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外伝 転生者 直樹⑤

熟女担当種馬、近況報告


お久しぶりです。直樹@熟女担当種馬です。

相手はほとんど20才前後。

例外は名家の姫達だ。こちらは若い子から40近くまで幅が広い。

そして、同僚は名家の相手を嫌がる。気を使うし、成功しても1点でしょって。

相変わらず失礼な奴らだ。

数字だけ見ればそうだけど、20代で通用する美人さんばかりだ。

むしろ、俺には前世の記憶があるから、娘みたいで若い子の方が気が引ける。

大体、二十歳前の子と話すのが辛い。話題がないから。

痩せた体で必死に会話しようとする娘さんを見ていると、こっちの胃が痛くなる。

仕事だから優しくする。笑顔も作る。でも自分が悪徳ホストになった気がして嫌になる。

同僚たちは事務的に流しているらしい。話す必要ないだろとか言われた。


名家の姫さん達は話題がある。

仕事の話、愚痴、昔話。どれでもいい。

俺が黙って聞いていても成立する。見ていて痛々しくない。余裕がある。

疲れが顔に出ていても、それが人間らしくていい。

上も多少は考えてくれるらしく、俺の担当は名家が他の男よりかなり多いらしい。

それでも週に2人か3人だがありがたい話だ。


最近、名家の姉さま達とお茶するようになった。

仕事以外で女性と話すなんて、と他の男どもは引いている。

気持ちはわかる。仕事だけで十分すぎる。それ以上の接触は消耗だ。

ただ俺は逆。まともな会話がしたい。

姉さま達は頭がいい。俺の妙な質問にも真剣に答えてくれる。

この世界の歴史、名家の論理、一般女性との格差。聞けば答えてくれる。

前世で言えば、職場の先輩に飯を奢ってもらいながら愚痴を聞いてもらう感覚に近い。懐かしい感覚だ。


同僚たちが少し心配だ。

金は要らないのに成績は気にしている。上の評価には無関心なのに、生まれたこの数だけは比べたがる。何のために競っているのか、たぶん本人たちもわかっていない。

壊れかけている。自覚はないだろうけど。

俺が壊れていないのは、たぶん前世の記憶のせいだ。

55年分の「普通の人生」を知っているから、今の状況がどれだけ歪んでいるか測れる。

測れるから、距離を置ける。

距離を置けるから、まだ笑える。

それだけだ。


一般人の食事を食べてみた。

雑穀粥、ミミズバー、クロレラドリンク。

粗末だ。見た目は最悪だ。ミミズバーなんて名前からして食欲が失せる。

でも美味かった。

粥は滋味があって、胃に優しい。クロレラドリンクは青臭いが、飲み終わった後に体が軽くなる気がする。ミミズバーは……たまになら悪くない。

休日前はこれにしてくれと頼んだら断られた。

姫様に頼んだら許可が出た。変人扱いされたけど。

毎日豪華な食事を食べていると、胃が重くなる。たまには粗末なものが食べたい。

前世で言えば、接待続きの出張の後に食べる家庭の味だ。

あれが美味いのは、粗末だからじゃない。素直だからだと思う。


前世の知識は役に立たない。

アンモニアの空気合成とか、具体的なやり方を知らない。理科の教科書で読んだ気はするが、プラントの設計なんてできるわけがない。

味の素?グルタミン酸ソーダの化学式を書けないのにどうしろと。

石鹸だって、油と苛性ソーダを混ぜるのは知ってるけど、苛性ソーダってどうやって作る?

姫様は知っていた。

食塩水にアンモニアと二酸化炭素を通して、重曹を沈殿させて、重曹を加熱分解してソーダ灰を得る。

ソーダ灰に消石灰を入れたら苛性ソーダが出来るって。

アンモニアの作り方がわからないから詰んだ。

油と苛性ソーダを混ぜたら石鹸になるのは、いつ頃の発明か聞いたら、順番が違う。石鹸作りたくて苛性ソーダを合成したと言われた。

チート転生ものの主人公は一体どこでそんな知識を仕込んできたのか、前世で会って聞いてみたかった。

唯一役に立っているのは、嫁さん相手に鍛えたマッサージだ。

肩もみの達人と呼ばれている。

55年間で培った唯一のスキルが肩もみというのは、我ながら情けない話だが、喜んでもらえるならいい。姉さまの一人には「あなたの手は魔法みたいだ」と言われた。

褒め方が大げさすぎて、前世の嫁さんを思い出した。


俺、まだ21歳なんだぜ。

信じられないけど。

前世の記憶があるから余計に信じられない。

55歳で死んで、7歳で生まれ直して、21歳になった。

体は21歳なのに、頭の中は70歳近い。


ノートに書き続けている。名前と年と、何か一行。

でも、それだけは続けようと思っている。

誰に託せるかわからないけど。

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