EP-34 鳳凰帰巣作戦⑨(Day +186)
北京、劉主席の書斎
机の上に詰まれた本。
・太平洋戦争
・広島・長崎
・冷戦終結
・ベルリンの壁崩壊
・ソ連崩壊
・天安門
・文化大革命
・日本の戦後復興
・自民党体制
・明治維新以降の連続性
通信記録は断続的で、現場指揮官の報告は矛盾を含んでいた。
「成功」と「失敗」が同時に存在しているような戦争だった。
宋書記長
「鳳凰帰巣作戦の戦果は1万人未満。鳳凰号が帰還できなければ1000人に満たない様です。捕虜は1万人を超えるものの、死亡者は1000人を下回る模様。捕虜の処刑は行われていません。現地側の交戦規定が予想以上に厳格です。つまり、戦果は限定的。戦略目標未達。」
劉
「日本は男がいるだけの甘い国ではない。悲劇を乗り越えた強者だ。」
宋
「……想定より“壊れなかった”な」
劉
「鳳鳴がずいぶん筋書きを変えてしまった。被害を少なく抑えすぎた。日本の憎悪を爆発させれていない。取り返しがきくレベルにとどめた。」
劉は、その言葉の意味を理解していた。
壊れなかったのは敵ではない。状況でもない。
“国家の構造そのもの”だ。
劉は机の上に視線を落とした。
その上には、日本で入手した書籍と翻訳資料が積み上がっている。
過去戦争史、憲法、統治機構、宗教観、家族制度、人口統計。
そして、戦後日本の記録。
宋
「20年前の我々の認識は誤っていました。皇族や名家は、単なる制度的残存物だと考えていた。十分に食って男と多く交われば誰でも男が産めると思っていた。」
劉
「だが違った。男を産めるのは選ばれた家系だけだった。」
宋
「それを認めるのに20年かかりました。既に革命第一世代は私たち2人だけです。残りは全て死にました。老いと病、権力闘争と暗殺。」
劉
「どうやってもこの国を残す方法が見つからなかった。異世界の大日本帝国とソビエト。日本とロシア。明確な敗北なしでの体制変更は膿を残しすぎる。」
宋
「日本に戦争を挑み、敗北して日本の属国になる。異世界の日本とアメリカの様に」
劉
「凰鳴が、想定より“穏やかに成功させた” それが問題だ。憎悪が足りない。戦争の終結条件が成立していない。」
宋
「では、次の手は?クーデター誘発ですか。凰鳴を使って、我々ごと内部矛盾を処理させますか?」
劉
「この国家は、外からでは終わらない。内部でしか終わらない」
その時、緊急事態を告げる電話が鳴った。
「南漢の機甲部隊が徐州から侵攻。国境を越えて済南へ迫っています。大規模航空攻撃も始まりました。」




