EP-32 鳳凰帰巣作戦⑦(Day +184)
喜屋武の浜近く
夕方の光が、海を鈍く光らせていた。
風はぬるく、潮の匂いが濃い。
脱走に成功した南達は、借り物の服を身につけていた。
派手な水着の上から男物の大きなシャツとサンダル。
三人は仲間を探しながら歩き続ける。。
遠くから、笑い声。
若い男たちが近づいてくる。三人。
地元の空気をまとった、軽い足取り。
「おい、見ろよ」
「あれかな、裸の中国人」
「俺たちを攫いにきたやつ」
「武器もって無さそうだし、酒飲まして潰したらいけるっしょ。終わったら110番」
「無理やり逆レイプされたけど隙を見て連絡しましたってか」
スマホを取り出す。
翻訳アプリが起動する。
少しの間。
ぎこちない機械音声。
「你好,你没事吧(コンニチハ。ダイジョウブ)?」
南は、顔を上げた。
一瞬だけ、作ったような笑顔。
「……没事」
発音は不自然だが、通じる。
男たちは顔を見合わせる。
距離が一歩、縮まる。
「你有住的地方吗(ホテル、ある)?」
スマホ越しの中国語。
南は首を振る。
西が小さく笑う。
北は無言。
一人が前に出る。
「要不要来我家(家、来る? 俺んち)?」
翻訳音声が微妙に間を外す。
別の男が続ける。
「我有船,六个人也能坐(船あるよ。6人でも乗れる。)」
「可以带你去看珊瑚(サンゴ、見に行ける)」
画面を見せる。
青い海の写真。魚。珊瑚。
南はそれをじっと見る。
西が、わざとらしく肩をすくめる。
「很漂亮吧」
北が、わずかに視線を横に流す。
男たちの立ち位置、距離、逃げ道。
全部、見ている。
男たちは気づかない。
ただ、期待している。
少しの好奇心と、かなりの下心。
「肉、焼(肉、焼くし)」
「还有啤酒」
翻訳が少し遅れる。
意味は、十分伝わる。
南の目は笑っている。
「……不错」
西が聞こえない様に小さく呟く。
「送上门来的肥羊(鴨が葱しょってきた)」
男達
「ラッキーだな、今日は。」
「人生、何があるかわかんねえな。」




