EP-15 加熱する日本ブームの裏で(Day+44)
■ 邪馬台国 国家危機管理会議
分厚い報告書が閉じられる。
「……日本との関係は、極めて順調です」
「対邪感情は良好。特に男性側は顕著です」
「移住希望者は0.2%。数十万人規模になります」
別の官僚が続ける。
「非常食二十億食は既に配給完了」
「樺太ガス田の情報提供あり」
「アンモニア合成プラントの建設提案」
経済担当が口を挟む。
「加えて、日本車の輸入許可申請と排ガス無公害化技術の提供」
「市場を押さえに来ているな」
「さらに重要案件の男性接触特区」
空気が引き締まる。
「福岡・大阪で開始。年間二百万人。我が国割当は百万」
「……半分か」
「メリケン、アラブも参加予定」
総理が低く問う。
「主導権はどこにある」
「日本です。我々は参加者に過ぎません」
資料を叩く。
「ビザ申請が急増。航空枠の争奪」
「輸入代理店のロビー活動が暴走している」
「統制は追いついていません」
誰も否定しない。
医療顧問が口を開く。
「接触事例、累計八十。妊娠十五例確認」
「内訳は名家七、一般八。再現性があります」
防衛大臣が割り込む。
「北中国の動きが加速しています」
「潜水艦、航空機ともに活動増加」
「拉致被害、累計三百人。本州沿岸まで来ている」
「北中国にて大規模な航空・艦隊集結を確認」
「潜水艦も追加で一隻撃沈。累計五隻。エスカレーションしています」
総理が静かに言う。
「あの国はもう後がない。共産革命で名家を失い——
新生児男女比、一対二万。崖から落ちた後だ。引き返せない」
防衛大臣が低く続ける。
「標的を変えた可能性があります」
意味は、全員が理解している。
その中で、外務大臣が最後の資料を開く。
「メリケンから提案。日米邪三国同盟」
一行、目を落とす。
「内容は役割分担。」
淡々と続ける。
「日本人男性は——我が国が受け入れ、在日米国人はメリケンが回収」
「加えて、三国で日本近海の制海権を確立。南北中華の介入を排除」
総理が目を閉じる。
「つまり、我々は、メリケンと組むか、それとも戦争するかだな」
内務大臣が低く言う。
「国内はもう臨界です。抑えきれません」
防衛大臣。
「軍事的猶予も長くない」
外務大臣。
「外交的には、今が最大の交渉余地です」
全員が総理を見る。
総理は、ゆっくりと指を机に置いた。
「日本は可能性そのものだ」
「これに乗るなら——我々の国家は、変わる」
一拍。
「乗らなければ——取り残される」
完全な静寂。
総理が結論を下す。
「準備しろ。メリケンとの同盟を前提に。だが、主導権は絶対に渡すな」
その矛盾した命令が、この国家の現実だった。




