父のお使い
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは関係ありません
駐日大使館の執務室
書記官の紫がノックして入ってきた。
紫
「大使閣下、如何な御用でしょうか?」
響子
「2人きりよ。とりあえず、干し柿食べよ」
紫の分も茶を入れて、皿の上の干し柿を2つに分ける。
日本に着任してから甘いものはいくらでも手に入るが、干し柿は特別なのだ。
紫
「ありがと。相変わらず干し柿だね。直樹様が干し柿渡した女って300人以上いるのに。」
響子
「ノートにあるだけで316人ね。あの頃、一般人の口にできる甘味って干し柿しかなかったからね。」
紫
「写真のコピーも出回ってたし。クラスの半分ぐらい直樹様の娘名乗ってたよね。私もお母さんから聞いてるけど。」
響子
「それでね、頼みなんだけど、
なんと、直樹様のお使いなの。しかも、静香様経由の最重要任務。秘密厳守」
紫は冗談っぽく言う
「何でもするよ。父と妹の頼みだし」
響子
「大阪に立花産婦人科って個人病院があるんだけど、
そこを訪ねて、もし、立花静香って女性がいたら、この手紙を渡してほしい。
必ず手渡しで。その場で読んでもらって。
それから、私が連絡出来るようにしてほしい。」
紫
「立花産婦人科……? 大阪の? でも、なんでそんな個人病院を?」
響子
「わからない……直樹様が、
“もし、大阪に立花産婦人科があったら、そこに立花静香がいたら”
って」
紫
「条件付き……?」
響子
「ええ。それでね、
差出人の名前、立花誠のことを、立花静香が父だと言ったら、
その時だけ渡してくれ。違ったら手紙は持ち帰れ
って」
紫
「立花静香って誰?」
響子
「知らされてない。」
紫
「……うん。明日、いや、今から行ってくる。2、3日泊まってきてもいい?」
響子
「もちろん。わかったことは全部教えて」
紫
「了解。……なんか、変な任務だね」
響子
「お願いね、紫」




