外伝 転生者 直樹②
春まだ浅い朝、母に手をひかれ学校まで歩く。たった5分だけど。
新入生は十名。藤堂の七歳男子はこれで全員。
校舎はコンクリート製で2階建て。小さめの校庭と体育館、家庭菜園もある。
校庭のポールには国旗と藤堂の旗がはためいている。学校を囲む塀は高く校門は狭い。
講堂には、保護者席と来賓席が分けられていた。
前列には藤堂ご当主と一族。
後列は知らない人達。紹介もされなかった。
そして、場の中心にいるのは、俺達十人の少年だった。
名前を呼ばれるたび、一人ずつ壇上へ進んだ。
テンプレの太った、不潔、態度が悪い男子は一人もいない。
全員が美形で大人しい。
清潔で、華奢で、静かだ。
どこにも「問題児」という概念が存在しないように見えた。
私は思った。
(いや、テンプレの不良とかいないのか?)
(太った奴とか、騒ぐ奴とか、いないのか?)
(態度のデカイ御曹司は?)
そして、もう一つ。
(……俺、埋もれてないか?)
校長の式辞は簡潔だった。
「皆さんは、家の宝であり、地域の希望であり、国の未来です。この学び舎で、健やかに学び、強く、賢く、そして思いやりある人へと育ってください。」
子どもたちには少し難しい言葉だったが、意味は十分に伝わった。
教室には机は十脚だけ。窓際には春の光が差し込み、新しい教科書が整然と並んでいる。
担任が笑顔で言う。
「今日から、みなさんは同級生です。」
同じ一族の同世代の男子なのに会うのは今日が初めてだった。
「ぼくは本が好き」
「ぼくも本」
「ぼくは絵が得意」
「書道、もう習ってるよ」
ぎこちない自己紹介が続き、やがて小さな笑い声が生まれる。
お前たち、よい子すぎるだろ。
もっとこう、やんちゃとか、問題児とかいないのか。
これじゃ俺、まったく目立てない。
そして考える。この「普通」は、かなり歪んでいる。
親の躾で全員がこんな子になるわけがない。
俺はどうだった?
食べ物の好き嫌いは許されなかった。食べ終わるまで、母か姉にだっこされ続けた。
風呂、歯磨きも母か姉と一緒だ。ちんちんまで洗ってもらってる。
本の読み聞かせは毎日1時間以上。
いつもだれか女の人が周りにいる。
乱暴な事したら、こんこんと諭された。
寝る時は誰かと添い寝。
男が貴重だから大事にされてると思っていたけど、ひょっとして・・・・
(テンプレ異世界じゃないのか?)
(幼なじみ美少女とか、どこ行った?)
(ハーレムとか、どこにある?)
だが目の前にあるのは、整然とした十人の少年と、過剰に管理された社会だけだった。
ここは、かなり面倒なタイプの世界かもしれない。




