外伝 転生者 直樹③
学校の授業。
科目は社会、体育、音楽。
国語、算数と理科がない。
国語は家庭で済ませているけど、算数と理科は?もっと高学年で習うのか?
社会は先生以外の女の人が来る。女性との会話練習が社会なのか?歴史とか男の務めとかの刷り込みも入ってる。体の接触はほぼない。
体育は、体操、ストレッチ、軽いランニング、円陣バレーとか
音楽は鑑賞が中心。歌は練習するけど楽譜や音程は習わない。
成績表もない。子ども同士は比較されない。仲良くすることだけ要求される。
そして、給食の時間。
「今日の給食は、牡蠣のガーリックソテー、鰻丼、そしてスッポン汁です」
担任が読み上げる献立。量は少ないが、七歳児が食べるには意味深すぎるラインナップ。
「いただきます」
十人の少年たちが一斉に箸を動かす。
前世の子供なら牡蠣とスッポンは苦手だろう。「苦い」「気持ち悪い」と泣き出す子もいただろう。
だが、この世界では苦手な子はいないらしい。
(……お前ら、もっとハンバーグとかエビフライを欲しがれよ。)
俺は、汁に沈んでいる、ゼラチン質の塊——スッポンのエンペラを見つめた。
食べ慣れろと言う事か?それとも成長が早くなるとでも?
亜鉛、アルギニン、タウリン。
栄養ドリンクコーナーの成分が、彼らの小さな体に過剰なまでに供給されていく。
「食後のデザートは、マカ入りのザクロゼリーです」
もはや隠す気すらないネーミング。
酸っぱいゼリーを流し込みながら、私は窓の外を見た。
午後の授業は体育だが、円陣バレーではエネルギーが余る。
私は、熱を帯びた自分の掌を握りしめた。
前世の知識があるからこそわかる。
この給食を毎日食べ続けていれば、確かに「生存適性」は上がるだろう。
だが、引き換えに「子供らしい情緒」が消えていくような気がした。
「お茶漬けが食べたい。」
俺の舌は疲れていた。




