表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

120/136

覚悟完了せず

政治家になろう!本部。開票日の翌朝。


村上が立ち上がり、全員を見渡した。

「昨夜の結果は皆さんご存じの通りです。まず、上位20名を幹部として指名します。本日より、この場が正式な幹部会議となります」


「では、第一議題。政権を取りに行くかどうかです」


村上は続けた。

「大臣ポストは15から18。国会議長か副議長、国対委員長。最低でも20人の幹部が必要になる。数の上では、あと2議席で過半数です」


「正直に言います。私には無理です。大臣職は」


「私もです。政策立案のシミュレーションはやってきましたが、実際の省庁を動かすのは別の話です」


「力不足は認める。だが、ここまで来て政権を取る気がないとは言えないだろう」


村上が静かに返した。

「取る気がないとは言ってません。取りにいって多数派工作に失敗するだけです。

準備ができていない、とは、表では言えません。それは全員同じだと思います」


当選二回、議員経験四年。それがこの部屋の大半の人間の実績だった。初当選組も混じっている。

是非にと頼まれたなら話は別だが、自分から手を挙げて大臣をやりたいと言える人間は、強硬派にも一人もいなかった。

特に、本当に席が回ってきそうな状況では。


村上

「現実的に整理しましょう。少数与党、参議院は野党多数、党内の一体性欠如、総合政策の未策定。数え上げたらキリがない。今すぐ政権を取りに行くのは悪手です」


「弱気なことを。せっかくここまで来たのに」


「弱気ではなく、計算です。崩れる政権を作るより、次の選挙で完全な多数を取る方が国民への責任を果たせる」


「私もその意見に賛成です。かつて我々は、準備のないまま政権を取り、そして失った。その轍を踏むべきではない」


誰もが、その言葉の重さを理解していた。

村上は全員の顔を見渡してから、口を開いた。

「では、方針を確認します。左派の2人への多数派工作は行わない。政権交代は今期は目指さない」


村上は続けた。

「でも、何もしないわけじゃない。上位当選者で構成するNEXT内閣を発表します。

政策論争は主に担当大臣に前にでてもらいます。それから、政権運営能力を高めるためと情報入手のため、大臣政務官を十人程度、内閣に送り込むことを民自党に提案します。委員会ポストは民自党となろう!で等分。これを条件として交渉します」


「民自党が飲むか?」

「提案したことを公表するだけでいい。政権意欲を示すのが大事です」


村上はそこで一度、言葉を切った。

「私達は政権獲得のために努力してる。そう見えなければなりません」


反対する者はいなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


同じ頃。民自党本部。

麻田総理は、幹事長と二人きりで資料を眺めていた。

「多数派工作のやりようがないな」

幹事長が苦い顔で頷く。

「左派の2人との連立は、最初から論外です。支持者が許しません」

「なろう!が左派に接触する気配は?」

「ありません。本気で政権を取りに来るつもりもないようです」

麻田は小さく鼻で笑った。

「賢いな、村上は、物分かりが良い子は大好きだよ」

幹事長は苦笑した。

麻田は資料を閉じた。


村上と麻田の党首会談は、総理官邸で行われた。

麻田総理と娘で秘書の直子。村上と幹事長に内定している山本の4人。


「お若いですな」

麻田が最初に言った。

村上は小さく頭を下げた。

「光栄です、総理」

「褒めとらんよ」

麻田は茶を一口すすった。

「では、本題を」

村上は紙を見ずに、真っ直ぐに麻田を見た。

「委員会ポストの等分。大臣政務官の受け入れ。それだけで十分です」

麻田は少しだけ目を細めた。

「政権は取りに来ないのか」

「今期は」

「正直だな」

「嘘をついても、総理には分かるでしょう」

麻田は静かに笑った。

「内閣府以外の省庁に、十三人受け入れよう。うちの顔を立てるために、内閣府だけは外してもらうが」

「それで構いません」

「NEXT内閣の発表はいつだ」

「臨時国会の前日を予定しています」

「ちょうどいい」

麻田は立ち上がり、手を差し出した。

村上も立ち上がり、その手を握った。

「よろしくお願いします、総理」

「こちらこそ。……なかなかしんどい四年になるぞ」

村上は少しだけ笑った。

「存じています」

そして、運命の臨時国会の日を迎えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ