EP-35 北伐①(Day+186)
この世界で都市とは、男たちを守るために存在する。
この世界における地上戦の本質は、領土ではなく男性居住地の奪取と維持にある。
中世以前、男性は数十人単位で一カ所に居住し、周辺の女性がそこへ通っていた。
そのため、実質的な支配領域は居住地から徒歩一日圏内、概ね半径50kmに限定され、それ以遠は辺境と見なされた。
戦争の目的も明確だった。
攻撃側は居住地を包囲・占領し、そのまま支配下に置くか、男性を本国へ移送する。
防御側は最低限、男性を別の居住地へ逃がすことができれば任務達成とされた。
また長期対立下では、男性や名家の暗殺・誘拐は常套手段であった。
中世以降、交通と宿泊インフラの発展により状況は変化する。
女性の移動範囲は拡大し、それに伴い男性・名家の居住地は防護と効率の観点から大型化した。
現代の北中国では、ひとつの男性居住地が
数千人の男性
約100万人規模の周辺人口
を抱える医療・経済・行政の中枢として機能している。
したがって、
男性居住地の喪失=周辺数百万規模の統治崩壊
に直結する。
この構造により、現代戦の焦点は以下に収束した。
攻撃側:脱出前封鎖(encirclement before evacuation)
防御側:封鎖妨害と移送確保
火薬兵器が限定的なこの世界では、戦術もそれに適応している。
攻撃側:装甲車による高速侵入・都市封鎖
直衛:戦車
防御側:戦車・少数重砲による突破阻止
上空支援:戦闘機
近年、大規模居住地の奪取は成功していない。
だが南漢は例外的な機会を得た。
鳳凰帰還作戦により、北中国は戦力を外部戦域へ抽出している
南漢はその空隙を突く形で侵攻を開始した。
済南市司令部
「南軍航空機、北中央門および西第二門を爆撃。
北中央幹線を移動中の車列にも機銃掃射を確認。」
「済南北変電所が被弾。市内広域で停電発生。」
済南市長
「男性が巻き込まれるぞ……南は何を考えている。」
職員
「北京および天津から各1個連隊が増援出発。到着まで6時間。」
「南主力は市北郊外に展開中。市街突入ではなく、増援の迎撃を優先する模様。」
天津市司令部
「日本方面から帰還した貨物船に異常。
乗員は南漢の武装集団と判明。」
「平壌との通信、途絶。」
「南の空母艦載機と交戦状態に入っています。」
北京某所
「劉主席が非常時に使用する指揮拠点、“虎の巣”。候補はどこまで絞れた。」
「三カ所だ。残り二つは警備が明らかに薄い。
親衛隊は日本方面に、近衛は済南へ抽出されている。」
「つまり、警戒が厳重な場所が本命だな。」
「南の雪恨隊が到着した。血誓隊が三カ所目を叩く。動かなかった場所が当たりだ。」




