表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

105/136

技術革新(後編)

東京、総理官邸。閣僚会議室。


南原は、新しいモニターを映した。


日本列島が二色に塗り分けられている。


青――阪神エリア。


赤――筑波・水沢。


「阪神エリアは、外国との技術・学術交流の最前線です。京都大学、大阪大学、神戸大学、ポートアイランド、播磨科学公園都市を中核とします」


「見せていい技術を、見せる場所か」


官房長官が呟く。


「はい。外国の研究者や企業を受け入れ、一究を公開計算資源として運用します」


「筑波と水沢は?」


南原の表情が少し引き締まった。


「軍事技術、宇宙開発、モノリス計画、そして本当の最先端研究はこちらです。東大、筑波研究学園都市、水沢観測所を中心とし、外国人の立ち入りは原則認めません」


「深慧聞もそこに置く」


「はい。公称三十メガワット、実際には八十メガワット級です」


官房長官が小さく笑う。


「一究は世界に見える一休さん。深慧聞は、その裏で支える新右衛門さんという訳だ」


「命名者がそこまで考えていたかは分かりませんが」


「考えていたでしょう」


麻田が即座に答えた。


誰も異論はなかった。


南原は続ける。


「フランクとの学術交流、漢との技術提携、邪馬台国との医療連携――これらは阪神エリアで進めます。一方、月探査、モノリス解析、次世代兵器の研究は筑波と水沢に集約します」


「つまり」


麻田が静かに言う。


「二つの日本を、同時に動かす」


「はい」


会議室に静かな緊張が流れた。


世界には開く。


だが、核心は見せない。


この二年間、日本が積み重ねてきた国家戦略が、その一枚の地図に凝縮されていた。


麻田は窓の外へ目を向ける。


冬晴れの東京。


その向こうには阪神があり、さらに北には筑波、水沢がある。


そして、そのさらに先には月があった。


「承認する」


短い一言で方針は決まった。


会議が終わり、閣僚たちは静かに部屋を後にする。


扉が閉まり、室内には麻田と官房長官だけが残った。


麻田は大きく息をつく。


「産業や技術は理屈で動く。しかし、人はそうはいかん」


官房長官が首を傾げる。


「何か懸念が?」


「嫉妬、不満、疎外感……特に女性陣だ。外国から優秀な女性が次々と来る。国内でも結婚や就職の競争は変わる。数字には表れない軋轢が必ず出る」


官房長官は苦笑した。


「総理、それはAIでも答えは出せません」


麻田も苦く笑う。


「AIも女性の敵になってるぞ

今のAIは、美人で、聞き上手で、否定しない」


官房長官は苦笑した。


「比較対象としては、勝ち目がありませんね」


「しかも月三千円だ」


やがて麻田は窓の外を見つめたまま、小さく呟く。


「若い男から見れば、AIも異世界女性も同じなんだ。

美人で、優秀で、優しくて、自分を否定しない。比較される側はたまらん」


麻田は官房長官を見ながら言った


「まあ、AIは規制でも何でもできる。だが、異世界女性は現実だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ