開票結果
開票日 午後8時
東京・某民放テレビ局。
報道フロアでは、誰も無駄口を叩かなかった。
大型モニターに赤い文字が浮かぶ。
『投票終了 開票速報』
スタジオの照明が一段落ち、全国へ中継が切り替わる。
キャスターが静かに告げた。
「ただいま午後8時となりました。全国の投票が締め切られました」
その瞬間だった。
速報が一斉に流れ始める。
『麻田総理 当選確実』
『政治家になろう! 村上代表 当選確実』
続いて、
『桐本大臣 当選確実』
『和泉元野党代表 当選確実』
『新人ユーチューバー候補 当選確実』
『大学教授候補 当選確実』
『元地方議員 当選確実』
赤と青のテロップが休む間もなく画面を流れていく。
キャスターが解説者へ向いた。
「ここまでは、ほぼ予想どおりでしょうか」
解説者は腕を組んだまま首を横に振る。
「いいえ。ここからが分かりません」
大型モニターには全国地図。
西日本には赤が目立つ。
しかし北海道から東北、関東へかけては青が広がり始めていた。
「出口調査では比例代表は政治家になろう!が七割前後と優勢です。
一方、小選挙区では与党の民自党現職が強い。
沖縄、九州、中国、四国、近畿西部では民自党が優位。
しかし北海道、東北、首都圏では、なろう!から出馬した旧野党議員が予想以上に議席を伸ばしています」
別のコメンテーターが口を挟む。
「旧野党の支持者が、そのまま新しい看板へ移った格好ですね」
「その一方で、旧野党を嫌っていた保守層も、別のなろう!候補へ投票している。
票の流れが複雑すぎるんです」
誰にも読めなかった。
午前零時
速報スーパーが切り替わる。
最新議席予測
政党議席予測
民自党 219±2
政治家になろう! 218±2
諸派 2
未確定15
スタジオがざわめく。
キャスターが思わず聞き返した。
「ここまで来ても、まだ十五議席も未確定なんですか?」
解説者が画面を指差す。
「実際には、議席数そのものよりも、誰が当選するかが決まっていません。
政治家になろう!は比例候補だけで七百人以上います。
小選挙区の得票数による順位計算が非常に複雑で、最後の比例当選者が確定していないんです。」
「つまり議席数はほぼ見えている。」
「はい。残っているのは、同じ党の誰がその議席を取るかです。」
午前四時
夜が明け始める。
報道フロアには空になったコーヒーカップが並んでいた。
最後の速報。
民自党 219
政治家になろう! 218
諸派 2
未確定 2(いずれも政治家になろう!比例)
キャスターが静かに言う。
「これで議席数は確定しました。
与党が一議席差で第一党を維持します」
スタジオに安堵ともため息ともつかない空気が流れる。
解説者は苦笑した。
「1議席。ここまで僅差になるとは、誰も予想していませんでした」
別の画面では、政治家になろう!本部。
歓声よりも、戸惑いの声が大きい。
「218議席……。」
「本当に政権交代寸前まで来たのか。」
「いや、それより明日からどうするんだ。」
一方、民自党本部。
拍手は起きたものの、勝利の笑顔は少ない。
誰もが理解していた。
勝った。
しかし、
圧勝ではない。
次の国会は、一議席の差が政局を左右する。
テレビ画面の最後に、もう一つの数字が映し出された。
最多得票 村上代表 約200万票
キャスターが締めくくる。
「比例全国区となって2回目の衆議院選挙。
最多得票は、政治家になろう!代表・村上氏、およそ200万票でした。
なお、政治家になろう!は党規約により、最多得票者が党首となります。村上氏は引き続き党首として、新たに218名の議員団を率いることになります。」
日本は、1議席差という、かつてないほど拮抗した国会を迎えようとしていた。




