観察材料が増えるのはありがたいわよ」
キャサリンが応じる。
「虫とクロレラの配給国家と我が国の差を見せるには効果的。ただし、やりすぎは逆効果」
「邪馬台国の動きが急すぎる」
エリザベスの視線がスクリーンから外れない。
「全組織がフル稼働。隠しているつもりで隠しきれていない。夜間でも照明が落ちない地点が多すぎるわ」
「焦っている」
「当然でしょう」
短い沈黙。
「1:1世界の男女の距離感はどうなんだ?」
キャサリンが淡々と答える。
「まず握手。反応が肯定的ならハグ。それでも拒否がなければ——距離はさらに詰められる」
後ろの士官が軽口を叩く。
「酒の勢いで抱きつきましょうか? “やりすぎて追い出される役” 引き受けます。」
「……その手の逸脱は記録対象よ」
エリザベスが即座に切る。
「やるなら自己責任でね」
別の声。
「給仕が飲み物をこぼして、シャワーに案内する手もありますが」
「記録は?」
「準備可能です」
エリザベスは一瞬だけ目を細めた。
「……やり方は任せる。ただし、全部提出すること。個人でバックアップは処罰します。」
沈黙。
そして、ゆっくりとキャサリンに向き直る。
「それで補佐官殿」
「本国の意向は“慎重な情報収集”だけど——」
「過剰接触と反応観察はリスクがあります。」
「でもここはホームグラウンド。この機会を逃せば次はないわ。」
一拍。
「本当にやるの?」
わずかに口角を上げる。
「……叱責なら一緒に受けるわよ」
副官
「ところで、補佐官殿、通訳の方はいつこられるのでしょうか?邪馬台国語の出来るものは本艦にはおりませんが」
キャサリン
「あっ・・・。あの・・・。あちらのアメリカ男性に通訳頼めない・・・かな?」
メリケン国 → この世界のアメリカ。
全艦31ノットに増速 →ジョークです。20ノットのままで航行しています。
この世界のメリケンと邪馬台国は戦争も同盟もなく、貿易も僅かです。二国間の交渉は英語で行っています。邪馬台国語を話せるメリケン人は100人ぐらい。逆は数万人います。




