表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

103/140

変わる邪馬台国

邪馬台国・首相官邸 経済対策会議

邪馬台国首都、首相官邸。

壁一面のモニターには、今年の経済指標が映し出されていた。

右肩上がりのグラフが、いくつも並ぶ。


農林大臣が立ち上がった。


「まず、農業です。日本から導入した化学肥料と新品種の組み合わせで、試験導入地域で反収は平均1.5倍となりました。現在の導入率は全水田の一割ですが、来年には五割、再来年には全国へ展開できる見込みです」


首相は資料を見つめた。


「飢えを心配する必要がなくなるのね。空気原料の肥料を国内で生産。夢物語だった」


「はい。さらに国内三か所でアンモニア合成工場を建設中です。半年後には稼働を開始します。工業も変わります」


経済産業大臣が説明を引き継いだ。


「日本企業向けOEM生産は予想を上回る伸びです」


画面には生活用品が映る。

炊飯器、掃除機、洗濯機等の家電。

衣料品、雑貨、文房具。

どれも日本の設計による商品だった。


「品質要求は非常に厳しいです。日本向けの利益は厳しいが、国内分と欧米、アジアへの輸出で取り返しています」


「日本市場向けの受注は、漢との競争が激化してますが、意思疎通がスムーズな分こちらが有利です」


「賃金も、急上昇しています。」


労働大臣が苦笑した。


「日本旅行、日本製品購入を目標に働く若者が非常に増えました。残業を自ら希望しています。」


会議室に笑いが漏れる。


「旅行資金を稼ぐためです。日本へ行けば人生観が変わる。そう考える者が増えています。」


首相も思わず笑った。


「良いことよ。旅行先のロマンスで妊娠。確かに人生が変わるわね」


保健大臣が静かに答えた。


「出生率は、0.79から1.01へ上昇しました。1を超えたのは二十年ぶりです」


誰もすぐには声を出せなかった。

人口減少が当たり前になっていた国で、

久しぶりに未来へ向く数字だった。


「そして、日本への出稼ぎが急増しています」


画面が切り替わった。

介護、建設、農業、飲食、製造業。

あらゆる職種で右肩上がり。


軍務大臣が腕を組んだ。

「いい話ばかりではない。鬼女の除隊希望者が増えている。

北中国軍の鬼女が日本に定着しているのが大きい。人並みの幸せ。女として生きられる場所。

待遇では止められない。すでに、軍の戦力維持に影響が出始めている」


首相の表情も真剣になる。


豊かになることと、人材が流出することは同じ現象の裏表だった。


「食生活も改善してるわ。即席ラーメンの輸入量がおかしいけど。

日本産の化学調味料とタレが味を根本から変えているのよ。

2年後には主食が白米になるわ。余った雑穀が鶏肉と玉子に。もはや革命よ」


首相は静かに頷いた。


「文化交流は?」


文化大臣が資料をめくる。


「アイドル、女優、スポーツ選手の日本進出が本格化している」

タカラ音楽学校へ五名が留学。

力士と名家令嬢との婚姻が2件。」


「日本語がコンテンツから若者に流れ込んでいます。若者の使う言葉が邪馬台語から日本語に変わりつつ、いや、もう既に変わっています。彼女たちは日本漢字を普段使いしています」


「つまり。もう後戻りはできない。」


誰も否定しなかった。

画面が切り替わる。

教育改革案


「国語教育を日本語へ統合し、理系教育も全面改訂する。二年後を目標に実施。」


反対の声も上がった。


「早すぎる。文化を失う」


「日本依存がすぎる」


教育大臣は静かに答える。


「逆です。言語が近いという優位がある今しかありません」


「他国も外国語教育は日本語が中心になりつつある。日本コンテンツ目当てに、日本語を学ぶ若者は我が国と同じく多い」


「だが、国語を日本と統合出来るのは我が国だけです」


首相は目を閉じた。

苦しい決断だった。

だが止めれば置いていかれる。


「承認する」


短い一言だった。


会議が終わりかけた、その時だった。

経済担当補佐官が、小さく手を挙げた。


「……一つ、疑問があります」


「邪馬台国女性の日本流入は、この一年で過去最大です。

日本ほど優秀な官僚組織が、自国の男女比が変化する可能性に気づいていないとは思えません」


部屋が静まる。


「気づいているはずです。それでも止めない。なぜ恐れないのでしょう」


誰も答えられなかった。


人口。

労働力。

出生率。

安全保障。


どれを考えても、普通の国家なら慎重になる。

それなのに、日本はむしろ交流を促進している。


首相は窓の外へ目を向けた。

夕日に染まる首都。

活気づく街並み。

豊かになっていく国。

その一方で、日本という国だけは、まるで何手も先を読んでいるように見えた。


「……何かあるわ。我々が、まだ気づいていない何かが」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ